概要

植込み型心臓ペースメーカの承認申請で、臨床試験成績の要否がケースごとに整理されました。平成12年10月5日付の事務連絡(医療機器審査No.21)は、同年3月28日医薬審第528号通知の運用を補足するQ&Aです。対象はペースメーカを承認申請する製造販売業者で、初回参入か、機能追加か、シリーズ製品かによって添付資料の取扱いが分かれます。

ポイントは三つです。第一に、新規製造元は基本的機能の臨床試験が必須です。第二に、軽微な治療的機能で他社承認前例があれば臨床試験成績は不要です。第三に、シリーズ製品は上位機能の試験で下位を省略できます。

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1. 背景と目的

1.1 元通知との関係

平成12年3月28日医薬審第528号通知「植込み型心臓ペースメーカ等の承認申請に係る取扱いについて」が運用上の基本枠組を示しました。本Q&Aは、その後に寄せられた質疑をまとめ、申請実務での判断のばらつきを抑える目的で発出されました。

1.2 なぜQ&Aが必要だったか

ペースメーカは植込み型の重要医療機器であり、リスクは高い一方で技術改良の頻度も高い領域です。治療的機能の追加や型番違いのシリーズ化が日常的に起こります。臨床試験を一律に求めれば開発が停滞し、緩めれば安全性が確保できません。ケース分けによる判断基準の明確化が現場から求められていました。

2. 主要なQ&A

2.1 新規製造元は基本機能の臨床試験が必要(Q1)

日本で承認実績のない製造元のペースメーカは、既承認品と同等であっても基本的機能の動作確認を含む臨床試験成績の添付が必要です。同等性のみでは省略できません。新規参入の障壁として機能する一方、植込み型の安全性確保を優先した整理です。

2.2 治療的機能の追加(Q2〜Q5)

追加機能の取扱いは四段階に分かれます。

  • 治療的機能の追加で他社承認前例ありの場合、原則として動作確認のための臨床試験成績が必要。ただし他資料で有効性・安全性・品質を十分評価できれば省略可能(Q2)
  • 軽微な治療的機能で他社承認前例ありの場合、臨床試験成績は不要(Q3)
  • 軽微な治療的機能でも他社承認前例なしの場合、原則として臨床試験成績が必要(Q4)
  • 自社既承認の治療的機能を組合せる場合、同一性を十分説明すれば省略可能(Q5)

軽微な治療的機能の例として、ヒステリシス、AVディレイ自動調節機能、不応期自動調節機能、就寝レートのうちタイマー方式が挙げられています。

2.3 他試験成績の流用とシリーズ製品(Q6〜Q7)

新たな治療的機能の臨床試験成績は、試験に使用した製品と異なる製品の申請にも使用できます。ただし治療的機能の同一性を添付資料で説明することが条件です(Q6)。

同一回路でソフトウェアにより機能を区分したシリーズ製品もあります。例えばDDDR、DDD、VDD、SSIR、SSIなどです。この場合、上位機能を有する機種の臨床試験成績を添付すれば、その他の機種の臨床試験は省略できます(Q7)。

2.4 臨床試験の設計と必須項目(Q8〜Q9)

複数の追加機能を同一症例で評価できるなら、一つの臨床試験での評価が認められます。ただし症例数は各追加機能を適切に評価できる規模が必要です(Q8)。

基本的機能の動作確認を行う臨床試験では、患者ごとに次の項目が求められます(Q9)。

  • 患者の略名、性別、生年月日
  • 対象疾患名
  • 植込み前の心電図所見(心拍数を明記)
  • 植込み年月日と手術概要(植込み部位明示)
  • 本体・導線の種類と型番、本体の使用モード
  • 植込み後の心電図所見、合併症、故障等の問題点

2.5 同一品目申請と再審査(Q10〜Q14)

シリーズ製品はQ7で臨床試験を省略できても、同一品目として申請することはできません(Q10)。構造、原材料、性能等に係る軽微でない変更は新規申請が原則です(医薬審第549号通知)。

一方、ある一つのモード内でソフトウェアにより区分された複数型番は、同一品目として申請可能です。比較表で違いを示し、添付資料で同一性を説明する必要があります。型番ごとに販売名を変えることは認められません(Q11)。

新医療用具として再審査指定された品目が複数ある場合、同一の使用成績調査として実施できます。再審査指定機能を有する全品目を対象とすることが原則です(Q12)。

「これまでに開発、供給してきた実績」とは製造元の実績を指します(Q13)。買収・合併で法人名や形態が変わった場合は、変更経緯と製造技術の移転、技術水準の維持を客観的資料で示せば実績として扱えます(Q14)。

3. 実務上の留意点

3.1 申請区分の見極めを最初に行う

新規製造元か、機能追加か、シリーズ展開か、同一回路の型番違いか。この四区分で必要資料が大きく変わります。最初に申請区分を確定させ、臨床試験の要否と同一品目可否を整理することが効率化の起点です。

3.2 同等性・同一性の説明資料を厚く作る

臨床試験を省略するルートを取る場合、依拠する資料は同等性・同一性の説明資料です。比較表、回路図、機能対応表を整備し、有効性・安全性・品質が他資料で十分評価できることを明示します。説明が薄ければ照会対応で時間を失います。

3.3 製造元の実績証明を準備する

医薬審第528号通知の「相当程度の実績」は製造元基準です。買収・合併を経た企業は、技術移転と技術水準維持の客観的資料を早期に準備します。組織変更の経緯と技術継承の証拠が揃わないと実績ありとは扱われません。

まとめ

植込み型心臓ペースメーカの承認申請では、「新規製造元」「治療的機能の追加」「シリーズ製品」「同一回路の型番違い」など、申請区分によって臨床試験の要否が大きく変わります。 特に、軽微な機能追加であっても他社承認前例の有無や同等性説明の内容次第で、必要となる添付資料やPMDA対応は大きく異なります。

また、臨床試験の省略を目指す場合には、比較表・回路図・機能対応表などを用いた“同等性・同一性”の説明資料の完成度が審査上の重要ポイントになります。シリーズ製品の整理方法や同一品目申請可否を誤ると、照会対応や申請区分の見直しにより開発スケジュールへ影響するケースも少なくありません。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、植込み型心臓ペースメーカを含む高度管理医療機器の承認申請支援、PMDA相談対応、臨床評価戦略の整理、同等性説明資料の作成支援、QMS体制構築支援まで実務ベースでサポートしております。
「この機能追加は臨床試験が必要か」「シリーズ製品として整理できるか」「既承認品との同等性をどう説明すべきか」など、実務上の判断にお悩みの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

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