概要
令和8年4月30日、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長から標記の一部改正通知が発出されました。適用日は令和8年5月1日です。
改正の中身は、薬機法の条項番号のずれを直す技術的修正が中心です。QMS調査の区分・頻度・添付資料といった運用そのものは変わりません。
対象となるのは、医療機器および体外診断用医薬品の製造販売業者と登録製造所、医薬品の製造販売業者・製造業者、再生医療等製品の製造販売業者・製造業者です。薬機法の条項を直接引用しているSOPや申請書式を持つ事業者は、5月1日を境に引用条項の点検が必要になります。

1. 背景と目的
1.1 令和7年薬機法改正の施行に伴う整理
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第37号)は、令和7年5月21日に公布されました。このうち改正法附則第1条第2号に掲げる規定、いわゆる1年以内施行規定が令和8年5月1日から施行されます。施行期日は令和7年政令第271号で定められました。
法律の条や項が動けば、それを引用している通知も直さなければなりません。今回の一部改正はその整理にあたります。
1.2 改正された3つの要領
改正の対象は、次の3通知に添付された調査要領です。
- GMP調査要領(令和6年3月29日付け医薬監麻発0329第9号の別添)
- QMS調査要領(令和6年6月12日付け医薬監麻発0612第2号の別添)
- GCTP調査要領(令和3年7月30日付け薬生監麻発0730第3号の別添)
通知が示す改正の概要は2点だけです。1年以内施行規定の施行に伴う条ずれ等の技術的修正と、その他所要の改正。改正後の各通知は参考1から参考3として全文が添付されています。
2. QMS調査要領の改正内容
医療機器の事業者に直接関係するのは別紙2です。改正箇所は4か所にとどまります。
2.1 QMS調査の分類(第2)
調査区分ごとの根拠条項が、次のように移動しました。
- 承認等申請に係る適合性調査 … 法第23条の2の5第7項 → 同条第6項
- 一変時適合性調査 … 同条第15項において準用する第7項 → 同条第13項において準用する第6項
- 追加的調査 … 同条第9項 → 同条第8項
- 再製造単回使用医療機器定期確認調査 … 同条第9項 → 同条第8項
外国特例承認等に係る調査も、法第23条の2の17第5項で準用する条項が同じ形でずれています。一方、認証品目側の根拠である法第23条の2の23(第4項、第6項、第7項)は変わりません。承認品目に関する条項だけが動いた形です。
調査区分の並び自体は改正前と同一です。承認等前適合性調査、一変時適合性調査、定期適合性調査、追加的調査、輸出品の製造に係る適合性調査、再製造単回使用医療機器定期確認調査、変更計画に係る適合性確認という7分類は維持されました。
2.2 調査期間の考慮事項(第4・3 表1)
表1「調査期間の決定に当たって考慮すべき事項」のうち、変更履歴の欄が修正されました。製品群区分の根拠が、法第23条の2の5第8項第1号から第7項第1号に変わっています。
考慮すべき事項の中身は同じです。調査対象施設の所有者や場所の変更、品質に影響を及ぼし得る構造設備・責任者の変更、製品群区分に係る品目の追加、新たな教育訓練を要する設備器具の導入。これらが引き続き調査期間の判断材料になります。
2.3 添付資料に関する注記(第4・7 表4)
表4「適合性調査等申請に当たっての添付資料」の脚注3か所で、条項が改まりました。
- 承認等事項一部変更承認等書 … 法第23条の2の5第15項 → 第13項
- 軽微変更届書 … 同条第16項 → 第14項
- 承認事項一部変更承認書 … 同条第15項 → 第13項
添付資料のリスト本体に変更はありません。用語の定義に使われている条項番号だけが直された形です。
2.4 調査結果通知等の送付(第5・13)
調査実施者が調査結果を厚生労働大臣および製造販売業許可権者へ通知する際の根拠が改まりました。引用条項が「法第23条の23第4項」から「法第23条の2の7第6項」に変わっています。あわせて薬機法施行令の引用も、第37条の36から第37条の37へ移りました。第37条の23と第40条の2は据え置きです。
通知先も通知の手順も従前どおりで、事業者側の対応は生じません。
3. GMP調査要領・GCTP調査要領の改正内容
3.1 GMP調査要領(別紙1)
