概要
令和8年1月30日、医療機器の原材料変更手続きを定めた通知が約13年ぶりに全部改正されました(医薬機審発0130第1号)。従来の平成25年通知(薬食機発0329第7号)とQ&Aは廃止となり、新しい枠組みで判断する必要があります。
対象は医療機器の製造販売業者(外国特例承認では選任製造販売業者)です。原材料を変更する際、一部変更承認/認証申請(一変)か軽微変更届出(軽微)かの判断基準が明確化され、軽微で進める場合は自己宣言書の添付が新たに義務付けられました。
直近で原材料変更を予定している製品があれば、本通知の対象範囲・除外要件・5つの「軽微にできない類型」を確認し、申請区分を見直してください。

1. 背景と目的
1.1 13年ぶりの全部改正
旧通知(平成25年3月29日付け薬食機発0329第7号)は、医療機器の原材料変更における軽微変更届の範囲を示してきました。しかし運用上の解釈に幅があり、業界からの照会も多く寄せられていました。
今般の改正は、医薬品医療機器等法施行規則第114条の25第1項第3号に基づく軽微変更届の範囲を、医療機器の原材料変更に即して明確化することを目的としています。旧通知本文に加え、Q&A(平成25年5月29日付け薬食機発0529第4号)も同時廃止です。
1.2 法的位置づけ
根拠条文は法第23条の2の5第13項(一部変更承認の規定)と第14項(軽微変更届の規定)です。「製品の品質、有効性及び安全性に影響がなく、厚生労働大臣の承認を受ける必要がない範囲」が軽微変更届の対象となり、その線引きを通知で示す構造は従来通りです。
2. 主要要件と事例
2.1 対象となる原材料の範囲
本通知の対象は、承認/認証申請書「5 原材料欄」に記載された原材料のうち、生体に直接または間接的に接触するものです。電気回路の内部部品など、生体非接触の原材料は本通知の枠組み外です。
ただし以下の5種類は「より慎重に取り扱うべき原材料」として、原材料変更のリスクが低いことが明らかな事例のみに対象が限定されます。
- 植込み型医療機器の植込み部分の原材料
- 身体への接触期間が「長期的接触」に分類される構成品/部品の原材料
- 生物由来原材料(生物由来原料基準が適用されるもの。同基準の運用通知で適用外とされるものは除く)
- 生分解性原材料
- 機能性被覆材(抗血栓性コート、高度潤滑性コートなど)
これらに該当する原材料を変更する場合、後述の「使用前例」の考え方を活用してリスクが低いことを確認できれば、本通知の枠組みに乗せられます。
2.2 原材料欄を「一般名のみ」で記載できる4類型
対象原材料のうち、変更影響が十分に軽微と考えられるものは、申請書の原材料欄を一般名のみの記載にできます。具体的には次の4類型です。
- 接触時間が極めて短い原材料(ISO 10993-1の「Medical devices with brief tissue contact」相当)
- 他部品の固定・シーリング用で、血液・体液・粘膜への接触面積が明らかに小さい原材料(循環血液に直接接するシーリングで連続使用時間が長期となるものは除く)
- 機器表面のみに付された着色材料で、製品強度等に影響しないことが明らかなもの
- 機械式機構部の補助部品や保護部分の原材料
生物由来原材料、生分解性原材料、植込み部分の原材料はこの取扱いから除外されます。一般名のみ記載とする場合は、原材料欄に規格省略の理由を付記してください。
2.3 「軽微にできない」5つの変更類型
軽微変更届で処理できない(一変または新規申請が必要となる)原材料変更は次の5類型です。1つでも当てはまれば、軽微では進められません。
- 既存リスクを増大させる、または新たなリスクを生じさせる原材料変更
- 製品の品質・有効性・安全性に与える影響が十分に推定できないもの
- 製品の使用目的の範囲や保険適用区分を明らかに超えるもの
- 治療または診断効果に与える影響が軽微とは言えないもの
- 上市後に生じた重大な不具合を解消する目的で行う原材料変更
