概要
令和8年3月31日付け医薬機審発0331第7号により、承認申請書の添付資料留意事項通知(平成27年1月20日付け薬食機参発0120第9号)が一部改正されました。改正法の施行に伴う整備省令(令和7年厚生労働省令第117号)で施行規則第114条の19の添付資料規定が見直されたことを受けた対応です。適用は整備省令の施行日である令和8年5月1日以降の申請からです。STED(サマリー・テクニカル・ドキュメント)の記載項目のうち、添付文書関連とリアルワールドデータ関連が主に変わります。医療機器メーカーの薬事担当者が申請資料を作成する際の実務に直結する改正です。

1. 背景と目的
1.1 改正の位置づけ
添付資料留意事項通知は、承認申請書に添付する資料をGHTF(医療機器規制国際整合化会議)で合意されたSTED形式で編集する際の作成基準です。今回の改正は、法改正で「添付文書」の位置づけが「注意事項等情報」へ整理されたこと、また臨床評価でのリアルワールドデータ活用が進んだことを、STEDの記載項目に反映するものです。
1.2 誰が・何を・いつまでに
対象は法第23条の2の5および第23条の2の17に基づき医療機器の製造販売承認申請を行う製造販売業者です。令和8年5月1日以降の申請から改正後の項目が適用されます。新医療機器・改良医療機器(臨床あり)は別添1、改良医療機器(臨床なし)・後発医療機器は別添2に構成が示されています。
2. 主要な改正内容
2.1 「添付文書(案)」から「注意事項等情報を記載した文書(案)」へ
STEDの第5項が「添付文書(案)」から「注意事項等情報を記載した文書(案)」に改められました。これは法改正で添付文書制度が注意事項等情報制度へ移行したことに対応する変更です。
改正前は、法第63条の3に基づき厚生労働大臣が指定する医療機器(添付文書届出対象品目)に限って本項に添付文書(案)を添付する扱いでした。改正後は、本項に「注意事項等情報を記載した文書(案)」を添付する構成に変わりました。主として一般消費者の生活の用に供される医療機器等については、従来どおり添付文書(案)を添付します。
「警告」欄、「禁忌・禁止」欄、「使用上の注意」欄について、非臨床試験や臨床試験の成績、文献、類似機器の情報、リスクマネジメント結果等に基づき設定根拠を記載する点は維持されています。文言が「添付文書」から「注意事項等情報を記載した文書」へ置き換わった点が実質的な変更です。
2.2 高リスク品目における主要使用国との比較
クラスIV、およびクラスIIIのうち埋込み・留置を行うものや不具合時に生命の危険に直結する可能性が相対的に高い品目については、主たる使用国の情報と比較して設定根拠を記載する規定が残ります。改正により、比較対象が「添付文書等」から「注意事項等情報を記載した文書等」へと名称変更されました。比較資料は別途添付し、設定根拠を説明する箇所以外は邦訳不要である点も維持されています。
2.3 リアルワールドデータ活用資料の追加(別添1)
別添1の第8項(臨床試験の試験成績等)に、リアルワールドデータ(RWD)を活用した資料に関する項目が新設されました。実務上、最も注目すべき追加です。
- レジストリデータ等のRWDを分析して有効性・安全性等の根拠とする場合、当該資料を添付する
- RWD等を活用した臨床評価データはGCP省令への適合は不要だが、GCP非適合の場合でも申請資料の信頼性基準(施行規則第114条の22各号)への適合が必要
- レジストリ活用時は「『承認申請等におけるレジストリの活用』に関する基本的考え方」(令和3年3月23日付け薬生機審発0323第1号)等を参考にする
- 特定臨床研究の試験成績を活用する場合は、令和6年6月5日付け事務連絡を参考にする
- 追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等を用いた性能評価試験を添付する場合は、令和3年9月29日付け薬生機審発0929第1号(令和7年3月17日一部改正)等を参考にする
RWDやレジストリを臨床評価の根拠に使う動きが制度上明確に位置づけられました。信頼性基準の遵守が前提となる点に留意が必要です。
2.4 別添2(臨床なし品目)の対応
改良医療機器(臨床なし)・後発医療機器を対象とする別添2でも、第5項が「注意事項等情報を記載した文書(案)」へ改められました。既承認機器の注意事項等情報を記載した文書と対比し、異なる内容がある場合はその理由を簡潔に説明する構成です。
2.5 旧通知4本の廃止
本通知の発出に伴い、次の4通知が廃止されました。添付資料概要作成の手引き(平成17年)、承認基準適合品目の留意事項(平成17年)、後発医療機器の留意事項(平成21年)、改良医療機器の留意事項(平成23年)です。添付資料作成の根拠が本通知に一本化された形です。
3. 実務対応
3.1 STEDテンプレートの第5項の更新
STEDの第5項の見出しと本文を「注意事項等情報を記載した文書(案)」へ更新してください。社内で申請書ひな型を運用している場合、旧「添付文書(案)」のまま提出すると新制度の名称と整合しません。高リスク品目の主要使用国比較の記載も名称を合わせる必要があります。
3.2 RWD活用の要否と信頼性設計
臨床評価にレジストリや既存の医用画像データを使う可能性がある場合、第8項の新規定と参照通知群を早めに確認してください。GCP非適合でも施行規則第114条の22の信頼性基準は必須です。データの収集・保管・分析の各段階で信頼性を確保できる設計にしておくことが重要です。
3.3 廃止通知を参照している資料の点検
過去の添付資料作成で廃止4通知を引用している場合、参照先を本通知(改正後全文)へ差し替えてください。特に承認基準適合品目・後発・改良の各区分は、専用通知が廃止され本通知の別添2に統合されています。
まとめ
今回の改正では、医療機器の承認申請におけるSTEDについて、「添付文書(案)」から「注意事項等情報を記載した文書(案)」への変更に加え、リアルワールドデータ(RWD)やレジストリデータを活用した臨床評価資料の取扱いが明確化されました。2026年5月1日以降の承認申請では、改正後のルールを踏まえたSTED作成が必要となるため、医療機器メーカーは社内テンプレートや申請資料の作成手順を早めに見直すことが重要です。
特に、RWDを医療機器の有効性・安全性等の根拠として承認申請に活用する場合は、GCPへの適合要否だけでなく、申請資料の信頼性基準を踏まえたデータの収集・保管・分析方法を検討する必要があります。また、旧通知4本の廃止に伴う参照先の変更など、既存の申請資料や社内手順書についても確認しておくことが求められます。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の製造販売承認申請をはじめ、STED・添付資料の作成支援、申請資料のレビュー、RWD・臨床評価資料の整理、PMDA相談など、医療機器薬事に関する各種支援を行っています。「改正後のSTEDをどのように作成すればよいかわからない」「RWDを承認申請に活用できるか確認したい」「現在作成している申請資料が新しいルールに対応しているか確認してほしい」といったお悩みがございましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。