概要
令和8年3月25日付けの事務連絡(医薬局医療機器審査管理課・医薬安全対策課)が、医療機器プログラムの取扱いに関するQ&Aの第3弾を示しました。家庭用医療機器プログラムが承認されるなど使用場面が多様化したことを受け、製造販売業・販売業における製造販売や販売の開始時点の解釈を明確にした点が中心です。SaMD(ソフトウェア単体で医療機器となるプログラム)を電気通信回線で提供する事業者が、いつ業許可上の行為が成立し、法定表示をどう届けるかを確認するための実務資料です。

1. 背景と目的
1.1 家庭用医療機器プログラムの登場
医療機器プログラムの取扱いは、平成26年11月21日付けの通知(薬食機参発1121第33号ほか)を起点に、Q&A(平成26年11月25日)とその2(平成27年9月30日)で整理されてきました。今回のその3は、これらを補うものです。近年、スマートウォッチに搭載されるような家庭用医療機器プログラムが承認され、一般消費者が直接使う場面が増えました。従来の医家向け前提の解釈だけでは判断が難しい論点が生じたため、追加のQ&Aがまとめられました。
1.2 明確化の主眼
今回の主眼は2つです。1つは、製造販売や販売がいつ成立するかというタイミングの解釈です。もう1つは、家庭用医療機器プログラムにおける法定表示や注意事項等情報の届け方です。いずれも、物理的な製品と異なりネットワーク経由で提供されるプログラム特有の論点です。
2. 主要な論点
2.1 製造販売業と販売業の両方が必要
同一企業が医療機器プログラムの製造販売と販売の両方を行う場合、両方の業許可または届出が必要です。片方で足りるわけではありません。ただし例外があります。法第39条第1項ただし書き等に基づき、製造・輸入した医療機器を製造販売業者、製造業者、販売業者、貸与業者へ販売・授与する場合は、販売業の許可(届出)は不要です。事業者間の流通に限った緩和である点に注意が必要です。
2.2 製造販売・販売が成立するタイミング
家庭用医療機器プログラムを電気通信回線で提供する場合、製造販売と販売のタイミングが分かれます。製造販売のタイミングは、当該プログラムがダウンロード用サーバやアプリストア等に公開された時です。OS更新時にプログラムが搭載される場合は、更新版OSが公開された時を指します。一方、販売または授与のタイミングは、使用者がプログラムを利用可能な状態にした時点、つまり有効化した時点等です。公開と有効化で行為の性質が変わる点が、実務判断の分かれ目になります。
2.3 有効化権限が海外にある場合
外国特例承認取得者や外国製造業者に、プログラムの有効化の許可権限がある場合があります。この場合でも、選任製造販売業者や国内の製造販売業者・販売業者は責任を免れません。有効化の状況等について、それらの事業者と適宜情報共有を行います。品質の確保や苦情処理など、それぞれの業に係る遵守事項を適切に実施します。海外に権限があるから国内側は関与しなくてよい、とはならない構図です。
2.4 家庭用プログラムの法定表示・注意事項等情報
法定表示は、医家向け医療機器と同様に、平成26年11月21日付け通知の「13 法定表示について」を参考に対応します。注意事項等情報については扱いが分かれます。一般消費者向け医療機器は、原則として容器等に符号を記載するのではなく、注意事項等情報そのものを添付文書等に記載します。ただし家庭用医療機器プログラムは、施行規則第225条により、使用者が容易に閲覧できる電磁的記録で添付されていれば、添付文書等への記載を要しません。電磁的記録による添付方法は、規則第224条第7項の考え方を準用します。
2.5 情報提供のタイミングは「使用前」
法定表示事項は、プログラムの使用中だけでなく、使用する前に使用者へ提供する必要があります。使用中に閲覧できるだけでは足りません。例えば、有効化を行う前に法定表示のウェブページリンク等を表示し、使用者が確認した後に有効化のセットアップへ進む仕様が考えられます。更新によって法定表示事項に変更が生じる場合も、同様に使用前の情報提供が望まれます。
3. 実務対応
3.1 業許可の棚卸し
まず、自社の事業形態を確認します。製造販売と販売の両方を行うなら、両方の許可・届出がそろっているかを点検します。事業者間流通に限る例外に該当するかも整理します。海外の承認取得者や製造業者と組む場合は、有効化権限の所在と情報共有の枠組みを契約で明確にしておきます。
3.2 提供フローへのタイミング判定の組み込み
配信サーバやアプリストアへの公開と、使用者による有効化を、それぞれ製造販売・販売のタイミングとして自社の管理フローに落とし込みます。どの時点でどの業の遵守事項が発生するかを整理しておくと、記録管理や苦情処理の起点が明確になります。
3.3 使用前の法定表示提供の設計
家庭用医療機器プログラムでは、有効化前に法定表示や注意事項等情報を確認させる画面設計を組み込みます。電磁的記録での添付が認められるため、ウェブページリンク等を使う方法が現実的です。更新時にも表示内容を見直す運用にしておくと、変更漏れを防げます。
まとめ
医療機器プログラムQ&A(その3)は、SaMD(プログラム医療機器)の製造販売・販売開始時期、業許可、法定表示の考え方を明確化した重要な実務資料です。特に、「公開時=製造販売」「有効化時=販売」というタイミングの違いや、使用前に法定表示・注意事項等情報を提供する必要があることは、家庭用医療機器プログラムを取り扱う事業者にとって必ず押さえておきたいポイントです。
一方で、自社の提供形態によっては、製造販売業・販売業の許可要件の整理、有効化フローの設計、法定表示の実装方法、海外事業者との役割分担など、通知だけでは判断が難しいケースも少なくありません。実際の運用を誤ると、薬機法上の対応漏れや運用上のリスクにつながる可能性があります。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、SaMD・医療機器プログラムに関する薬事戦略の立案をはじめ、業許可に関するご相談、承認申請支援、法定表示・電子添文への対応、QMS・GVP・GQPを含めた実務支援まで幅広くサポートしています。医療機器プログラムの薬事対応や制度解釈でお困りの際は、お気軽に弊社へお問い合わせください。