概要
カルタヘナ法に基づく厚生労働省への報告様式が改められました。根拠は令和8年9月1日付け通知(医薬薬審発0901第1号・医薬機審発0901第5号)です。これに伴い、平成27年6月23日付けの旧課長通知は廃止されました。薬食審査発0623第1号・薬食機参発0623第1号がそれです。旧様式はもう使えません。
対象は、医薬品や医療機器などの製造販売または治験の実施を目的として遺伝子組換え生物等を扱う事業者です。遺伝子治療に用いる再生医療等製品、遺伝子組換え生ワクチン、製品の製造に用いる組換え微生物などが該当します。
新たな報告様式は、①評価等に影響する知見の報告、②第二種使用等の状況報告、③住所等の変更届出の3種類です。特に第二種使用等では、開始・終了・年度末の報告や、製造数量、拡散防止措置、製造上の支障などを適切に管理する必要があります。
提出先は品目の種類で分かれます。医薬品・医薬部外品・化粧品は医薬品審査管理課長に提出します。医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品は医療機器審査管理課長が宛先です。

1. 背景と目的
1.1 カルタヘナ法における2つの使用等
カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律。平成15年法律第97号)は、組換え生物による生物多様性への影響を防ぐための法律です。使用の形態は大きく2つに分かれます。
第一種使用等は、拡散防止措置を執らずに環境中で使う形態。第一種使用規程について主務大臣の承認が必要です。遺伝子治療用の製品は患者の体内で組換えウイルスを使うため、治験も製造販売もここに入ります。
第二種使用等は、拡散防止措置を執って閉じた環境で使う形態。組換え微生物を用いた原薬や抗体の製造が典型例です。産業上の使用等における措置は省令に定めがあり、定めのないものは主務大臣の確認(法第13条)を受けます。
承認や確認を受けたあとも、国は使用等の実態を把握し続ける必要があります。その仕組みが今回の報告制度です。
1.2 旧通知の廃止と報告対象の見直し
これまでは平成27年の課長通知が、評価に影響を及ぼす知見等の報告を求めてきました。本通知は知見の報告と製造状況等の報告について報告対象を見直したうえで、旧課長通知を廃止しています。
なお、同じ令和8年9月1日付けで関連通知が2本出ています。第二種使用等の拡散防止措置等に関する通知の一部改正と、承認申請等の事務手続に関するQ&Aの事務連絡です。報告の実務に入る前に、あわせて目を通してください。
2. 3つの様式と記載内容
2.1 様式1 評価に影響を及ぼすような知見の報告
第一種使用等をする者と第二種使用等をする者に共通する義務です。対象者は、当該遺伝子組換え生物等に関する情報を収集する義務を負います。その情報から生物多様性影響評価または執るべき拡散防止措置に影響を及ぼす知見を発見したら、速やかに報告してください。
別添に書く項目は次のとおり。
- 製造をする者の名称、所在地、代表者の職名・氏名
- 製造所(第一種使用等では「該当なし」)
- 区分(第二種使用等ではGILSP、カテゴリー1〜3、その他のいずれか。第一種使用等では「該当なし」)
- 品目の名称と概要(宿主、ベクター、供与核酸、使用目的、原理、使用方法を数行で)
- 管理者等
- 製造の概要(第二種使用等では年間および累積の数量を含む。第一種使用等では「該当なし」)
- 発見した知見の内容
管理者等の欄は使用等の形態で書き分けます。第一種使用等では管理者または責任技術者の職名と氏名。第二種使用等では製造管理者または責任技術者、製造安全主任者、製造安全委員会委員長のうち該当するものを記載します。
2.2 様式2 第二種使用等状況報告書
第二種使用等をする者だけに課される報告です。開始・終了・年度末の3区分から該当するものを選んで報告します。年度末報告の対象期間は、通常その年度の4月1日から3月31日までです。
報告期間欄の書き分けは区分ごとに変わります。
- 開始の報告 … 製造開始時期
- 終了の報告 … 製造開始時期と製造終了時期
- 年度末の報告 … 製造開始時期と報告対象期間
品目欄では、品目概要・拡散防止措置の区分・用途に加えて「確認等」を記載します。法第13条に基づく確認を受けた年月日を書く欄です。確認を受けていないGILSP遺伝子組換え微生物には、別の書き方が定められています。根拠となるGILSP告示(厚生労働省GILSP告示等)の名称と、宿主・ベクター・挿入DNAの名称を記載してください。
見落としやすいのが「製造する上での支障」欄。支障の有無を書き、有の場合はその状態と、そのとき執った処置まで記載します。
2.3 様式3 住所等変更届出書
第二種使用等をする者は、次の事項に変更があったとき、速やかに住所等変更届を提出しなければなりません。
- 第二種使用等をする者の名称、所在地、代表者の氏名
- 第二種使用等をする場所の名称、所在地
別添の冒頭には変更する日または変更した日を書きます。変更後の欄は変更していない項目も含めて全項目を記載し、変更前の欄は変更した項目だけを記載する形式です。
3. 実務対応のポイント
3.1 提出先と連名の扱い
宛先が品目の種類で分かれる点は概要のとおりです。あわせて連名の扱いも押さえてください。
両課の分野の第二種使用等について大臣確認を受けている場合、様式2と様式3の宛名は両課の連名にします。医薬品の分野と医療機器等の分野にまたがる事業所は、この点を確認してください。
3.2 様式1・様式2に共通する記載ルール
別添には共通の注意書きが付いています。
- 欄に書ききれないときは「別紙(〇)のとおり」と記載し、別紙を添付する
- 複数品目をまとめて報告する場合、全項目の情報が含まれていれば別表方式でよい
- 前回の提出時以降に変更があった部分には※を付ける
※印が効くのは年度末報告です。前回提出分との差分が一目で分かるので、確認のやり取りが減ります。
3.3 社内で決めておくこと
様式1と様式3の提出期限は「速やかに」で、日数の指定はありません。期日がない義務ほど社内で滞留します。発見から提出までの流れを手順書に落としてください。
- 知見を収集する担当と、報告の要否を判断する担当を決める
- 製造安全委員会の審議記録と様式1の記載内容をひも付けて残す
- 年度末報告に備え、製造数量と支障の記録を通年で蓄積する
- 商号変更や工場移転の情報が薬事部門に届く経路をつくる
住所等の変更は、届出義務があること自体が社内で共有されていないと漏れます。総務部門や登記を扱う部門との連絡経路を先に確認しておくべきです。
まとめ
令和8年9月1日以降、カルタヘナ法に基づく遺伝子組換え生物等の報告は、新しい様式1から様式3を使用して対応する必要があります。平成27年の旧課長通知は廃止されているため、これまでの社内様式や手順書をそのまま使用していないか確認が必要です。
特に第二種使用等を行う事業者は、対象品目や拡散防止措置の区分を改めて整理するとともに、開始・終了・年度末の報告に必要な製造数量や製造上の支障を継続的に記録できる体制を整えておくことが重要です。また、商号変更や製造所の移転などがあった場合に、住所等変更届の提出が漏れない社内フローも確認しておきましょう。
今回の改正を受け、まずは旧通知を前提とした社内手順書・報告様式の差し替え、第二種使用等の対象品目の棚卸し、拡散防止措置の確認、年度末報告に必要な記録体制の見直しを進めることをおすすめします。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、カルタヘナ法に関する薬事相談をはじめ、第一種使用規程の承認や第二種使用等の大臣確認、新様式による報告書の作成・レビュー、社内手順書の整備など、遺伝子組換え生物等を取り扱う事業者の薬事対応を支援しています。
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