5番目は特に注意が必要です。市販後に判明した不具合対応として原材料を切り替える場合、たとえ性能評価で「軽微」に見えても、本通知では一変扱いとなります。
3. 実務対応
3.1 軽微変更届で進める場合の手続き
軽微変更届出で原材料変更を行う場合、製造販売業者は以下を実施します。
- 対象機器の品質・有効性・安全性に与える影響を事前に確認・検証または評価する
- 検証または評価したことがわかる自己宣言書を軽微変更届に添付する
- 軽微変更届の備考欄に「令和8年1月30日付け医薬機審発0130第1号通知に基づく原材料の変更」と記載する
自己宣言書という形式は旧通知にはなかった要素です。今後の運用では、社内SOPに自己宣言書のテンプレートと作成手順を組み込むことが実務上のポイントとなります。
3.2 検証資料の保管義務
本通知に従って自己担保で検証試験・評価を行った場合、製造販売業者の責任で試験結果等の資料を適切に保管する必要があります。審査過程等で原材料変更に関する資料の提出を求められる可能性があるためです。
保管期間や保管形式の明示はありませんが、QMS省令の記録管理に準じた管理が現実的です。電子記録の場合は、変更時点での評価根拠が後から再現できるよう、ファイル名・保管場所・アクセス権限を設計しておくことが望まれます。
3.3 使用前例を活用する方法
慎重取扱いの5種類に該当する原材料でも、国内外の承認・認証の前例を活用できれば本通知の枠組みに乗せられます。前例として認められる条件は以下の6項目すべてを満たすことです。
- 変更後の原材料が生物由来原材料ではないこと
- 植込み部分の原材料変更でないこと、または変更前後で一般名に変化がないこと
- 規格・仕様(物理的特性等)、添加剤成分の種類・配合量が前例と変わらないこと
- ISO 10993-1の接触部位カテゴリが同等または前例の方がリスクが高いこと
- ISO 10993-1の累積総接触時間カテゴリが同等または前例の方がリスクが高いこと
- 当該原材料に起因する回収報告・重大な有害事象報告が当局になされていないこと
外国の前例を使う場合は、米国など本邦と規制調和の実績がある国に限定されます。さらに十分な臨床使用実績があることが条件です。
3.4 判断に迷ったら相談を
通知本文の留意事項では、個別の原材料の取扱いに迷う場合、PMDAへの簡易相談、登録認証機関への個別相談等の利用が推奨されています。特に慎重取扱い5種類に該当するものや、軽微にできない5類型のいずれに当てはまるか判断が分かれそうな案件は、事前相談の活用が有効です。
まとめ
今回の通知改正では、原材料変更時の「一部変更承認( 一変 )」と「軽微変更届出」の判断基準が明確化されるとともに、軽微変更届出における自己宣言書の添付が新たに求められるなど、実務に大きな影響を与える内容となっています。特に、慎重な取扱いが必要な5種類の原材料や、軽微変更届出では対応できない5類型に該当するかどうかは、承認・認証戦略や申請スケジュールを左右する重要なポイントです。
原材料変更は、「軽微変更届出で対応できる」と判断して進めたものが、後から一部変更承認申請( 一変 )が必要と判断されるケースも少なくありません。判断を誤ると、申請のやり直しや開発スケジュールの遅延につながる可能性があります。そのため、変更内容に応じたリスク評価、自己宣言書の作成、根拠資料の整備を含め、事前に十分な確認を行うことが重要です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の原材料変更に伴う一部変更承認申請( 一変 )・軽微変更届出の判断支援、PMDA・登録認証機関への相談資料作成、変更影響評価、薬事戦略の立案まで幅広くサポートしております。 「この変更は軽微変更届出で対応できるのか」「一変申請が必要か判断に迷っている」「自己宣言書や評価資料の作成方法を確認したい」といったご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。