概要

令和8年5月1日から、生物由来製品と再生医療等製品の「感染症定期報告」は「感染症評価報告」に変わりました。本通知は、厚生労働省医薬局医薬安全対策課長がその実務面を定めたものです。何を調査対象とし、調べた結果をどの様式にどう書き、何をどこへ出すのかが示されています。

医療機器の事業者にとって、関係するかどうかの線引きは明確です。対象は生物由来製品に指定された製品を製造販売する事業者です。薬機法の定義上、生物由来製品には医療機器も含まれます。指定を受けた医療機器を扱う製造販売業者は、本通知に沿って報告書を作ることになります。

一方、動物由来の材料を使っていても、生物由来製品の指定を受けていない医療機器はこの報告の対象外です。指定品であっても、生物由来原料基準の適用を受けない原料や材料は調査対象から外れます。

本通知の適用とともに、平成29年の「感染症定期報告課長通知」は廃止されました。5月1日以降の報告書は、新しい様式と本通知の書き方で作る必要があります。

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1. 背景と目的

1.1 定期報告から評価報告へ

改正法(令和7年法律第37号)と関係省令の整備省令(令和7年厚生労働省令第117号)が令和8年5月1日に施行されました。これに伴い、「感染症定期報告」は「感染症評価報告」に改められました。制度の全体像は、同日付けの医薬局長通知「再生医療等製品及び生物由来製品に関する感染症評価報告制度について」が定めています。

本通知はその局長通知を受けた課長通知です。局長通知が「何を報告するか」を決め、本通知が「どう調べ、どう書くか」を担います。

1.2 旧課長通知の廃止

これまでの調査内容と記載方法は「再生医療等製品及び生物由来製品の感染症定期報告に係る調査内容及び記載方法について」(平成29年4月28日付け薬生安発0428第1号)が示していました。本通知は改正法の施行日である令和8年5月1日から適用され、同時に旧通知は廃止されました。

1.3 本文を読むための前提

本通知は、局長通知の項目番号を引きながら書かれています。とくに「局長通知の記の1の(1)の場合」と「記の1の(2)の場合」の区別が繰り返し出てきます。

記の1の(1)は、新感染症や一類感染症に関する研究報告・外国措置を知ったときの報告です。記の1の(2)は、それ以外の研究報告や感染症の発生、措置を調査期間ごとにまとめる報告です。期限などの詳細は局長通知側にあります。

2. 主要要件と事例(何を調査するか)

2.1 研究報告が対象とする感染経路

研究報告の対象は、人に感染すると認められる疾病です。感染源としては、次の経路が挙げられています。

  • 製品の由来となる人その他の生物(植物を除く)
  • 製品の原材料(生物由来原料基準に規定する原材料で、人その他の生物を由来とするもの)
  • 生物由来成分(製品に含有し、または製造工程で使う原料・材料のうち生物由来のもの)
  • 原材料から生物由来成分に至るまでの中間の物
  • 製品そのもの

2.2 全件ではなく、重要なものから調べる

研究報告の調査は、製造販売業者等の責務に基づく適正な判断の下で行うとされています。製品を評価するうえで、より重要なものから必要な調査をする考え方です。重要度の目安として、次のものが例示されています。

  • 当該製品について新たに判明した感染症
  • 感染症の発生頻度の増加
  • 新たに判明した感染経路

どの文献を拾い、どれを重要と判断したかは事業者の判断に委ねられています。判断の根拠を社内手順として残しておくと、後から説明しやすくなります。

2.3 論文・学会発表の個別症例は「症例」として扱う

論文や学会報告で発表された個別の症例は、研究報告として扱いません。論文等を端緒に企業が把握した「当該製品によるものと疑われる個別症例」と位置づけられます。報告は、局長通知の「当該製品等によるものと疑われる感染症」の欄で行います。

文献調査の担当者が症例報告を研究報告の一覧に入れてしまうと、記載箇所を誤ることになります。文献の振り分けルールを決めておくべき論点です。

2.4 適正使用等確保措置の範囲

保健衛生上の危害の防止や適正使用のための措置は「適正使用等確保措置」と呼ばれます。対象範囲は報告の類型で異なります。

  • 記の1の(1)の場合は外国で使われている製品が対象です。当該製品と同一の原材料からなる生物由来成分を含有し、または製造工程で使用するものに限られます
  • 記の1の(2)の場合は、それに加えて当該製品自体も対象になります

