概要
令和8年2月10日付け医薬発0210第1号により、副作用等報告の取扱いを定めた局長通知(平成26年10月2日付け薬食発1002第20号)が再び改正されました。改正の中心は、外国医療機器および外国再生医療等製品に係る不具合報告の整理です。30日以内報告の対象から「外国医療機器・外国再生医療等製品による既知の死亡又は重篤症例」を除外し、一方で予測不能または発生傾向の変化を示す死亡・重篤症例については15日以内報告の対象に組み込みます。施行日は令和8年5月1日です。
医療機器・再生医療等製品の製造販売業者は対応が必須です。とくに外国製品を国内で展開する事業者は、外国で発生した症例の社内トリアージ基準とPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)への報告フローを5月1日までに見直してください。先行する令和7年8月26日付け医薬発0826第4号(要指導医薬品の定期報告整理)に続く、別添再整理の第二弾という位置づけです。
対象は、医療機器・再生医療等製品の製造販売業者、外国製造医療機器等特例承認取得者、外国製造再生医療等製品特例承認取得者、ならびにコンビネーション医薬品の機械器具等部分を扱う事業者です。医薬品・医薬部外品・化粧品の副作用報告に直接の変更はありません。

1. 背景と目的
1.1 改正の根拠
今回の改正は、医薬品医療機器等法等の一部を改正する法律(令和7年法律第37号、以下「改正法」)および同法施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(令和7年厚生労働省令第117号、以下「改正省令」)の施行に伴うものです。改正法・改正省令の施行日(令和8年5月1日)に合わせて、局長通知の別添を改めます。
1.2 これまでの流れ
副作用等報告は、医薬品医療機器等法第68条の10第1項に基づく義務です。運用詳細は平成26年10月2日付け薬食発1002第20号で示され、その後複数回の改正を経てきました。直近では令和7年8月26日付け医薬発0826第4号により、要指導医薬品の定期報告に「製造販売後安全性調査報告書」での代替を認める整理が行われています。今回はその約半年後、改正法・改正省令の本格施行に合わせた別添の上書きです。
1.3 今回の改正の狙い
ポイントは、外国医療機器・外国再生医療等製品の既知症例について、報告制度上の位置づけを見直すことです。改正前は、外国製品で発生した既知の死亡・重篤症例も国内製品と同様に30日以内報告の対象でした。改正後は、既知症例を30日以内報告の対象から外す一方、予測不能または発生傾向の変化が保健衛生上の危害につながる症例は15日以内報告の対象に明確化します。市販後安全管理のシグナル検出に重点を置き、定型化した既知症例の事務的報告を減らす方向です。
2. 主要要件と事例
2.1 30日以内報告対象の見直し
改正省令により、規則第228条の20第2項に基づく30日以内不具合報告の対象から、外国医療機器・外国再生医療等製品による既知の死亡又は重篤症例が除外されます。国内製品で発生した既知の死亡・重篤症例は引き続き30日以内報告の対象です。混同しないよう、社内SOPで「国内発生」「外国製品(同一性ありの外国品)」を分けて運用してください。
2.2 15日以内報告への組み込み
改正後の別添では、外国医療機器・外国再生医療等製品の不具合による影響と疑われる死亡又は重篤症例のうち、次の2類型は15日以内報告の対象です。
- 使用上の注意等から予測できないもの(未知症例)
- 発生傾向の変化が保健衛生上の危害の発生又は拡大のおそれを示すもの
「予測できないもの」とは、注意事項等情報の「使用上の注意」(警告、重要な基本的注意、相互作用、不具合・有害事象等)に記載のない症例、または記載があっても性質・症状の程度が一致せず記載不十分なものを含みます。「発生傾向の変化」には、これまで報告がなかった患者群で症例が発生した場合や、既知の発生頻度から著しく変化した場合などが該当します。
2.3 用語整理:「不具合による影響であると疑われるもの」
別添では用語の解説も再整理されています。「不具合による影響であると疑われるもの」は、因果関係が否定できるもの以外を指し、因果関係が不明なものも含みます。実務的には「因果関係なしと医学的に断定できない限り、対象とみなす」というスタンスです。社内の症例トリアージ会議で「不明だから対象外」と判断しないよう注意してください。
2.4 報告様式の番号整理
別添3「報告様式」の医療機器および再生医療等製品の項で、引用される条項の号(イ、ロ、ハ等)にずれが生じています。改正後の別紙様式第8〜第15の使い分けを社内文書で更新してください。様式そのものの追加・廃止はありませんが、参照条項の号番号が変わるため、SOP上の引用箇所は要修正です。
3. 実務対応と罰則
3.1 施行までのスケジュール
施行日は令和8年5月1日です。残された準備期間は限られています。次のスケジュールで進めてください。
- 〜令和8年3月: 社内SOP・トリアージ基準の改訂案作成
- 〜令和8年4月: 社内研修、関係部署(安全管理、QA、海外子会社)への周知
- 令和8年5月1日: 改正後ルールで運用開始
3.2 製造販売業者が見直すべき社内手順
最低限、次の3点をSOPに反映してください。
- 症例トリアージ基準 — 国内発生/外国製品由来、既知/未知、死亡・重篤/非重篤の組合せで報告経路を判定する分岐表を作成する
- 報告期限の判定ロジック — 外国製品由来の死亡・重篤症例が未知または発生傾向変化のときは15日以内、その他の整理を明文化
- 第一報のFAXルート — 国内死亡症例・感染症全例・外国措置全内容はPMDA医療機器安全課への速やかな第一報(FAX等)を維持
3.3 外国製造医療機器等特例承認取得者への影響
外国製造医療機器等特例承認取得者および外国製造再生医療等製品特例承認取得者は、本改正の中心的な対象です。外国本社から提供される症例データの形式と、国内報告基準(15日/30日/定期)の対応関係を改めて確認してください。本社のグローバル安全管理基準(ICSR等)と国内基準のギャップを埋める運用が必要です。
3.4 経過措置と罰則
改正適用日(令和8年5月1日)前に発生した症例で、適用日時点で既に報告起算日が到来しているものの取扱いは、原則として従前の例によります。改正前の30日以内報告対象として処理してください。報告義務違反は法第68条の10第1項違反として、業務改善命令・業務停止命令の対象になり得ます。
まとめ
今回の改正により、外国医療機器・外国再生医療等製品における不具合報告ルールは大きく整理され、既知の死亡・重篤症例に関する30日以内報告の見直しや、未知症例・発生傾向変化に対する15日以内報告の判断がより重要になります。製造販売業者は、単に報告期限を確認するだけでなく、症例トリアージ基準、GVP手順書、SOP、海外製造元との情報連携体制を見直す必要があります。
特に海外製医療機器を日本市場へ導入している企業では、海外本社の安全管理基準と日本の薬機法上の副作用等報告・不具合報告要件に差異が生じるケースがあります。報告要否の判断ミスや期限超過を防ぐためには、PMDA報告基準を踏まえた社内フローの整備と、改正内容を反映した実務運用の確認が重要です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の不具合報告対応、GVP体制構築、SOP改訂、PMDA対応、外国製造医療機器の国内導入支援まで幅広くサポートしております。外国医療機器の安全管理体制や改正後の報告対応についてお困りの場合は、お気軽にご相談ください。