概要

X線の照射は医師・歯科医師・診療放射線技師しか行えません。看護師や事務員、ましてや医療機器メーカーの社員が照射ボタンを押すことは、診療放射線技師法違反となります。令和7年11月11日、厚生労働省医政局の4課連名で事務連絡が発出され、無資格者によるエックス線照射の禁止と「立会い基準」の遵守が改めて周知されました。

対象はすべての病院・診療所と、X線装置を販売・設置するメーカー・販売業者です。報道された無資格照射事案を踏まえ、医療機関への監督強化と、事業者の立会い行為への注意喚起が同時に行われています。X線装置の薬事担当者は、添付文書・取扱説明書・販促資料・営業現場での説明トークまでを点検し、自社担当者が照射に関与する余地を排除しなくてはなりません。

医療機器の申請・QMS構築に無料相談|初回30分の無料相談を承ります

1. 背景と目的

1.1 事務連絡発出の経緯

令和7年中に、無資格者がX線照射に関わった事案が報道されました。これを受け、厚労省は医政局総務課・地域医療計画課・医事課・医薬産業振興/医療情報企画課の4課連名で都道府県・保健所設置市・特別区に通知を出しました。新規ルールの導入ではなく、既存法令と平成18年通知(医政経発1110001号「医療機関等における医療機器の立会いに関する基準」)の再徹底です。

1.2 何を周知しているのか

事務連絡は2本柱で構成されています。

  • 別紙: 無資格者によるエックス線照射に関する医療法・診療放射線技師法等の取扱い
  • 別添: 医療機器業公正取引協議会の「立会い基準」(平成20年4月実施、平成25年12月変更)

医療機関の管理者責任と、事業者の立会い時の遵守事項が一体で示されています。事業者単独の問題ではなく、医療機関と事業者の双方が同じ基準で動くことが期待されています。

1.3 X線装置の薬事担当が読むべき理由

医療法・診療放射線技師法は医療機関を直接の名宛人としますが、メーカー・販売業者の営業担当やアプリケーションスペシャリストが医療現場で機器の説明や調整を行う場面は日常的にあります。説明の延長で照射に関与すれば、診療放射線技師法第24条違反の共犯となる可能性があり、平成18年通知の立会い基準を逸脱した時点で公正競争規約上の問題も発生します。

2. 主要要件と事例

2.1 照射できる人は3者のみ

診療放射線技師法第24条は、人体に対する放射線照射を業として行えるのは医師、歯科医師、診療放射線技師のみと定めています。違反した場合の罰則は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、もしくは併科です(同法第31条第1号)。

診療放射線技師であっても、医師または歯科医師の具体的な指示がなければ照射はできません(同法第26条第1項)。違反は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(同法第34条)。照射後は照射録を作成し、指示医師の署名を得る必要があります(同法第28条第1項)。

看護師等は医師法・歯科医師法に基づく場合を除き、診療補助としても照射は行えません(保健師助産師看護師法第31条・第32条)。事務員・医療機器メーカー社員などはそもそも対象外で、関与する余地はありません。

2.2 「指示した側」も共犯となる

別紙第1の3は重要な警告を含みます。無資格者に対し照射を指示する行為、または看護師等でない者に診療補助を指示する行為は、指示した医師・管理者側が共犯となるおそれがあるとされています。

X線装置メーカーの担当者が「ちょっとボタン押してもらえますか」と無資格スタッフに依頼する、あるいは医療機関側からそう求められて応じる、いずれも禁止行為です。立会い中の担当者が照射操作に関与した場合、自社担当者本人だけでなく、依頼した医療機関側にも刑事責任が及びます。

2.3 病院・診療所管理者の責務

医療法第15条第1項により、管理者は従業者を監督する義務を負います。無資格者による照射や、無資格者への照射指示を防ぐための監督体制の構築が明確に求められます。都道府県知事は管理者の責務懈怠が疑われる場合、報告徴収・立入検査を実施でき(医療法第25条第2項)、違反確認時は是正命令も発令できます(同法第24条の2第1項)。特定機能病院については地方厚生局長が同様の権限を持ちます。