いずれも、製品名が不明なものも含みます。調査の観点は、危害の発生・拡大を防ぐ措置と適正使用を確保する措置、製造・輸入・販売の中止や回収・廃棄などの措置です。いずれも感染症に係るものに限られます。

2.5 見解・発生状況・その他の情報

報告を行う者の見解は、調査結果の概要と、それを踏まえた今後の安全対策をまとめるものです。感染症の種類別発生状況と発生症例一覧は、当該製品と、外国で使われている同一原材料の製品の両方が対象です。

「その他の適正使用情報」は、品質・有効性・安全性に関する事項などのうち、感染症に係るものに限られます。生物由来原料基準の適用を受けない原料・材料は、そもそも本報告の対象外です。

3. 実務対応(報告書の作り方と提出)

3.1 記の1の(1)の場合の取りまとめ

感染症評価報告書ごとに局長通知の別紙様式を作り、調査結果を次のように取りまとめます。

  • 研究報告は、別添2で名称一覧を、別添3で感染症研究報告調査報告書を作ります。調査報告書ごとに文献等を参考資料として付けます
  • 外国の措置は、別添6で外国における措置調査報告書を作り、外国規制当局の文書等を参考資料にします
  • 見解は別紙様式に書き、欄が足りなければ別添7を使います

3.2 記の1の(2)の場合の取りまとめ

報告書ごとに別紙様式と別添1を作り、調査期間中の結果を別添2〜7で取りまとめます。対応関係は次の表のとおりです。

報告する内容使う様式
研究報告の名称一覧別添2
研究報告ごとの調査報告書(文献等を添付)別添3
感染症の種類別発生状況(調査期間終了時まで)別添4
感染症発生症例の一覧(調査期間中)別添5
外国における措置ごとの調査報告書別添6
適正使用等確保措置・見解・その他の適正使用情報別紙様式(不足時は別添7)

外国の措置は別添6、それ以外の措置は別紙様式と、書く場所が分かれている点に注意が必要です。

3.3 一括報告するときの分け方

局長通知に従い生物由来成分ごとに一括報告する場合は、別紙様式の区分1ごと、生物由来成分ごとに報告書を分けます。同一成分を含む複数製品をまとめて記載します。原産国が同一の原材料ごとに一括する場合は、区分1ごと、原産国ごとに分けます。

3.4 提出物と提出先

提出物と提出形式は次のとおりです。

  • 別紙様式と別添1〜7は、エクセルファイル1ファイルにまとめ、正本1部とあわせて出します。別添は提出が必要なものだけで構いません
  • 参考資料はPDFで、内容ごとに1ファイルです。必要なものだけを出します
  • CCDS、CCSIなど国内外の主要な安全性情報文書はPDF1ファイルです。該当文書に感染症の記載があれば、その部分に下線を引きます

提出先は、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)安全性情報・企画管理部情報管理課です。

まとめ

2026年(令和8年)5月1日の薬機法改正により、従来の「感染症定期報告」は「感染症評価報告」へ変更されました。生物由来製品や再生医療等製品を取り扱う製造販売業者は、新たな報告制度に対応するため、感染症に関する調査内容、研究報告と個別症例の分類、報告様式(別添1~7)の記載方法、PMDAへの提出手続きを正しく理解する必要があります。特に、生物由来製品に指定された医療機器については、対象となる原材料や生物由来成分を確認し、適切な感染症リスク評価と報告体制を整備することが重要です。

今回の制度改正に対応するためには、感染症評価報告の対象製品の確認、文献調査・情報収集手順の見直し、報告対象情報の分類、社内手順書の改訂などが求められます。また、研究報告や外国における安全対策措置の調査結果を適切に整理し、新様式に沿って報告書を作成することが重要です。製造販売業者は、GVP(製造販売後安全管理)に基づく安全管理体制との整合性も確認し、感染症評価報告を適切に実施できる体制を整えておくことが望まれます。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器・生物由来製品に関する薬事規制への対応などを支援しています。 感染症評価報告制度への対応をはじめ、報告対象の該当性確認、感染症リスク評価、報告書の作成支援、GVP関連手順書の整備、PMDAへの報告手続きに関する薬事相談など、各企業の製品特性や事業体制に応じたサポートをご提案します。「自社製品が感染症評価報告の対象になるのかわからない」「新しい報告様式への対応に不安がある」「社内の安全管理体制を見直したい」といったお悩みがございましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。

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