概要

平成29年7月31日、厚生労働省は医療機器の品質管理システム(QMS)に関する重要な通知を発出しました。この通知は、単回使用医療機器の再製造制度の導入に伴い、QMS適合性調査の運用を改正するものです。主な変更点として、基準適合証によるQMS調査の合理化方法、承認申請に係る調査申請の取扱い、追加的調査の実施要件、そして新たに設けられた再製造単回使用医療機器定期確認調査の詳細が示されています。本通知により、従来の平成26年通知は廃止され、医療機器製造販売業者はより効率的な品質管理体制の構築が可能となりました。

1. 基準適合証によるQMS適合性調査の合理化

1.1 基準適合証の有効性判断基準

基準適合証を活用してQMS適合性調査を省略できるかどうかは、以下の4つの条件すべてを満たす必要があります。

第一に、製品群区分の妥当性です。基準適合証に記載された製品群区分が、調査申請品目の一般的名称および品目特性と合致している必要があります。単一の一般的名称を持つ医療機器の場合、製品群通知の別紙から該当する区分を確認します。複数の一般的名称を持つ医療機器については、原則として承認書等の名称欄に記載された一般的名称に基づいて判断しますが、複数一般的名称認証通知の対象品目や組合せ医療機器については特別な取扱いがあります。

第二に、製造所の一致です。承認書等に記載されたすべての関係登録製造所(滅菌または最終製品保管のみを行う施設を除く)と基準適合証に記載された製造所、およびそれらの製造工程が同一である必要があります。

第三に、有効期間内であることです。QMS適合性調査を受けるべき期日において、有効な基準適合証を保有している必要があります。

第四に、申請者の一致です。適合性調査申請者が基準適合証の申請者欄に記載されている必要があります。ただし、承継により申請者が変更された場合は、別途追加的調査が必要となる場合があります。

1.2 基準適合証の提示方法

基準適合証によりQMS適合性調査を省略する場合、承認等申請書の備考欄に有効な基準適合証の番号および交付年月日を記載し、その写しを1部添付します。承認等権者から原本提示の要求があった場合は、これに応じる必要があります。

定期のQMS適合性調査を省略する場合は、調査を受けるべき期日ごとに特段の手続きは不要ですが、基準適合証の交付を受けるための適合性調査申請時に、定期調査省略予定品目の一覧表を添付する必要があります。

2. 承認等に係るQMS適合性調査の申請

2.1 新規承認等申請時の調査

新規承認等申請に係るQMS適合性調査では、原則として製造販売業者等の主たる事務所および承認等申請書に記載されたすべての登録製造所が調査対象となります。調査実施者は必要に応じて、その他の関係施設を調査対象に加えることができます。

一部変更承認等申請の場合は、原則として製造販売業者等の主たる事務所および変更により追加された登録製造所が調査対象となります。ただし、追加的調査の要件に該当する事項がある場合は、それらの施設も調査対象に含まれます。

基準適合証の有効期間は、新規承認等申請の場合は交付日から5年間、一部変更承認等申請の場合は変更前の基準適合証の残存期間となります。

2.2 定期のQMS適合性調査

定期調査は、基準適合証に係る品目の承認等取得日から5年を経過するごとに受ける必要があります。ただし、前倒しでの申請も可能であり、この際に基準適合証に記載される品目を変更することもできます。

定期調査の対象品目は、申請された品目に加え、基準適合証により調査が省略される見込みの品目から、調査実施者が製造実績や回収等の発生状況を勘案して選定します。調査対象施設は原則として製造販売業者等の主たる事務所およびすべての登録製造所となります。

2.3 専門的調査および追加的調査

専門的調査は、規則第114条の33第1項第2号イからトまで、または第4号イからハまでに該当する医療機器等について、その特性に応じて実施されます。

追加的調査は、基準適合証により調査を省略した場合で、以下のいずれかに該当する場合に必要となります。

品目の特性に応じた区分に該当する場合滅菌方法を変更した場合滅菌または最終製品保管に係る登録製造所を追加した場合承継があった場合などです。

調査対象施設は、原則として製造販売業者等の主たる事務所および該当する要件に関係する登録製造所となります。

3. 再製造単回使用医療機器定期確認調査

3.1 調査の概要と頻度

再製造単回使用医療機器は、品目ごとにQMS調査を要する医療機器であり、製造販売の承認条件として定期確認調査を受ける必要があります。調査頻度は、承認取得日から原則として概ね1年に1回となります(5年ごとの定期調査の年を除く)。

調査対象施設は、原則として製造販売業者等の主たる事務所およびすべての登録製造所となります。

3.2 実地調査の必要性

再製造単回使用医療機器の製造では、病原微生物その他疾病の原因となるものの不活化または除去、再製造工程における製品劣化の確認等、通常の医療機器と比べて製造管理および品質管理に特に注意を要します。このため、調査実施者は当分の間、原則として実地での調査を実施することとされています。

4. 医療機器等の適合性調査申請における留意事項

4.1 申請書の様式

医療機器等の適合性調査申請には、それぞれ定められた様式を使用します。承認に係る調査は規則様式第63の11(FD申請様式EC4またはEC5)、外国製造医療機器等特例承認に係る調査は規則様式第63の25(FD申請様式FB4またはFB5)、認証に係る調査は規則様式第67を使用します。

4.2 製品群への該当性判断

単一の一般的名称を有する医療機器等については、製品群通知に基づき該当する製品群を選定します。一つの一般的名称に複数の製品群が該当する場合は、品目の特性や製造工程を勘案して複数の製品群を選定することも可能です。

複数の一般的名称が記載された医療機器については、原則として承認書等の名称欄に記載された一般的名称について製品群を選定しますが、合理的理由がある場合は備考欄に記載された一般的名称に係る製品群も併せて選定できます。

4.3 申請書への添付資料

承認等に係るQMS適合性調査申請には、製造販売承認等申請書の写し、ISO13485認証書等の他の調査実施者による調査報告書、調査対象品目の製造工程の概要、各調査対象施設のQMS相互関係を確認できる資料などを添付します。

定期のQMS適合性調査申請には、前回調査以降の変更内容を示す書類、定期調査を省略できる見込み品目の一覧表、更新前の基準適合証の写し、宣誓書などが必要となります。

5. 輸出用医療機器等のQMS適合性調査

5.1 調査申請の取扱い

輸出用医療機器等のQMS適合性調査は、規則様式第113(2)を使用して申請します。輸出開始時の調査では、輸出用医療機器等製造届書の写し、ISO13485認証書等、製造工程の概要などを添付します。

輸出開始後5年ごとの調査では、前回調査以降の変更届書の写し、回収がある場合はその概要、宣誓書などの追加資料が必要となります。

まとめ

本通知は、医療機器のQMS適合性調査制度を抜本的に見直した重要な改正です。基準適合証を活用した調査省略の明確化や、定期調査・追加的調査の運用基準が整理され、製造販売業者の実務負担が軽減されました。これにより、承認・変更・定期調査の各段階で一貫した品質管理の運用が可能となります。

特に注目すべきは、再製造単回使用医療機器に対する定期確認調査の導入です。年1回の実地調査を通じて、再製造工程における衛生・品質管理の適切性を確認する仕組みが整備され、より厳格な安全性確保が求められています。これにより、再製造医療機器の信頼性向上と市場供給の安定が期待されます。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、基準適合証の活用可否判断支援QMS適合性調査申請書の作成サポート再製造医療機器に関する品質管理体制の整備支援など、最新の法規制に即したコンサルティングを提供しています。制度対応や申請実務に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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