3. 実務対応と罰則

3.1 添付文書・取扱説明書の点検

X線装置の添付文書および取扱説明書を点検し、操作者の資格要件を明記しているか確認します。「使用者は医師、歯科医師または診療放射線技師に限る」旨の警告・注意記載が必須です。曖昧に「医療従事者」とだけ書かれている場合、看護師等が含まれると誤解される余地があるため、表現の精緻化が必要となります。

操作手順書の中に「照射ボタンを押す」「曝射する」といった工程を含む箇所では、操作者の資格を再掲することが望ましい対応です。バージョンアップ時の改訂候補としても優先順位を上げるべきです。

3.2 販促資料・営業現場での注意点

カタログ・パンフレット・デモ動画・展示会ブースの説明で、操作の容易さを訴求する表現には特に注意します。「ワンタッチで撮影」「だれでも簡単操作」のような訴求が、無資格者でも扱える機器との誤認を招けば、薬機法第66条(虚偽・誇大広告の禁止)の問題にも発展しかねません。

施設での製品紹介時、自社担当者が照射ボタンを押したり患者へのポジショニングを行ったりすることは厳禁です。立会い基準が許容するのは、医師・歯科医師・診療放射線技師による操作を補足的に説明することに限られます。操作の代行・代執行は範囲外です。

3.3 立会い基準の数値要件

平成18年通知(別添)で具体的に数値が定められています。

  • 適正使用の確保のための立会い: 1手技・1診療科あたり4回を限度。期間は事由発生日から4ヶ月以内(新規納入、バージョンアップ、担当者交代の場合)
  • 安全使用確認のための立会い: 新規納入後の月1回・最長12ヶ月、故障修理後・保守点検後は各1回
  • 販売目的の立会い・費用肩代わりの立会い: 原則禁止

立会い実施時は「立会い実施確認書」(公正取引協議会様式4)を医療機関から入手し、5年間保存する義務があります。様式には対象機器名・手技名・立会い目的・回数・期間・患者へのインフォームドコンセント確認欄が設けられています。営業部門が単独で運用するのではなく、薬事・コンプライアンス部門が記録の網羅性を監査する仕組みが必要です。

3.4 罰則と事業上のリスク

法令違反時の刑事罰は前述のとおりですが、事業者が最も警戒すべきは製造販売業・販売業の許可への影響です。担当者の関与が報道や行政指摘で表面化すれば、薬機法上の品質確保・安全確保体制の不備として処分対象になり得ます。立会い基準違反は公正取引協議会の措置対象でもあり、業界内での信頼喪失は受注機会の直接的な毀損につながります。

院内研修・代理店教育の場で「やってはいけないこと」を具体例つきで示し、定期的に確認テストを実施することが現実的な対策となります。

まとめ

今回の事務連絡により、X線照射を行えるのは医師・歯科医師・診療放射線技師のみであることが改めて明確化されました。 医療機器メーカーや販売業者の担当者が、立会い中であっても照射操作や患者対応に関与することは認められておらず、違反した場合は 診療放射線技師法や医療法上の問題だけでなく、企業としてのコンプライアンスリスクにも直結します。

特にX線装置を取り扱う製造販売業者や販売業者は、添付文書・取扱説明書・販促資料・教育資料・標準業務手順書(SOP)を見直し、自社担当者が照射に関与しない運用体制を整備することが重要です。 また、立会い基準に基づく実施回数や記録保存の運用についても、薬事部門と営業部門が連携して定期的に点検することが求められます。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器メーカー向けに薬機法対応、添付文書・取扱説明書レビュー、営業部門向けコンプライアンス教育、QMS体制構築支援などを行っております。 X線装置の立会い運用や販促資料の適法性確認、行政対応に不安をお持ちの場合は、是非お気軽にご相談ください。

    お問い合わせはこちらから

    一般社団法人薬事支援機構は医療機器専門の薬事コンサルティング会社です。
    医療機器の薬事申請やQMSでお困りの際にはこちらからお問い合わせください。

    ご相談内容
    必須

    お名前
    必須

    メールアドレス
    必須

    お電話番号

    御社名
    必須

    メッセージ本文
    必須