概要
動物由来成分を含む医薬品・医療用具・医薬部外品・化粧品の製造業者等に対し、現時点の科学技術水準に基づく自主点検と承認書の整備を求める通知です。発出は平成12年12月12日、厚生省医薬安全局審査管理課からの事務連絡です。
対象は動物の細胞・組織、抽出物、分泌物、尿、血液などを原料・添加剤に用いた製品全般。体外診断用医薬品は対象外となります。自主点検は通知後3か月以内、必要な一部変更承認申請は1年以内に対応する必要があります。ウイルス検査技術の進展を踏まえた感染症伝播防止が狙いです。
該当製品を扱う製造業者・輸入販売業者・外国製造業者の国内管理人が対象です。ドナースクリーニングの内容や不活化工程を点検し、承認書製造方法欄の記載を最新化する必要があります。

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1. 背景と目的
1.1 通知が出た経緯
動物由来成分を含む医薬品等は、人獣共通感染症やウイルス汚染のリスクを内在しています。BSE(牛海綿状脳症)への懸念が国際的に高まったこの時期、ウイルス不活化や検出技術も急速に進歩していました。承認時点では適切でも、現在の知見では不十分な工程が残っている可能性があったわけです。
そこで厚生省は、製造業者等の責任で現時点での科学的水準に基づく品質・安全性確保対策を再確認させる必要があると判断しました。本通知は、後続の正式通知に先立って各都道府県を通じて関係業者に事前周知するためのものです。
1.2 通知の目的
目的は大きく二つあります。一つ目は、動物由来原材料に対するドナースクリーニングと製造工程での不活化・除去処理が、最新の科学技術水準に照らして適切かを確認させること。二つ目は、承認書の製造方法欄に動物由来成分の詳細情報が記載されているかを点検させ、必要なら一部変更承認申請で整備させることです。
中央薬事審議会バイオテクノロジー特別部会では「細胞・組織利用医薬品等の取扱い及び使用に関する基本的考え方(案)」の取りまとめが進んでいました。本通知はその実施に先立ち、製造方法の見直し準備を求める位置付けです。
2. 主要要件と事例
2.1 対象範囲
対象となるのは以下の5区分です。体外診断用医薬品(人体に直接使用しないもの)は除外されます。
- 動物の細胞・組織から構成される医薬品等
- 動物の細胞・組織からの抽出物・分泌物に由来する成分を含有するもの
- 動物の尿、血液等からの抽出物に由来する成分を含有するもの
- 動物由来細胞に細胞培養や遺伝子組換え技術を応用して製造されるもの
- 添加剤(製造過程の培地を含む)として上記成分を用いて製造されるもの
具体例としては、ブタ心臓由来の生体弁、ウシ腱由来コラーゲン製品、ヒアルロン酸ナトリウム製剤、培地にウシ血清を使う細胞培養由来製品などが該当します。「主成分が動物由来でなくても、培地など添加剤に動物由来成分を使えば対象」となる点は見落とされがちです。
2.2 自主点検の中身
製造業者等が確認すべきは次の3点です。
- ドナースクリーニング(検査項目・検査方法)の妥当性
- 製造工程での細菌・真菌・ウイルス等の不活化/除去処理の有効性
- 製品の投与経路・適用部位を勘案した製造管理・品質管理
判断基準は「現在の科学技術水準に照らして感染症の伝播を防止できるか」です。承認時点の試験法のままで止まっていないかを点検する必要があります。
2.3 承認書の記載整備
承認書の製造方法欄に以下を詳細記載することが求められます。
- 原産国
- 使用動物種
- 使用部位(組織、器官名等)
- ドナースクリーニングの内容
- 細菌・真菌・ウイルス等の不活化または除去の方法
化粧品の場合は技術指針(昭和63年薬務局監視指導課長通知)に定める製造管理標準書に位置付けます。
3. 実務対応と罰則
3.1 タイムライン
スケジュールは明確です。通知後3か月以内に自主点検を完了し、結果を取りまとめます。点検の結果、ドナースクリーニングや不活化工程の追加・変更が必要となった場合は、通知後1年以内に一部変更承認申請または承認整理届の提出を行います。
化粧品では、変更内容を製造管理標準書へ反映させるか、もしくは販売自粛のいずれかを選択します。これらの一部変更承認申請については迅速審査の方針が示されており、対応を後ろ倒しにする理由はありません。
3.2 提出書類の選択肢
事業者の判断は3パターンに分かれます。
- 工程変更が必要 → 一部変更承認申請
- 製造・輸入販売を行っていない → 承認整理届書の提出と許可廃止届
- 既存の工程で問題なし → 自主点検結果の保管
「現在製造していない品目」も棚卸しの対象です。休眠品目を放置せず、整理届と許可廃止届をセットで提出することが重要です。
3.3 リスクと留意点
本通知自体は事務連絡ですが、後続の正式通知で本格運用が始まる前提です。点検と整備を怠れば、後の正式通知発出時に駆け込み対応となり、迅速審査の枠組みも使えなくなります。
承認書記載と実態の乖離は、薬機法上の承認事項違反につながりかねません。動物種や原産国の不記載・誤記載は、感染症発生時のトレーサビリティを損ない、回収や業務改善命令の引き金となります。
まとめ
動物由来成分を含む医療用具・医薬品では、ドナースクリーニング、不活化・除去工程、原産国・動物種の記載整備が、薬機法対応上の重要ポイントとなります。特に「培地に動物由来成分を使用しているだけでも対象となる可能性がある」という点は見落とされやすく、承認書と実際の製造工程に乖離がないか、早期に確認することが重要です。
また、承認書の製造方法欄における記載不足や古い試験法のままの運用は、感染症リスクだけでなく、承認事項違反・回収・業務改善命令につながる可能性もあります。休眠品目を含めた棚卸し、一部変更承認申請の要否判断、外国製造業者を含めた原材料管理体制の確認まで、実務対応は多岐にわたります。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、動物由来原料を使用する医療用具・医薬品の薬機法対応支援、承認書点検、一部変更承認申請、QMS・GMP観点でのリスク確認まで実務ベースでサポートしております。
「自社製品が通知対象に該当するかわからない」「承認書の記載が現行要求に適合しているか不安」「PMDA対応を見据えて整理したい」といった場合は、ぜひお気軽にご相談ください。