概要

PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の拡大治験開始前相談の手数料が、令和8年度も規定額の1割に軽減されます。対象は「医薬品拡大治験開始前相談」「医療機器拡大治験開始前相談」「再生医療等製品拡大治験開始前相談」の3種類。軽減が適用されるのは、令和8年4月1日から令和9年3月31日までに実施される相談です。

ただし補助には予算枠があります。適正な申込みを受け付けた順に交付決定され、予算額に達した以降の相談は規定額を全額納付することになります。拡大治験を検討している企業にとって、年度の早い時期に申し込むことが実質的な条件になります。

通知は薬機発第8号(令和8年4月1日)。PMDA理事長から日本医療機器産業連合会や日本製薬団体連合会など、業界18団体宛てに発出されました。

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1. 背景と目的

1.1 拡大治験と開始前相談

人道的見地から実施される治験、いわゆる拡大治験は、未承認の医薬品・医療機器・再生医療等製品へのアクセス手段のひとつです。既に実施されている主たる治験の参加基準を満たさない患者に対し、代替治療のない重篤な疾患を対象として実施されます。

拡大治験を始める前には、PMDAの「拡大治験開始前相談」で実施計画の妥当性を確認します。この相談が本事業による手数料軽減の対象となります。

1.2 平成28年度から継続してきた軽減措置

手数料の軽減は今年度に始まった措置ではありません。起点は平成28年4月1日付け薬機発第0401046号「平成28年度「人道的見地からの治験支援事業」の実施について」です。同年7月21日付け薬機発第0721004号と併せ、平成28年度から軽減が始まりました。今回の通知は、令和8年度も同じ枠組みを続けることを示すものです。

1.3 財源は国庫補助

軽減分を賄っているのは国庫補助です。企業が納めない9割分は、補助金として国が負担する仕組みになっています。補助金の予算額という上限が存在するのはこのためです。この性格が、後述する受付順の取扱いと取下げ時の還付ルールにつながっています。

1.4 令和8年度予算の成立が前提

本通知には重要な留保が付いています。相談手数料の補助は令和8年度予算の国会成立が前提です。予算案の審議によっては、今後内容等が変更される可能性もあります。年度当初に相談を計画する場合、この変更リスクを織り込んでおく必要があります。

2. 主要要件

2.1 対象となる3つの相談

軽減対象は次の3区分です。

  • 医薬品拡大治験開始前相談
  • 医療機器拡大治験開始前相談
  • 再生医療等製品拡大治験開始前相談

医療機器メーカーが直接関係するのは2番目。再生医療等製品を扱う企業には3番目が該当します。医薬品・医療機器・再生医療等製品のいずれも、同一の軽減率と同一の予算枠のもとで運用されます。

2.2 納付額は規定額の1割

対象期間に実施される上記の相談について、手数料は規定額の1割を納付します。規定額とは、PMDA審査等業務関係業務方法書実施細則(平成16年細則第4号)の別表が定める額です。実際の負担は通常の相談手数料の10分の1に収まります。

軽減後の額は細則別表の改正に連動します。相談を予定する際は、申込時点の別表で規定額を確認してください。

2.3 基準は「実施される」相談

通知が定める適用範囲は、令和8年4月1日から令和9年3月31日までに「実施される」相談です。申込日ではなく相談の実施日が基準となる点に注意が必要です。年度末近くに申し込む場合、相談日が翌年度にずれ込めば当年度の枠から外れます。相談日程の確定まで含めてスケジュールを組む必要があります。

2.4 予算額に達したら規定額に戻る

軽減は無条件ではありません。国庫補助の範囲は、適正な申込みを受け付けた順に交付決定される補助金の予算額に達するまでとされています。予算枠を使い切った後の相談は、規定額をそのまま納付します。

受付順という基準のため、同じ年度内でも申込時期によって負担額が10倍変わります。相談を予定しているなら、社内の意思決定を前倒しして早期に申し込む価値があるでしょう。

3. 実務対応と注意点

3.1 取り下げても納付額は戻らない

本事業で最も注意すべきは還付の取扱いです。規定額の1割を納付して相談を申し込んだ後、申込者の都合で取り下げる場合、納付額は全額還付されません。半額還付の対象外という扱いになります。

3.2 通常の半額還付ルールは適用外

PMDAの対面助言には、取下げ時に手数料の半額が還付される取扱いがあります。平成24年3月2日付け薬機発第0302070号(対面助言、証明確認調査等の実施要綱等)の別添1に定められたルールです。本事業の対象となった相談には、この半額還付が適用されません。

軽減後の1割という金額そのものは大きくありません。それでも、補助金の交付決定枠を消費する点は変わらない。「とりあえず申し込んで後で判断する」という進め方は避けるべきです。

3.3 やむを得ない場合は全額還付

例外もあります。機構がやむを得ないものと認めた場合には、納付額の全額が還付されます。取下げが避けられない事情が生じたときは、自己都合として処理する前にPMDAへ相談してください。

3.4 社内で押さえるべき3点

拡大治験を計画している企業が事前に固めておくべき事項は次のとおりです。

  1. 相談の実施希望時期と、それに間に合う申込時期
  2. 取下げリスクを踏まえた実施方針の確定
  3. 予算枠切れに備えた、規定額での相談費用の確保

3点目は見落としやすいポイントです。予算執行状況によっては軽減を受けられないため、規定額を前提とした費用も社内で確保しておくと安全でしょう。

3.5 周知先は業界18団体

通知の宛先には、医療機器関係の主要団体が含まれます。

  • 一般社団法人日本医療機器産業連合会
  • 一般社団法人米国医療機器・IVD工業会
  • 欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会
  • 一般社団法人日本医療機器テクノロジー協会
  • 一般社団法人日本衛生材料工業連合会

医薬品側では日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会在日執行委員会、欧州製薬団体連合会などが宛先です。再生医療側は再生医療イノベーションフォーラムが該当します。日本医師会や日本QA研究会も含まれており、所属団体からの周知文書で本通知に触れる機会もあるでしょう。

まとめ

令和8年度の「人道的見地からの治験支援事業」では、医薬品・医療機器・再生医療等製品の拡大治験開始前相談について、PMDA相談手数料が規定額の1割に軽減されます。ただし、補助は予算の範囲内で受付順に交付決定されるため、拡大治験を検討している企業は、相談時期や社内方針を早めに整理しておくことが重要です。

また、拡大治験の実施にあたっては、手数料だけでなく、対象患者、実施計画、主たる治験との関係、PMDAへの相談資料の準備など、事前に検討すべき事項が多岐にわたります。特に、申込者の都合で相談を取り下げた場合には軽減後の手数料が還付されないため、PMDAへの申込み前に実施方針と相談内容を十分に整理しておく必要があります。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器を中心に、PMDA相談や承認申請などの薬事対応を支援しています。「拡大治験開始前相談を検討しているが、何から準備すればよいかわからない」「PMDA相談資料の作成・内容に不安がある」「相談から承認申請までの薬事戦略を整理したい」といったお悩みがございましたら、ぜひ弊社までお問い合わせください。拡大治験やPMDA相談を含め、開発段階に応じた薬事対応をサポートいたします。

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