概要

令和8年5月1日から、「感染症定期報告」は「感染症評価報告」に名前が変わりました。名称だけでなく、新感染症と一類感染症に関する情報を知った場合に30日以内の報告が新たに求められるようになりました。

令和7年12月26日、厚生労働省医薬局長から都道府県知事あてに、新制度の取扱いを定める通知が発出されました。改正薬機法の施行日である令和8年5月1日から適用され、同日付けで平成29年の「感染症定期報告制度について」は廃止されました。

医療機器メーカーで影響を受けるのは、生物由来製品に指定された医療機器の製造販売業者です。新制度はすでに施行されています。これまで6か月ごとの定期報告を出してきた会社で社内手順の切り替えが済んでいなければ、早急に新制度に合わせる必要があります。生物由来の原材料を使っていても生物由来製品に指定されていない医療機器は、この報告の対象ではありません。医薬品や再生医療等製品だけを対象とした話ではない点に注意が必要です。

同日付けで調査内容と記載方法の通知が、令和8年2月27日には留意点の通知とQ&Aが発出されています。本記事では制度の全体像を扱います。

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1. 背景と目的

1.1 もともとの報告義務

薬機法第68条の14と第68条の24は、再生医療等製品と生物由来製品の製造販売業者等に報告義務を課しています。製品や原料・材料による感染症について、最新の論文などから得た知見をもとに製品を評価し、その成果を厚生労働大臣に定期的に報告する義務です。

報告事項は薬機法施行規則第228条の25と第241条で定められています。報告方法は平成29年4月28日付け薬生発0428第1号の局長通知(感染症定期報告局長通知)が示してきました。

1.2 改正法で何が変わったか

令和7年法律第37号の改正法と、これに伴う整備省令(令和7年厚生労働省令第117号)が令和8年5月1日に施行されました。これにより、定期的に求めていた報告は「感染症評価報告」に改められました。

本通知はこの見直しに合わせて、報告が必要な場合、報告事項、期限、起算日、様式、一括報告の扱いを定め直したものです。旧通知の枠組みの多くを引き継ぎながら、重大な感染症の情報を早く届ける仕組みが加わりました。

2. 主要要件と事例

2.1 報告は2系統に分かれる

新制度の報告は、根拠となる条文の項で2系統に分かれます。

  • 30日以内の報告(新薬機則第228条の25第1項又は第241条第1項)。新感染症・一類感染症に関する研究報告や外国措置を知った場合
  • 調査単位期間ごとの報告(同第2項)。従来の定期報告に当たる部分

旧通知は定期報告だけを定めていました。30日報告の系統は今回新たに加わったものです。

2.2 30日以内に報告するもの

対象は、研究報告又は外国措置のうち、次のいずれかに関するものです。

  • 感染症法第6条第9項に規定する新感染症
  • 感染症法第6条第2項に規定する一類感染症

研究報告とは、製品の原材料に係る生物と同じ生物、又は製品について報告された生物から、人に感染すると認められる疾病の研究報告を指します。外国措置とは、外国で使われている同一性のある生物由来成分を含む製品について、危害の発生・拡大の防止などのために取られた措置です。

例えば動物由来の成分を使う製品なら、その動物から人に感染する疾病の研究報告が対象になります。それが一類感染症や新感染症に関するものであれば、定期報告を待たずに30日以内の報告が必要です。

報告事項は5項目です。製品の名称、承認番号と承認年月日、報告事項を入手した年月日、研究報告又は外国措置の内容、報告者の見解を記載します。

2.3 調査単位期間ごとに報告するもの

こちらは従来の定期報告とほぼ同じ内容です。次の情報を知った場合が該当します。

  • 人に感染すると認められる疾病の研究報告(30日報告の対象を除く)
  • 製品等によるものと疑われる感染症の発生
  • 危害の防止や適正使用のために行われた措置(30日報告の対象を除く)

報告事項は9項目です。名称、承認番号・承認年月日、調査期間、出荷数量、研究報告を記載します。加えて、感染症の種類別発生状況と発生症例一覧、措置、報告者の見解、適正使用に必要な情報を記載します。