条ずれの構造は医療機器と同じです。法第14条第7項が第6項に、第15項が第13項に、第9項が第8項にそれぞれ移りました。緊急承認に係る適合性調査の根拠は、法第14条の2の2第2項から第14条の2の2の2第2項に変わっています。新たな条が挿入されたためです。
技術的修正にとどまらない改正が1点あります。別紙3のGMP調査通知書様式が全面的に改められました。新様式は参照番号、調査実施者の氏名・職名・所属、調査の目的、調査事項、調査日時、調査対象製造業者等および製造所の情報で構成されます。適合と判定された場合にPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のウェブサイトで結果が公表される旨の注記も入りました。ただし製造販売承認前適合性調査と変更計画に係る適合性確認は公表対象外です。様式には関係条文の抜粋も添付されています。
3.2 GCTP調査要領(別紙3)
再生医療等製品の調査要領では、調査区分そのものが増えました。製造販売承認前適合性調査に、緊急承認に係る適合性調査(法第23条の26の2第2項)、外国特例承認における緊急承認に係る適合性調査、特例承認に係る適合性調査、外国特例承認における特例承認に係る適合性調査の4区分が新設されています。変更計画に係る適合性確認も、既存承認と外国特例承認の2区分に細分化されました。
さらに別添3「GCTP適合性評価基準」が全面的に改められました。不備事項を重度(critical)、中程度(major)、軽度(other)の3段階に分類し、その評価結果から適合状況を判定する枠組みが示されています。
4. 実務対応のポイント
4.1 適用日と経過措置
適用日は令和8年5月1日です。経過措置の定めはありません。同日以降の調査および申請には、改正後の要領が適用されます。
4.2 引用条項の点検
医療機器の事業者がやるべきことは、社内文書の条項引用の洗い出しです。次の3か所は特に影響を受けやすい箇所になります。
- QMS適合性調査申請に関する手順書・チェックリストの根拠条項
- 一部変更承認申請および軽微変更届の根拠条項(第15項→第13項、第16項→第14項)
- 基準適合証や製品群区分を説明している文書の根拠条項(第8項→第7項)
QMS省令(平成16年厚生労働省令第169号)そのものの改正ではないため、品質管理監督システム文書の実体を書き換える必要はありません。
4.3 調査対応の準備は従来どおり
調査区分、調査頻度、実地調査と書面調査の別、添付資料の内容に実質的な変更はありません。すでに整備している申請パッケージはそのまま使えます。
医薬品の製造所については、5月1日以降に受け取るGMP調査通知書の様式が変わる点に留意してください。再生医療等製品を扱う事業者は、調査区分の追加と適合性評価基準の改正を社内へ展開する必要があります。
4.4 参考通知の活用
本通知には改正後の全文が参考1から参考3として添付されています。新旧対照表の差分を追うより、改正後の完成版を社内展開に使うほうが確実です。
まとめ
今回のQMS調査要領の改正は、令和7年薬機法改正の施行に伴う条項番号の変更が中心であり、QMS調査の区分・頻度・添付資料などの実務運用そのものに大きな変更はありません。一方で、QMS適合性調査に関するSOPやチェックリスト、申請書式、社内規程などで薬機法の条項を直接引用している場合は、旧条項が残っていないか確認し、必要に応じて改訂することが重要です。
また、今回の通知ではQMS調査要領だけでなく、GMP調査要領・GCTP調査要領も改正されています。特にGMP調査通知書の様式変更やGCTP調査区分・適合性評価基準の改正など、実質的な変更が含まれる分野もあります。複数の製品区分を取り扱う企業では、自社にどの変更が影響するのかを整理したうえで、関連する手順書や申請資料へ漏れなく反映することが求められます。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器のQMS適合性調査、QMS省令への対応、製造販売承認・認証申請、SOP・品質文書の整備など、医療機器薬事に関する各種支援を行っています。「今回のQMS調査要領改正で自社のSOPを変更する必要があるか確認したい」「QMS適合性調査に向けて申請資料や品質文書を点検したい」「薬機法改正への対応範囲を整理したい」といったお悩みがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。