概要
平成12年12月20日、厚生省医薬安全局審査管理課から各都道府県薬務主管課あてに事務連絡が発出されました。BSE(ウシ伝達性海綿状脳症)リスクを踏まえ、ウシ等由来物を原料に使う医薬品・医療用具・医薬部外品・化粧品の承認申請における経過措置を示した通知です。
対象は、すでに承認申請中、またはこれから申請する品目を扱う製造販売業者・輸入販売業者です。平成13年3月12日までに申請する後発医療用具・医薬部外品・化粧品には、承認時に自主点検と一変申請を求める条件が付されます。一般用医薬品も同様の追って書きが付されます。
事業者がやるべきは2つです。承認後速やかにウシ等由来原料の自主点検を実施することと、原産国・使用部位・処理方法を特定したうえで承認事項一部変更承認申請(一変)を行うことです。

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1. 背景と目的
1.1 BSE問題と承認審査への波及
1990年代後半、英国を中心にBSE(ウシ伝達性海綿状脳症)が世界的な公衆衛生問題となりました。ウシ由来原料を使う医薬品・医療機器がプリオン感染を媒介するリスクが懸念され、厚生省は段階的に規制を強化してきました。
平成12年12月12日、厚生省医薬安全局長通知「医薬発第1226号」と審査管理課長通知「医薬審第1293号」が発出されます。両通知はウシ等由来物の品質・安全性確保の基本ルールを定めたものです。原産国(BSE発生国を避ける)、使用部位(脳・脊髄など特定危険部位の排除)、処理方法(不活化工程の妥当性)を申請資料に明記することを求めています。
1.2 既申請品目への経過措置として位置づけ
新ルールが12月12日に走り出した一方、すでに承認申請中の品目や駆け込みで申請する品目をどう扱うかが課題となります。本事務連絡は、その経過措置を都道府県経由で業界に周知するために出されました。
12月18日付の事務連絡「Q&A」と本通知(12月20日)はワンセットです。Q&Aで運用上の疑問点に答え、本通知で承認時の条件付与の文面を具体的に示しています。
1.3 経過措置の期限は平成13年3月12日
経過措置の対象となるのは平成13年3月12日までに申請されるものに限られます。それ以降の申請は、原則として申請時点で原産国・使用部位・処理方法を明記した資料を整える必要があります。
2. 主要要件と事例
2.1 後発医療用具・医薬部外品・化粧品への承認条件
平成13年3月12日までに承認申請される後発医療用具、医薬部外品、化粧品には、承認時に次の条件が付されます。
本品目については、製造(輸入)を行う前に、ウシ及びその他類縁反芻動物由来物に係る自主点検を行い又は行った結果、ウシ及びその他類縁反芻動物由来原料を用いている場合には、その原産国、使用部位及び処理方法等に関する記載を明確にするために承認事項の一部変更の承認申請を速やかに行うなど、必要な措置を講ずること。
ポイントは3つあります。第1に、製造または輸入を始める前に自主点検を済ませること。第2に、ウシ等由来原料を使っているなら原産国・使用部位・処理方法を承認書に明記する一変申請を行うこと。第3に、自主点検は前述の医薬発第1226号・医薬審第1293号に従うことです。
「ウシ及びその他類縁反芻動物」にはヒツジ、ヤギ、シカなどが含まれます。スクレイピーなど類似のプリオン病を媒介し得るためです。
2.2 一般用医薬品への追って書き
一般用医薬品については、承認条件ではなく「追って書き」として同趣旨の指導が行われます。
平成12年12月12日医薬発第1226号厚生省医薬安全局長通知及び同日医薬審第1293号厚生省医薬安全局審査管理課長通知基に従ったウシ及びその他類縁反芻動物由来物に係る自主点検を行い、必要に応じて承認事項の一部変更の承認申請を速やかに行うなど、必要な措置を講ずること。
承認条件と追って書きの違いは強制力です。承認条件は遵守義務があり、違反すれば承認取消しの対象になります。追って書きは行政指導の性質ですが、自主点検と一変申請を求める実質的な内容は変わりません。
