概要
経血吸収ショーツの評価の観点と広告表現の考え方が、2026年8月14日付で改定されました。厚生労働省医薬局医薬品審査管理課および監視指導・麻薬対策課は、同日付の事務連絡で都道府県等に情報提供しています。
対象になるのは2つの立場の事業者です。医薬部外品として承認申請を目指す製造販売業者は、申請資料に何を揃えるかが問題になります。承認を取らず雑品の吸水ショーツを売る事業者は、広告でどこまで言えるかの線引きが直接効いてきます。
改定資料を作成したのは行政ではありません。一般社団法人日本衛生材料工業連合会と一般社団法人メディカル・フェムテック・コンソーシアムの2団体が改定し、厚生労働省へ報告したものが情報提供されました。届出や申請の期限は設定されていないため、社内基準と広告物の見直しが当面の実務対応になります。

1. 背景と目的
1.1 フェムテックWGの議論を踏まえた業界団体資料
両資料はいずれも「フェムテック関連製品の薬機法上の対応等に関するワーキンググループ」での議論を土台にしています。初版は2021年10月。今回が初版以来の改定にあたります。
事務連絡本体は改定箇所の一覧を示していません。別添として改定後の全文が付されているだけです。手元に初版を保存しているなら、差分を追うのではなく改定版に丸ごと差し替えるのが確実といえます。
1.2 対象となる製品形態
評価の観点が想定するのは、経血の吸収を目的として繰り返し使用する製品です。次の3形態が基本的な対象になります。
- クロッチ部(マチ部)の表面材と吸収体がショーツと一体化したショーツ形態
- クロッチ部の吸収体が取り外し可能なもの
- クロッチ部以外にも吸収体が配置されたショーツ形状のもの
吸収体が取り外し可能なタイプでは、医薬部外品に該当するのは吸収体部分だけです。吸収体と防漏材が一体になっていても差し支えありません。ここでいう吸収体とは、構成成分名の「吸収材」、または「表面材」と「吸収材」が一体となったものを指します。
いわゆる布ナプキンも繰り返し使用する経血吸収製品です。医薬部外品としての承認申請を希望する場合、この評価の観点を活用できます。
1.3 統一基準ではない点に注意
資料が示すのは、評価の対象となりうる項目の一覧です。具体的な基準値や試験方法までは決まっていません。製品ごとに特徴が異なるため、統一的な基準の策定は難しいと明記されています。
示された観点と別の考え方で申請資料を作ることも禁じられていません。ただしその場合、内容が正当であることを審査担当者へ十分に説明する責任が事業者側に生じます。
2. 評価の観点で押さえるべき要件
2.1 構成成分は接触部位で要求が変わる
承認申請では、表面材・吸収材・防漏材といった製品構成成分ごとに、材料成分名と規格、分量を示します。皮膚および粘膜への接触の有無によって、品質と安全性への要求水準が変わる点が要です。
規格や成分名が製造業者から開示されていれば、使い捨ての生理処理用品と同様に「別紙規格」へ組成を含めて記載します。公定書に未収載の材料成分も「別紙規格」とし、同一内容で承認された前例を併せて提示します。新規の材料成分を含む場合は、規格と分量に加えて品質・安全性のデータが審査の過程で求められます。
材料情報が製造業者から開示されないケースもあります。その場合は「別紙規格」としたうえで、一般的なショーツ類に使用された実績を示し、製造業者名・製品名・製造番号等で規定する方法が認められます。
実績の目安も具体的に示されました。日本国内で販売期間1年以上、かつ販売枚数が「のべ1万枚以上」または「3年間で3千枚以上」。重篤な健康被害が発生していないことに加え、期間内に対象材料の変更がない旨の宣言書、苦情情報と販売元の対応も示します。肌着の実績で説明する場合も条件は同じです。ただし一般的な肌着は粘膜に接しないため、クロッチ部の表面材には原則使用できません。