旧通知の報告事項にあった「注意事項等情報」は、新通知の報告事項には挙がっていません。

3. 実務対応

3.1 報告期限

30日報告は、報告事項を知ってから30日以内に行います。

調査単位期間ごとの報告は、報告起算日から6か月以内ごとに、期間満了後1か月以内に行います。厚生労働大臣が指定する製品は、指定された期間が調査単位期間になります。研究報告の全部又は一部が外国語で翻訳を要する場合は、満了後2か月以内でも差し支えありません。この期限の考え方は旧制度から変わっていません。

3.2 報告起算日の決め方

起算日のルールも旧通知を引き継いでいます。

  • 平成15年7月30日以降に承認された製品。国際誕生日(日本又は外国で初めて承認された日)又はその月の末日から、調査単位期間の整数倍を経過した日のうち、承認日の直前の日又は承認日
  • 平成15年7月29日以前に承認された製品。国際誕生日、その月の末日又は承認日から、調査単位期間の整数倍を経過した日のうち、平成15年7月30日の直前の日
  • 国際誕生日が不明な場合。承認日を起算日とする

起算日から承認日の前日までは、調査の対象期間になりません。

3.3 様式と提出物

報告には本通知の別紙様式と別添1〜7を使います。記載した内容は、CD-R(ROM)等の電子媒体に記録して提出します。旧通知では別紙様式の紙媒体提出も求めていましたが、新通知にはその記載がありません。

3.4 一括報告の扱い

同一の承認取得者の製品は、生物由来成分ごとにまとめて一括報告できます。新通知では、原産国が同一の原材料ごとにまとめる方法も加わりました。

一括した場合の期限は2系統で異なります。30日報告は、まとめる製品のうち最も早い入手年月日から30日以内です。調査単位期間ごとの報告は、最も早く来る次回満了日までに一括調査し、以後は最も短い調査単位期間ごとに調査します。

1つの製品に複数の生物由来成分を含む場合は、成分ごとに別紙様式を作ります。この場合も成分ごとの一括報告は可能です。

3.5 施行までに見直すこと

社内の安全管理手順で次の点を確認しておくと、施行日の切り替えが円滑です。

  • 文献・外国措置の収集で、新感染症・一類感染症に該当する情報を見分け、30日以内に報告につなげる流れがあるか
  • 手順書や様式に残る「感染症定期報告」の名称と旧通知の引用
  • 原産国単位の一括報告を使うかどうか
  • 紙媒体提出を前提にした社内フロー

まとめ

2026年(令和8年)5月1日の薬機法改正により、従来の「感染症定期報告」は「感染症評価報告」へと変更されました。特に重要なのは、新感染症・一類感染症に関する研究報告や外国措置について、情報を入手してから30日以内の報告義務が新設されたことです。生物由来製品に指定された医療機器の製造販売業者は、従来の定期報告に加え、新たな報告対象の判断、報告期限の管理、情報収集体制の整備など、改正制度に対応した安全管理体制の見直しが求められます。

今回の制度改正に適切に対応するためには、感染症評価報告の対象製品の確認、30日報告の該当性判断、報告書の作成、社内手順書の改訂、GVPに基づく安全管理業務の見直しが重要です。特に、複数の生物由来製品を取り扱う医療機器メーカーでは、報告期限の管理や一括報告の適用可否についても確認する必要があります。報告漏れや期限超過を防ぐためにも、最新の薬機法や厚生労働省通知に基づいた実務対応が欠かせません。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の薬事規制対応、GVP・安全管理体制の整備、薬機法改正に伴う社内手順書の見直し、各種報告制度への対応について、専門的なコンサルティングを提供しています。「感染症評価報告の対象となるか判断できない」「30日報告の対応方法がわからない」「改正薬機法に合わせて安全管理手順を見直したい」などのお悩みがございましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。 医療機器メーカーの状況に応じた薬事対応を支援いたします。

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