2.3 該当しやすい製品例
ウシ等由来原料の関与が問題となりやすいのは次のような製品です。
- コラーゲン製品: ウシ皮膚・腱由来コラーゲンを使う創傷被覆材、骨補填材、注入剤
- ゼラチンを含む剤型: ハードカプセル、ソフトカプセル、坐剤基剤
- 培養工程でウシ胎児血清(FBS)を使うバイオ製品
- 動物由来ヘパリン、アルブミン、トリプシンなどを工程で使う製品
- 化粧品ではプラセンタ、コラーゲン、エラスチンなどの配合品
最終製品にウシ由来成分が残らない場合でも、製造工程中に使う原材料・試薬・培地に含まれていれば点検対象になります。
3. 実務対応と罰則
3.1 自主点検の手順
自主点検は医薬発第1226号と医薬審第1293号に従って行います。確認すべき項目は次のとおりです。
- 製品本体・添加物・製造工程で使用するすべてのウシ等由来原料の洗い出し
- 各原料の原産国の特定(BSE発生国・地域からの調達は原則回避)
- 使用部位(脳・脊髄・眼など特定危険部位(SRM)に該当しないか)
- 処理方法と不活化工程の妥当性
- 原料供給者からの証明書類(原産国証明、TSE/BSEフリー証明)の入手と保管
供給者から得たエビデンスをもとに、リスク評価を文書化します。後日の承認当局からの照会に備え、記録は確実に残します。
3.2 一部変更承認申請(一変)の対象
自主点検の結果、ウシ等由来原料を使っていることが判明した場合は、承認書の記載を整備するため一変申請を行います。記載すべき情報は次の3点です。
- 原産国(できれば施設名・地域まで)
- 使用部位(皮膚、骨、腱など。脳・脊髄等のSRMでないこと)
- 処理方法(精製工程、不活化工程の概要)
申請時期は「速やかに」とされ、明確な期限は通知に書かれていません。製造または輸入開始前に申請を終えていることが前提です。
3.3 申請しなかった場合のリスク
承認条件は遵守義務があります。違反すれば承認取消しの対象となり、製造販売そのものができなくなります。追って書きも、行政指導とはいえ無視すれば後続のGMP/QMS調査や承認審査で不利に扱われます。
加えて、原産国・使用部位等を明記しないまま製造を続ければ、将来BSE関連通知が改正されたときに供給停止リスクが顕在化します。原料切替えには時間がかかるため、自主点検の段階で代替原料の検討まで視野に入れることが望まれます。
3.4 都道府県と業者の役割分担
本通知は厚生省から都道府県薬務主管課への指示の形式をとり、各都道府県が管轄業者へ周知・指導することになっています。業者側は、所管都道府県からの照会や立入指導に応じる準備が必要です。
まとめ
ウシ由来原料を使用する医療機器・医薬品・医薬部外品・化粧品では、BSE(ウシ伝達性海綿状脳症)対策として、原産国・使用部位・処理方法の確認と文書化が重要です。特に承認申請中または承認取得後の製品については、自主点検の実施と承認事項一部変更承認申請(一変)の要否を適切に判断する必要があります。製品本体だけでなく、添加物や製造工程で使用する原材料・培地・試薬まで確認対象となるため、想定以上に対応範囲が広がるケースも少なくありません。
また、BSE/TSE対応に関する要求事項は、承認申請資料の作成だけでなく、QMS体制やサプライヤー管理、原材料管理にも密接に関係します。自主点検の不足や記載漏れがあると、承認審査やQMS適合性調査で追加対応や説明を求められる可能性があります。そのため、承認申請前後を問わず、原材料の由来確認と証明書類の整備を早期に進めることが重要です。
「自社製品がウシ由来原料の点検対象に該当するか分からない」「一変申請が必要か判断できない」「承認申請書への記載方法やBSE/TSE証明書類の整理方法に不安がある」という場合は、弊社(一般社団法人薬事支援機構)までお気軽にご相談ください。医療機器・体外診断用医薬品・SaMDの薬機法対応、PMDA対応、承認申請資料の作成支援、QMS体制構築まで一貫してサポートしております。BSE/TSE対応に関する実務上の課題についても、貴社の状況に応じた具体的な対応方法をご提案いたします。