概要
令和8年4月30日付けで、医療機器等リスク管理指針が一部改正されました。根拠は医薬機審発0430第1号・医薬安発0430第9号です。厚生労働省医薬局の医療機器審査管理課長と医薬安全対策課長による連名通知になります。適用は令和8年5月1日からです。
改正されたのは指針の「1.緒言」だけです。適用範囲が引用する条件付承認通知が、令和2年通知から令和8年3月31日付け医薬機審発0331第23号に差し替わりました。あわせて「条件付き承認制度」の表記が「条件付承認制度」に統一されています。リスク管理計画に求められる中身そのものに変更はありません。
対象は、医療機器等条件付承認制度で承認申請する医療機器・体外診断用医薬品の申請者と製造販売業者です。条件付承認を使わない品目に影響はありません。ただし引用先の条件付承認通知そのものが刷新されているため、指針の実質的な適用対象は新しい通知に沿って読み替える必要があります。

1. 背景と目的
1.1 リスク管理指針の位置づけ
医療機器等リスク管理計画は、GVP省令(平成16年厚生労働省令第135号)に定められた製造販売後安全管理の枠組みです。指針は、その計画を策定するための基本的な考え方を示します。土台にあるのはJIS T 14971のリスクマネジメントの概念です。ハザードを特定し、リスクを推定・評価し、コントロールの有効性を監視する。この流れを市販後の適正使用管理まで広げたものが本指針になります。
条件付承認制度は、承認申請前の限られた臨床データでは明らかにならないリスクへの対応を前提とします。だからこそ使用条件の設定や市販後のデータ収集を、開発段階から計画する必要があります。市販後の適正な使用を担保し、保健衛生上の危害を防ぐことが指針の目的です。
1.2 改正の経緯
今回の改正は、医薬品医療機器等法の一部を改正する法律(令和7年法律第37号)による関係規定の見直しを受けたものです。同法の施行日である令和8年5月1日に合わせ、指針の記載を整えました。
同じ流れで、条件付承認の取扱い通知も令和8年3月31日付けで刷新されています。指針は条件付承認制度の対象品目に適用されるため、引用先の差し替えが必要になりました。
2. 何がどう変わったのか
新旧対照表で下線が引かれた改正箇所は2点だけです。
2.1 適用範囲が引用する通知の差し替え
改正前の指針は、適用範囲を「令和2年8月31日付け薬生機審発0831第2号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知」に示す条件付き承認制度の対象品目としていました。改正後はこれが「令和8年3月31日付け医薬機審発0331第23号 厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長通知」に置き換わります。
局名も「医薬・生活衛生局」から「医薬局」へ変わりました。組織再編を反映した修正です。適用範囲の後段は変わっていません。承認申請を行おうとする時点で、指針をもとに計画の作成を検討することが引き続き求められます。
2.2 「条件付き承認」から「条件付承認」への表記統一
1.1目的と1.2適用範囲にあった「条件付き承認制度」が、すべて「条件付承認制度」になりました。送り仮名の「き」が落ちただけで、制度の中身が変わったわけではありません。社内SOPや申請書類で旧表記を使っている場合は、この機会に統一しておくと混乱を避けられます。
2.3 指針本体は据え置き
別添として改正後の指針の全文が添付されています。ただし新旧対照表で改正部分とされたのは緒言だけです。安全性検討事項の考え方、安全性監視計画、リスク最小化計画、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)への報告という枠組みはそのまま維持されています。
3. 改正後の指針で押さえる実務ポイント
改正を機に、指針が求める要求事項を整理しておきます。
3.1 リスク管理計画書の組み立て
医療機器等リスク管理計画書は4つの要素で構成します。まず安全性検討事項を策定します。それを踏まえて安全性監視計画とリスク最小化計画を作ります。必要に応じて、有効性に関する製造販売後の調査・試験の計画も加えます。
計画は承認審査の過程で妥当性が検討されます。審査報告書の記載内容との整合を図って整備することが求められます。
