概要
2025年10月10日、厚生労働省は、整形外科・歯科用インプラント手術等に使用する医療機器の製造販売届出を簡略化できることを示したQ&Aを公表しました。対象となる一般医療機器について、製造販売届書の「形状、構造及び原理」「原材料」「使用方法」の3項目で、記載を簡略化できる範囲が明確になりました。
対象は、未滅菌・非能動・測定機能なし(目盛りを除く)の条件を満たす器械類です。外観図や写真のみでの形状記載、原材料の列記、使用方法の概要記載などが認められ、薬事申請業務の負担軽減が期待されます。
ただし、製造販売届書を簡略化しても、QMS省令に基づく製品標準書の整備や、再滅菌条件の適切な情報提供は引き続き必要です。 本記事では、厚生労働省が示した4つのQ&Aをもとに、医療機器メーカーや薬事担当者が押さえておくべき簡略化の対象条件、具体的な記載方法、実務上の注意点を分かりやすく解説します。

1. 背景と目的
1.1 届書の記載ルールは平成26年の通知が基本
医療機器製造販売届書の各欄の書き方は、「医療機器の製造販売届出に際し留意すべき事項について」(平成26年11月21日付け薬食機参発1121第41号)で定められています。本事務連絡では、この通知を「届出通知」と呼んでいます。
届出通知は、届出の対象となる一般医療機器全般に共通のルールです。形状欄には外観形状・構造・原理・構成部品・電気的定格・各部の機能を書くよう求めています。使用方法欄は「順を追って」書くことが原則です。
1.2 構造が単純な器械類に限った簡略化
本事務連絡は冒頭で、対象の器械類は「構造や使用目的が単純である」と述べています。そのうえで、届出通知の4つの記載ルールについて、簡略化してよい範囲を問答形式で示しました。
2. 主要要件と事例
2.1 形状、構造及び原理欄は外観図・写真のみでよい(Q1)
届出通知では、形状欄に外観形状・構造・原理・各部の機能等を分かりやすく書くよう求めています。
Q&Aでは、対象の器械類は外観図や写真のみを記載すればよいとしました。届出通知では備考欄にも外観の写真を添付することになっています。形状欄の内容と重複する場合、備考欄の写真は省略できます。
2.2 原材料欄は構成品の原材料を列記すればよい(Q2)
届出通知では、原材料を形状欄の記載と対応関係が明確になるように書き、規格も明らかにするよう求めています。
Q&Aでは、この形状欄との対応関係を省略してよいとしました。品目に含まれる構成品の原材料が列記されていれば足ります。
加えて、非接液材のうち使用目的・性能・安全性に直接影響しないものは、記載自体が不要です。届出通知でも、血液・体液・粘膜等に接触せず、性能に大きく影響しない部材は「簡潔な記載で差し支えない」とされていました。今回はそこから一歩進み、条件を満たす非接液材を書かなくてよいことになります。
2.3 使用方法欄は概要の記載でよい(Q3)
届出通知では、使用方法を「順を追って、必要に応じ図解する等により」書くよう求めています。
Q&Aでは、対象の器械類は順を追った記載をせず、使用方法の概要を書けばよいとしました。回答は「貴見のとおり」の一言です。
2.4 再滅菌して繰り返し使う場合は滅菌方法のみ(Q4)
届出通知では、再滅菌して繰り返し使う医療機器は「その旨と再滅菌の方法」を書くこととされています。Q4は、ここに滅菌条件まで書く必要があるかを問うものです。
Q&Aでは、繰り返し使用する旨と滅菌方法のみを書けばよいとしました。滅菌条件は届書に書かなくて構いません。
ただし、滅菌条件の情報提供が不要になったわけではありません。従来どおり、添付文書等で医療機関に適切に伝える必要があります。
3. 実務対応と留意点
3.1 自社品目が対象かを4つの条件で確認する
最初に、届け出る品目が概要の4条件をすべて満たすかを確認します。滅菌済みで出荷する品目は対象外です。電動の器械や、目盛り以外の測定機能を持つ器械も外れます。
Q&Aが対象とするのは、整形外科と歯科用インプラントの手術等に使う器械類です。他の診療領域の器械類まで広げて読むことはできません。
3.2 製品標準書の記載を厚くしておく
本事務連絡は前文で、届書を簡略化した場合の留意点を示しています。QMS省令(平成16年厚生労働省令第169号)を引き続き守れるよう、第7条の2の製品標準書に製品の仕様等を十分に書いておくことです。
形状欄を写真だけにしたなら、寸法や構造の詳細は製品標準書側で管理します。原材料欄で省いた非接液材も、製品標準書には残しておきます。届書の簡略化は、記載の置き場所が製品標準書に移ることだと捉えると分かりやすくなります。
3.3 添付文書の滅菌条件を確認する
Q4に沿って届書から滅菌条件を外す場合、添付文書等に滅菌条件が載っているかを確認しておきます。届書と添付文書のどちらにも滅菌条件がない状態は避ける必要があります。
3.4 既存の届出品目について
本事務連絡は、すでに届け出た品目の記載を改める必要があるかには触れていません。簡略化は「差し支えない」という扱いで、義務として課されたものではありません。
まとめ
2025年10月10日に公表された厚生労働省のQ&Aにより、整形外科・歯科用インプラント手術等に使用する一般医療機器の製造販売届出について、記載の簡略化が認められる範囲が明確になりました。 未滅菌・非能動・測定機能なし(目盛りを除く)の条件を満たす器械類では、「形状、構造及び原理」「原材料」「使用方法」の記載を簡略化できます。これにより、医療機器メーカーの薬事担当者にとって、届出書類の作成負担軽減が期待されます。
一方で、製造販売届書の簡略化は、QMS省令に基づく品質管理や製品標準書の整備を省略できることを意味するものではありません。 対象品目への該当性の判断、原材料や製品仕様の管理、再滅菌条件の情報提供など、引き続き適切な薬事対応が必要です。特に、整形外科用器械や歯科用インプラント手術器械の製造販売届出では、届書の記載内容と製品標準書・添付文書等との整合性を確保することが重要です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の製造販売届出、薬事申請、医療機器の該当性・クラス分類の確認、QMS省令への対応、製品標準書の整備など、医療機器メーカーの薬事業務を幅広く支援しています。 「自社製品が今回の簡略化の対象になるか分からない」「製造販売届書の記載方法を確認したい」「製品標準書やQMS対応を見直したい」といったお悩みがございましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。 医療機器の薬事規制に関する専門的な知見を活かし、貴社の製品や開発状況に応じた実務対応をサポートいたします。