2.2 抗菌作用は「どこに使うか」で可否が割れる
抗菌の扱いは実務で迷いやすいところです。要点は3つあります。
- 皮膚・粘膜に接触する表面材への抗菌作用の付与は認められない
- 吸収材への付与はできるが、作用は製品内部にとどめる
- 抗菌成分名や関連データを示さずに使う場合、広告等で抗菌作用を標榜できない
抗菌成分を配合し標榜まで行うなら、既承認の情報を示すか、新規材料として抗菌成分・分量・品質・安全性のデータを提出します。承認されれば、菌の繁殖を軽減させるといった作用を広告で標榜できます。作用効果が身体に影響しないことを事前に確認しておく必要があります。
2.3 規格及び試験方法への上乗せ
現行の生理処理用品製造販売承認基準の項目は、性状・色素・酸及びアルカリ・けい光・吸水量・滲出・ホルムアルデヒド・粘着力です。経血吸収ショーツでは、これらの必要性が項目ごとに見直されました。
吸水量は有効性確認のために必要で、想定する使用時間帯や着用時間に応じて事業者が設定します。吸収体部分のみでの確認も可能です。滲出は防漏効果を標榜する場合に必要となり、謳わないなら不要。粘着力は基本的に不要ですが、製品構造によっては求められる場合があります。白色以外の素材を使うときは、衛生面・安全面を担保していることを別途示します。
2.4 繰り返し使用ゆえに追加される評価
洗って繰り返し使う製品特性から、開発時の評価項目が上乗せされました。
- 洗濯後の吸水力(洗濯方法と品質保証すべき洗濯回数を事業者が設定し、根拠と妥当性を申請資料に示す。設定した洗濯回数は承認書に記載する)
- 洗濯後の汚れ落ち(血液や菌を接種した製品を市販の洗剤等で十分に洗浄できるか)
- 製品寸法試験(洗濯後に縮んでこすれ、皮膚を傷めないかの確認)
- アゾ染料試験(原則必要。JIS L1940。繊維メーカーの不使用証明書で代替可)
- 皮膚・粘膜への影響評価(長時間の血液接触、常在菌の影響、乾燥不足による衛生面)
洗濯回数が承認書に載るという点は、製品仕様と表示を縛るため設計段階から意識すべきところです。
3. 広告表現の考え方
3.1 判断は広告全体を総合的に見る
大前提として、薬事該当性を認識させるかどうかは個々の言葉だけで決まりません。広告全体を見た総合判断になります。単語ごとの可否表を作って安心するのは危険です。
承認を受けていない製品に、経血吸収性能があると一般に認識されうる表現を用いれば、薬機法に抵触しうる。雑品の吸水ショーツを製造・輸入・販売する事業者に、直接効いてくる指摘です。承認を受けた製品でも「医薬品等適正広告基準」(平成29年9月29日付薬生発0929第4号)への適合は当然求められます。
3.2 承認品で留意する表現
医薬部外品の承認を受けた製品でも、次の表現には注意が要ります。
- 「ナプキンのいらない」は他社製品の誹謗広告の制限に抵触するおそれがあり、自社比較でも説明不足にしない
- 「あらゆる漏れに対応」の「あらゆる」は100%を意味するため適正広告基準に抵触しうる
- 「ナプキン○枚分の吸収量」は比較対象の吸収量が明確か、不正確でないかを確認する
- 「多い日に、軽い日に」「べたっと感ゼロ」等は、承認された効能効果の範囲を超えない
- 菌の繁殖の軽減やそれによる消臭・防臭の標榜も、効能効果の範囲内にとどめる
3.3 雑品で「言えること」と「言えないこと」
雑品の吸水ショーツについては、表現例ごとの考え方が示されました。経血吸収用とは認識されないとされたのは、「サニタリーショーツ」「吸水サニタリーショーツ」、「吸水ショーツは生理用品」、「ゆううつな期間も快適に」、「生理用品のバックアップに」「ナプキンとの併用ができます」、「さまざまな漏れに対応」、「多い日に」「少ない日に」、「○○mlの液体を吸収」、「クロッチ部に吸水生地を内蔵したサニタリーショーツ」といった表現です。