3.2 安全性検討事項の3分類
安全性検討事項は次の3つに要約します。
- 重要な特定されたリスク — 臨床データでも十分に確認された重大な危害。非臨床試験で因果関係が明らかにされ、臨床データでも確認された重大な不具合など
- 重要な潜在的リスク — 臨床データからの確認が十分でない重大なリスク。類似の医療機器等で認められている重大な不具合が自社品では未確認の場合など
- 重要な不足情報 — 策定時点で不足している重要な情報。臨床使用経験がほとんどない患者集団の安全性情報など
形状・構造及び原理、使用目的又は効果、使用方法といった製品特性を考慮して特定します。製造販売後に新たな安全性の懸念が判明したときは、速やかに内容を見直してください。
3.3 追加の措置を検討する観点
通常の活動だけで足りるかは、複数の観点から判断します。指針が挙げる考慮事項は次のとおりです。
- 推定使用患者数、使用方法、特定されているリスク集団
- 対象疾患や合併症の重篤性、背景発現率
- 重大な不具合等の重篤度、頻度、可逆性、予防可能性
- 海外での開発・製造販売の状況、海外で執られた安全対策
検討の結果にかかわらず、法第68条の10に基づく不具合等情報の収集・報告は義務です。添付文書等による情報提供も同様に義務づけられています。
3.4 適正使用管理活動
追加のリスク最小化活動の柱が適正使用管理活動です。関連学会と協力して適正使用基準を作成します。基準には実施医・実施施設の要件を規定します。加えて、注意が必要な症例への対応、講習やプロクタリングの実施計画、実施施設を拡大する場合の考え方も盛り込みます。
関連学会は日本医学会または日本歯科医学会の分科会が基本です。分科会以外の学会が主体となる場合は、分科会との関係と協力が得られることを説明してください。
製造販売業者側は、教育訓練プログラムを関連学会と連携して策定・実施します。施設基準を満たしうる医療機関へ納入するなどの措置も必要です。適正使用基準の遵守状況は定期的に確認し、その頻度と方法をあらかじめ計画しておきます。
3.5 節目の設定と総合機構への報告
各活動には、評価またはPMDAへの報告を行う節目となる予定の時期を設定し、計画書に記載します。1つの活動で複数の安全性検討事項を扱う場合は、検討事項ごとに節目を置いて進捗を管理します。
計画は策定後も見直しが必要です。新たな安全性の懸念が判明したとき、使用者の拡大を図る時期、設定した節目の時期などが契機になります。法令に基づく定期報告や使用成績評価申請の時期も同様です。
使用成績評価期間中の品目は、規則第114条の43に規定する報告の際に、評価内容を要約して報告します。この報告の際に計画を見直し、検討結果もあわせて報告してください。計画を変更する場合は、必要に応じ事前にPMDAへ相談します。
まとめ
今回の医療機器等リスク管理指針の改正では、条件付承認制度に関する引用通知が令和8年3月31日付け「医薬機審発0331第23号」へ変更され、「条件付き承認制度」の表記も「条件付承認制度」へ統一されました。リスク管理計画の内容そのものに大きな変更はありませんが、条件付承認を検討する医療機器・体外診断用医薬品では、新しい条件付承認通知とリスク管理指針をあわせて確認することが重要です。
特に、条件付承認制度を活用する場合は、承認申請資料だけでなく、安全性検討事項の整理、安全性監視計画・リスク最小化計画の策定、関連学会との適正使用基準の調整、教育訓練、製造販売後のデータ収集、PMDAへの報告まで見据えた対応が求められます。条件付承認の適用可能性やリスク管理計画の内容について判断に迷う場合は、承認申請の直前ではなく、開発の早い段階から薬事戦略を整理しておくことが重要です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器・体外診断用医薬品の承認申請やPMDA相談をはじめ、条件付承認制度の活用検討、リスク管理計画の策定・レビュー、製造販売後安全対策などの薬事支援を行っています。「自社製品で条件付承認制度を活用できるか確認したい」「リスク管理計画をどのように作成すればよいかわからない」「PMDA相談や承認申請に向けて薬事戦略を整理したい」といった課題がございましたら、ぜひ弊社までお問い合わせください。