概要
令和8年7月27日、厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長から医薬機審発0727第7号が発出されました。収載されたQ&Aはわずか1問です。それでも中身は軽くありません。市販後の不具合報告が一部不要になったことを受け、「では承認申請の添付資料も省けるのか」と問われ、行政は「必要である」と答えました。
対象は医療機器の製造販売承認申請を行う製造販売業者です。とくに海外で先行販売している品目を日本で申請する場合、直接影響します。届出や切替えの期限はありません。今の書き方を変えないことが、そのまま対応になります。承認申請の添付資料1.4項「外国における使用状況」は、これまでどおり書き続けてください。

1. 背景と目的
1.1 約10年ぶりに動いたQ&Aシリーズ
このQ&Aシリーズの本体は、平成27年6月1日付け薬食機参発0601第1号です。その2が平成28年3月1日に出て以降、続編は長く止まっていました。今回の「その3」は約10年ぶりの追加になります。
通知の冒頭では、前提となる3本が並べて示されています。医療機器の製造販売承認申請書の作成に際し留意すべき事項について(平成26年11月20日付け薬食機参発1120第1号)、同じく添付資料の作成に際し留意すべき事項について(平成27年1月20日付け薬食機参発0120第9号)、そしてQ&A本体です。3本とも令和8年3月31日に一部改正されています。 直近で申請書式を確認した担当者でも、改正版を見ていなければ前提がずれます。
なお本Q&Aは、2本目の「承認申請添付資料留意事項通知」に紐づく問いだけで構成されています。
1.2 引き金は令和7年厚生労働省令第117号
今回の問いが生まれた原因は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の改正に伴う整備省令にあります。令和7年厚生労働省令第117号、いわゆる改正省令です。令和8年5月1日に施行されました。
この施行により、外国医療機器における既知の死亡又は重篤症例について、30日以内の不具合報告が不要となりました。市販後の安全監視側で負担が減った形です。ここで「外国の不具合情報を集める義務が軽くなったのだから、申請資料の記載も減らせるのではないか」という発想が出てきます。今回のQ1は、まさにその期待に対する照会でした。
2. Q&Aの中身
2.1 何が聞かれたのか
Q1は、添付資料1.4項「外国における使用状況」を名指ししています。改正省令の施行で外国医療機器の既知の死亡・重篤症例に係る30日以内の不具合報告が不要になった。それでも承認申請書の添付資料では、引き続き当該申請品について外国での使用における不具合の発現状況を記載する必要があるか。問いはこの一点です。
2.2 行政の答えは「必要である」
A1は冒頭で「必要である」と言い切りました。根拠は承認申請添付資料留意事項通知そのものです。同通知は、外国での使用における、外国の規制当局に報告されている不具合の発現状況について、不具合の種類や発生頻度等の概略を一覧表として記載することを求めています。この記載要求は改正省令の施行後も変わらず、引き続き記載することとされました。
追加の様式も、経過措置も、猶予期間もありません。従来どおりに書く。それが結論です。
2.3 報告制度と承認審査は別の物差し
読み解くべきは、緩和されたのが何かという点です。30日以内の不具合報告は、市販されている製品を監視するための仕組みです。一方、添付資料1.4項は、これから承認するかどうかを判断するための審査資料にあたります。目的が違えば必要な情報も違います。
外国での使用実績は、日本国内に使用経験のない品目にとって数少ない実地データです。ここが空欄になれば、審査側は有効性と安全性を評価する材料を失います。報告制度が緩んでも審査資料が連動しない理由は、この非対称性にあります。今回のQ&Aは、両者を混同しないよう線を引きました。
3. 実務対応
3.1 添付資料1.4項の書き方は据え置く
まず社内の記載要領を確認してください。改正省令に合わせて1.4項の記載を簡略化したり、外国不具合の一覧表を削除したりしていれば、元に戻す必要があります。記載すべきは外国の規制当局に報告されている不具合の発現状況で、不具合の種類と発生頻度等の概略を一覧表にまとめる形です。
3.2 情報収集の経路を切らない
30日報告の対象から外れると、海外の製造元や関連会社からの情報提供が細りやすくなります。申請時に一覧表を求められる以上、外国の不具合情報そのものは手元になければ書けません。海外グループ会社との情報提供の取決めや、外国規制当局データベースの確認手順は維持してください。報告義務の縮小と情報収集の縮小は、切り離して考える必要があります。
3.3 令和8年3月31日改正版で突き合わせる
申請準備中の品目があるなら、記載要領を令和8年3月31日一部改正後の通知で確認し直すのが確実です。今回のQ&Aだけを読んでも、改正の全体像はつかめません。承認申請書の留意事項通知と添付資料の留意事項通知、Q&A本体、その2、その3をひとそろいで参照してください。
まとめ
医薬機審発0727第7号で明確になった重要なポイントは、外国医療機器に係る30日以内の不具合報告が一部不要となっても、医療機器の製造販売承認申請で求められる外国不具合情報の記載は省略できないという点です。承認申請の添付資料1.4項「外国における使用状況」では、引き続き、外国の規制当局に報告されている不具合について、その種類や発生頻度等の概略を一覧表として整理する必要があります。
そのため、医療機器の承認申請を予定している製造販売業者は、社内の申請資料作成手順や外国不具合情報の収集体制を改めて確認することが重要です。 とくに海外で先行販売されている医療機器では、30日報告の対象外となったことを理由に海外製造元や関連会社からの情報収集を縮小すると、承認申請時に必要な情報が不足する可能性があります。申請直前になって対応するのではなく、開発・申請準備の段階から必要な外国不具合情報を整理しておくことが、円滑な承認申請につながります。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の製造販売承認申請、申請書・STED等の添付資料作成、外国不具合情報の整理、PMDA相談、照会事項対応まで、医療機器薬事を幅広く支援しています。 「添付資料1.4項をどこまで記載すればよいかわからない」「海外製造元から入手した不具合情報をどのように申請資料へまとめるべきか」「最新通知を踏まえて申請資料をレビューしてほしい」といったお悩みがございましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。