概要
厚生労働省は令和8年3月30日、治験等の情報提供の取扱いを定めた新通知(医薬監麻発0330第1号)の運用を補足するQ&Aを事務連絡として示しました。製薬企業や治験依頼者が、患者など医療関係者以外へ治験情報を提供する際、どこまでが広告に該当せず認められるかを整理した内容です。参加者募集や治験結果のレイサマリー公表を行う担当者は、広告該当性を誤らないために本Q&Aの確認が必要です。ポイントは、必要な範囲にとどめること、承認品の広告と明確に区別すること、原則として成分名・成分記号を用いることの3点です。

1. 背景と目的
1.1 新通知とQ&Aの関係
治験等の情報提供については、新通知「治験等に係る情報提供の取扱いについて」が令和8年3月30日付けで示されました。今回のQ&A(事務連絡)は、その運用上の疑問に答えるものです。新通知は情報提供を大きく2つの類型で扱います。新通知2.は参加者募集のための情報提供、新通知3.は製薬企業等のウェブページで患者等に治験情報や臨床試験結果のレイサマリーを提供するものです。いずれも一定条件下で広告に該当しないと整理されています。今回のQ&Aは全10問で、この2類型ごとに具体的な運用の疑問へ答える構成です。
1.2 なぜ広告該当性が問題になるか
未承認の治験薬等は、承認前の宣伝が薬機法で禁止されています。承認前の医薬品等の名称・製造方法・効能効果などの広告は認められません。一方、治験の参加者募集や治験結果の公開には社会的な意義があります。そのため、どこまでが「広告」に当たり、どこからが認められる情報提供かの線引きが重要になります。本Q&Aは、この境界を具体的な場面ごとに示しています。広告該当性は、顧客誘引の意図、特定性、一般認知性の3要件で判断されるのが通例で、今回のQ&Aもこの枠組みを前提に整理されています。
2. 主要な論点
2.1 参加者募集情報の範囲と削除
新通知2.による参加者募集の情報提供では、同意説明文書のすべてを網羅する必要はありません。参加者募集に必要な範囲・量にとどめます(Q1)。一般人が対象であることを踏まえ、分かりやすく記載し、治験薬への過度な期待をあおらないよう、想定される利益と不利益のバランスをとる必要があります。情報提供が可能な期間が終了した場合は、原則として削除します(Q2)。ただし、治験終了後も販売が続く雑誌の掲載など削除が難しい場合は継続しても差し支えありません。SNS(ソーシャルネットワークサービス)でURLを紹介していたケースでは、リンク先の情報が削除されていれば、SNS投稿自体の削除は必ずしも要しません。
2.2 治験結果のレイサマリー提供
新通知3.による情報提供は、主に製薬企業のウェブページで、jRCT(臨床研究等提出・公開システム)等に掲載された情報や臨床試験結果のレイサマリーを患者等へ提供する場面を想定しています(Q3)。対象の治験薬が承認された後も、必ずしも削除は要しません(Q4)。ただし、承認品の広告・販売情報提供活動・適正使用情報とは明確に区別する必要があります。承認品の患者向け情報から、新通知3.の情報提供へアクセスを誘導すること(個別ページURLの紹介など)は認められません。
2.3 販売名の取扱い
新通知2.・3.の情報提供の中で医薬品の販売名を記載することについては、販売名の記載だけで直ちに広告に該当するわけではありません(Q5)。ただし治験情報であることを踏まえ、原則として治験成分記号または成分名を用い、海外で使われている販売名を含めて販売名は使用しないこととされています。例外として、新通知3.のレイサマリーの中で販売名が使われているなど、個別ページで言及される場合は別です。
3. 実務対応
3.1 第三者によるURL紹介
製薬企業以外の者が、参加者募集ページや表紙ページのURLを紹介する行為は広告に該当しません(Q6)。ただしリンク先の情報を紹介する場合は、中立的な記載とし、顧客誘引性を持たせてはなりません。個別ページの直接URLの紹介は、広告に該当する可能性があります。単にjRCT等の公的データベースのトップページや、複数治験の表紙ページの存在・URLを紹介するだけであれば、特定性がなく広告に該当しません(Q7)。患者団体による情報提供については、別の事務連絡「患者団体等による治験等に係る情報提供に関するQ&Aについて」が示されているため、あわせて参照します。
3.2 医師や患者への情報提供
販売情報提供活動の担当者が、参加者確保のために医療機関の医師等へ参加者募集情報を提供し、候補患者の紹介を依頼することは広告に該当しません(Q8)。ただし販売情報提供活動とは明確に区別して行う必要があります。医師等への情報提供自体は新通知の対象外です。また、令和2年の事務連絡(患者からの問合せへの対応)との関係では、新通知に基づく治験情報の提供は広告に該当せず、患者からの求めに応じて個別対応することを必ずしも要しないと整理されています(Q9)。承認済み医療用医薬品の患者向け情報提供とは前提が異なる点に注意します。
3.3 患者・市民参画への提供
治験の患者・市民参画(PPI)として、少数の患者等が計画立案や資料作成に関与する場合、その少数の患者へ治験情報を提供することは、広告該当性の3要件のうち一般認知性を欠くため広告に該当しません(Q10)。関与する範囲の患者に限った情報共有であれば、広く一般に向けた宣伝とは性質が異なるためです。
まとめ
治験情報提供Q&Aは、治験参加者募集や治験結果のレイサマリー公表を行う際の 広告該当性の判断基準 を具体的に示した実務上重要な資料です。製薬企業や治験依頼者は、 必要な範囲に限定した情報提供 、 承認品の広告との明確な区別 、 成分名・成分記号を原則とした運用 を正しく理解し、薬機法に沿った情報発信を行うことが求められます。
特に、 ウェブサイトやSNSでの治験情報の公開 、 参加者募集ページの運用 、 レイサマリーの掲載方法 、 販売名の取扱い などは、広告規制との線引きに迷いやすいポイントです。運用を誤ると、 意図せず広告と判断されるリスク もあるため、新通知とQ&Aの内容を踏まえた社内ルールの整備や運用体制の見直しが重要になります。
弊社(一般社団法人薬事支援機構) では、 治験情報提供に関する薬機法上の広告該当性の検討 をはじめ、 社内ガイドラインの整備 、 治験関連資料のレビュー 、 製薬企業・医療機関向けの薬事コンサルティング まで幅広く支援しております。治験情報の公開方法や広告規制への対応に不安がある場合は、お気軽にお問い合わせください。 貴社の状況に合わせた最適な対応 をご提案いたします。