概要
2026年(令和8年)5月1日、改正薬機法の一部が施行され、医療機器の不具合報告、条件付承認制度、リアルワールドデータ(RWD)の活用、優先審査制度などが見直されました。医療機器の製造販売業者にとって、承認申請から製造販売後の安全管理まで幅広い実務に関係する改正です。
特に重要なのが、外国で発生した予測可能な不具合・重篤症例等の30日報告の一部廃止と、発生傾向に応じた15日報告の新設です。これにより、GVP手順書や不具合報告の判断フロー、外国症例の安全性情報の評価体制を見直す必要があります。また、RWDを活用した承認申請・使用成績評価の明確化や、医療機器の条件付承認制度の見直しも押さえておくべきポイントです。
本記事では、2026年薬機法改正のうち医療機器メーカーに関係する主要な変更点を整理し、不具合報告の新ルール、条件付承認、RWD活用、優先審査、感染症評価報告などの制度概要と、製造販売業者が確認すべき実務対応についてわかりやすく解説します。

1. 背景と目的
1.1 改正法と施行の段階
改正法(令和7年法律第37号)は令和7年5月21日に公布されました。このうち附則第1条第2号に掲げる規定が、令和8年5月1日施行とされました。
この施行に合わせて関係政令(令和7年政令第362号)と関係省令(令和7年厚生労働省令第117号)が公布されました。関係告示(令和7年厚生労働省告示第324号)も同様です。本通知は、これら一式の趣旨と内容を都道府県等に周知するためのものです。
1.2 通知の構成
本文は第1から第18までの項目で構成されています。医療機器との関係で分けると、次のようになります。
| 区分 | 該当する項目 |
|---|---|
| 医療機器の事業者に直接関係する | 第4 RWD、第5 条件付承認、第10 輸入確認、第11 供給不足時の優先審査、第12 大型医療機器の符号、第13 不具合報告、第15 登録認証制度、第18 様式 |
| 該当品目を扱う場合に関係する | 第8 検定から検査へ、第14 生物由来製品の感染症評価報告、第7・第16 体外診断用医薬品 |
| 医療機器には関係しない | 第1〜第3 要指導医薬品・指定濫用防止医薬品、第6 小児用医薬品、第9 日本薬局方、第17 毒物劇物 |
なお、同日付けで「再生医療等製品及び生物由来製品の感染症評価報告に係る調査内容及び記載方法について」も発出されています。こちらは別の通知です。
2. 主要要件と事例
2.1 不具合報告の見直し(第13)
医療機器の安全管理部門に最も影響が大きいのがこの項目です。国内で製造販売する医療機器と同一性がある外国の医療機器について、使用上の注意等から予測できる事象の扱いが変わりました。
報告が不要になったものは次の2つです。
- 外国医療機器で起きた予測できる死亡・重篤な症例等(従来は30日報告)
- 外国医療機器で起きた予測できる不具合で、死亡・重篤な症例等が発生するおそれがあるもの(従来は30日報告)
その一方で、15日以内の報告が求められる類型が加わりました。
- 外国医療機器で起きた予測できる死亡で、発生傾向が予測できないもの又は傾向の変化が危害の発生・拡大のおそれを示すもの
- 国内・外国の医療機器で起きた予測できる重篤な症例等で、同じ条件に当たるもの
予測できる外国症例は「1件ずつ報告する」から「傾向で判断する」へ考え方が移ったといえます。発生傾向を継続的に評価する仕組みを社内に持っているかが問われます。
2.2 RWDの利活用(第4)
医療機器の使用成績評価の申請資料として、製造販売後データベース調査などのRWDに基づく資料を提出できることが明確化されました。承認申請の添付資料についても、診療等で得られた情報を分析した資料の提出ができると明記されています。
ただし、RWDを使うかどうかにかかわらず、倫理性・科学性・信頼性の確保された資料で有効性・安全性を立証する必要がある点は従前どおりです。承認申請資料の具体的な取扱いは別途示すとされています。
2.3 条件付承認の見直し(第5)
新しい条件付承認は、医薬品だけでなく医療機器も対象です。医療上特に必要性が高く、効能・効果等を有すると合理的に予測できる場合などに、薬事審議会の意見を聴いて条件を付して承認できます。
旧法にあった「検証的臨床試験が困難と考えられるとき」に関する手続規定は削除されました。承認後は、条件として付された臨床試験や製造販売後調査等の成績を資料に調査を申請する流れです。結果次第で承認取消し・条件変更・措置の再実施命令の対象となります。
添付文書等では、条件付承認制度の適用である旨や承認の条件、臨床試験の成績等の情報提供が必要です。施行日時点ですでに旧法の条件付き承認を受けている品目と、審査中で判断が出ていない品目は、従前の例によります。
2.4 供給不足時の優先審査(第11)
次の両方に当てはまる医療機器は、審査・調査を優先して行えるようになりました。