一方、適切でないとされたものもあります。
- 「経血や尿、水分等を吸収」のように経血を吸収する旨を表示するもの
- 「ナプキンおよそ○枚分の(水分を)吸収」など、医療機器である月経処理用タンポンや医薬部外品である生理処理用ナプキンとの比較にあたるもの
- タンポンやナプキンを想起させるイラストの付近に吸水量を表示するもの
- 赤いものを吸収させる映像・画像・イラスト
- 「紙ナプキンを使用しなくても漏れません」
「多い日はナプキン兼用で使用ください」は判断が分かれました。表現単独ではなく、広告表現全体を見て適否が判断されます。適否の考え方は社会の受け止め方の変化に伴って変わりうるとも明記されており、今回セーフとされた表現も恒久的な保証ではありません。
3.4 口コミの放置は不適切
自社サイトや販売サイトの口コミに、広告表現として不適切な内容が含まれる場合があります。事業者は自ら削除するか、サイト運営者に削除を依頼できます。掲載を認識しながら放置することは適切でないと示されました。口コミの監視体制を持たない事業者にとって、ここが実務上の穴になります。
4. 実務対応
反復使用する用法の生理処理用品は、2026年8月14日時点で承認例がありません。そのため申請区分は(2)-5「新用法医薬部外品」に該当します。承認前例のない成分を使う場合は(3)「新添加物含有医薬部外品」。添付資料は平成26年11月21日付薬食発1121第7号「医薬部外品等の承認申請について」で確認します。
試験計画の相談窓口も用意されています。ヒト試験は「医薬部外品ヒト試験計画確認相談」、新添加物含有に該当する場合は「医薬部外品新添加物開発相談」をPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)へ申し込めます。
表示面では、使い捨てナプキンより汚染等のリスクが高いと判断されるなら、トキシックショック症候群(TSS)や感染症の注意喚起が求められます。推奨する洗浄方法があれば、用法用量または使用上の注意に記載します。海外での承認状況、国内外の副作用関連報告の有無も説明できるよう準備しておきます。
まとめ
2026年8月14日の改定により、経血吸収ショーツについて、医薬部外品として承認申請する際の評価の観点と、承認品・雑品それぞれの広告表現の考え方が改めて整理されました。特に、洗濯後の吸水力・汚れ落ち・製品寸法・皮膚や粘膜への影響など、繰り返し使用する製品特有の評価が重要です。また、雑品として販売する吸水ショーツでは、経血吸収を標榜・想起させる表現を避ける必要があり、WebサイトやECサイト、SNS、口コミを含めた広告全体の確認が求められます。
経血吸収ショーツを医薬部外品として製品化する場合、製品設計の段階から承認申請を見据え、必要な試験項目、材料規格、安全性評価、洗濯回数の設定根拠などを整理しておくことが重要です。承認前例のない反復使用型の製品では、申請資料を作成してから不足に気付くのではなく、開発初期に薬事戦略を整理し、必要に応じてPMDA相談を活用することで、試験や申請資料の手戻りを抑えやすくなります。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、経血吸収ショーツをはじめとするフェムテック製品について、薬機法上の該当性検討、医薬部外品の承認申請、試験計画・申請資料の作成、PMDA相談、広告表現の確認まで幅広く支援しています。「雑品として販売できるのか判断したい」「医薬部外品として承認を取得したい」「現在の広告表現に薬機法上の問題がないか確認したい」といったご相談にも対応可能です。経血吸収ショーツの承認申請や薬機法・広告規制への対応でお困りの際は、ぜひ弊社までお問い合わせください。