- 既承認品と同一性があり、その用途で外国で販売等が認められている
- 既承認品の需要が著しく充足されておらず、ほかに医療上適当な方法がない
この枠で承認された品目は厚生労働省のホームページで公示されます。公示品は例外的に、直接の容器・被包への表示に代えて添付する文書への表示が認められます。
2.5 大型医療機器の符号表示(第12)
構造や性状から容器・被包に収められない医療機器が対象です。使用される間、使用者等が適切に把握できる方法で注意事項等情報を入手するための符号を提供していれば、容器・被包への符号の記載は不要になりました。電気通信回線を通じて提供される医療機器プログラムは除かれます。
3. 実務対応と罰則
3.1 安全管理部門で見直すべきこと
不具合報告の改正は、GVP手順書や報告判断フローに直結します。外国症例の30日報告を前提とした判断表が残っていれば、改める必要があります。
新設の15日報告は「発生傾向」の評価が前提です。外国情報も含めて、予測できる事象の件数推移をどう監視するか、社内の判断基準を決めておくことが欠かせません。運用の詳細は別途示されるとされているため、続報の通知とあわせて確認してください。
3.2 生物由来製品を扱う事業者
生物由来製品に該当する医療機器を扱う場合は、第14も対象です。従来の「感染症定期報告」は「感染症評価報告」に改められ、該当する場合だけ報告する仕組みになりました。
- 新感染症・一類感染症に関する研究報告や外国措置を知った場合は、30日以内に報告
- それ以外の研究報告、感染症の発生、措置を知った場合は、6か月の調査単位期間ごとに満了後1か月以内に報告(翻訳が必要なときは2か月以内)
いずれにも該当しなければ報告は不要です。
3.3 登録認証制度と輸入確認
登録認証機関については、厚生労働大臣が機関の調査に立ち会えるようになりました。登録認証機関が事業の全部を譲渡等した場合は、承継した法人等がその地位を引き継ぎ、大臣への届出が必要です。届出なしでの業務の休止・廃止や虚偽の届出も、新たに罰則の対象になっています。
輸入確認では、製造販売業者・製造業者が臨床試験その他の試験研究の目的で輸入する場合、違反行為から2年を経過していなくても確認を受けられるようになりました。その場合、様式第97の3の確認事項欄には☑を記入せず、備考欄に「薬機法施行規則第218条の2の3第2項ただし書きの場合に該当」等と記載します。
3.4 体外診断用医薬品と様式
体外診断用医薬品を扱う事業者は、第7と第16も確認が必要です。製造管理者に薬剤師を置くことが著しく困難な場合、要件を満たす技術者を5年に限り置けるようになりました。その場合は補佐する薬剤師を置くことなどが求められます。
承認前試験に関する手数料令・手数料規則の規定は削除されました。これに伴い、同試験の取扱いを示した次の2通知が令和8年5月1日付けで廃止されています。
- 「体外診断用医薬品の製造販売承認前試験の取扱いについて」(令和元年10月3日付け薬生機審発1003第1号)
- 「体外診断用医薬品の製造販売承認前試験の新規受付の停止について」(令和6年10月1日付け医薬機審発1001第2号)
様式については、施行時に旧様式で使われている書類は新様式によるものとみなされます。旧様式の用紙も、当分の間は取り繕って使用できます。
まとめ
2026年(令和8年)5月1日に施行された薬機法改正では、医療機器の不具合報告制度、条件付承認制度、リアルワールドデータ(RWD)の活用、優先審査制度など、医療機器メーカーの薬事業務や製造販売後の安全管理に関わる重要な見直しが行われました。特に、外国症例に関する30日報告の一部廃止と、発生傾向に基づく15日報告の新設は、製造販売業者のGVP体制に直接影響する変更です。
医療機器の製造販売業者は、GVP手順書の改訂、不具合報告の判断フローの見直し、外国症例の発生傾向を評価する仕組みの整備など、改正後の規制に対応した安全管理体制を構築することが重要です。また、RWDを活用した医療機器の承認申請や使用成績評価、条件付承認制度の適用可能性についても、自社製品の開発状況や薬事戦略に応じて検討する必要があります。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の薬機法改正対応をはじめ、GVP・GQP・QMS体制の構築・見直し、不具合報告に関する実務支援、PMDA相談、医療機器の承認・認証申請など、幅広い薬事コンサルティングを提供しています。「2026年薬機法改正に伴い、どの社内手順書を変更すべきかわからない」「外国症例の不具合報告の判断基準を整理したい」「条件付承認やRWD活用について相談したい」といったお悩みがございましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。 医療機器メーカーの事業内容や製品特性に応じた薬事対応をサポートいたします。