概要

遺伝子組換え微生物を用いて医薬品等を製造している製造所は、報告と届出の様式が変わりました。令和8年9月1日付け医薬発0901第2号により、平成16年2月19日付け薬食発0219011号(以下「局長通知」)の記の1から3が改められています。適用は同日からです。

変わったのは2点。局長通知に付いていた別紙様式1・2・3が廃止され、同日付けの課長通知の様式へ一本化されました。もう1点が変更届の対象事項の入れ替えです。製造管理者・責任技術者の氏名や住所の変更は対象から外れました。代わりに製造業者の名称・所在地・代表者氏名と、製造所の名称・所在地が対象になっています。

拡散防止措置そのもの、つまりGILSPやカテゴリー1から3の設備要件・組織体制・記録の保存に変更はありません。見直すべきは手順書が引用している様式番号と、変更届の起票トリガーの2つです。

なお同日付けで関連通知が2本出ています。様式の本体を定めるのが課長通知「遺伝子組換え生物等に関する報告について」(医薬薬審発0901第1号・医薬機審発0901第5号)です。もう1本は、事務手続の質疑応答集(Q&A)を示した事務連絡です。

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1. 前提となるカルタヘナ法の枠組み

1.1 医薬品製造は「第二種使用等」にあたる

カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、平成15年法律第97号)は、遺伝子組換え生物の使用を2つに分けています。環境中への拡散を防止せずに行う第一種使用等と、拡散を防止しながら行う第二種使用等です。

閉鎖系の設備で遺伝子組換え微生物を培養する医薬品製造は、第二種使用等のうち「産業上の使用等」に該当します。執るべき措置を定めるのが拡散防止措置省令(平成16年財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・環境省令第1号)です。その具体的な運用を示してきたのが、今回改正された局長通知にあたります。

1.2 GILSP告示に載っているかどうかで分岐する

使用する微生物がGILSP告示(平成16年厚生労働省告示第27号)に掲げられていれば、告示に対応した拡散防止措置を執って製造できます。告示にない微生物を用いるなら、厚生労働大臣に拡散防止措置の確認申請を行わなければなりません。

確認申請では、宿主の性質やベクター・供与核酸の遺伝情報などに基づいて使用区分を選定します。区分はGILSPとカテゴリー1から3の4つです。

  • GILSP — 宿主に病原性がなく、供与核酸とベクターの性質が明らかで有害な塩基配列を含まないもの
  • カテゴリー1 — 病原性がある可能性が低く、GILSPに含まれないもの
  • カテゴリー2 — ヒトに感染性はあるが発症の可能性は少なく、予防対策と有効な治療法があるもの
  • カテゴリー3 — ヒトに対し病原性があり、取扱いにかなりの注意を要するもの

区分が上がるほど設備要件は重くなります。カテゴリー2と3では取扱工程を閉鎖系とし、排気ガスからの漏出防止やバイオハザード標識の掲示が必要です。カテゴリー3ではさらに要件が加わります。エアロックを経由した入室、退出時のシャワー設備、作業区域の陰圧維持と高性能除塵フィルターが求められます。

2. 今回の改正で変わったこと

2.1 別紙様式1〜3が局長通知から課長通知へ移った

改正前の局長通知は、報告・届出の様式を自ら別紙として抱えていました。今回の改正でこの別紙様式1・2・3は廃止されます。以後は課長通知の別紙様式を使います。

報告・届出根拠改正後に使う様式
遺伝子組換え微生物の評価に影響を及ぼす知見の報告局長通知 第三章第九課長通知 別紙様式1
製造実施状況の報告局長通知 第三章第一課長通知 別紙様式2
変更届局長通知 記の3課長通知 別紙様式3

様式の置き場所が移っただけで、報告そのものが不要になったわけではありません。

2.2 製造実施状況の報告時期は従来どおり

製造業者が製造実施状況を報告するのは、製造開始時と終了時、そして毎年度末です。この頻度は変わっていません。改正前の本文にあった「厚生労働省医薬食品局長に対し」という宛先の記載はなくなり、課長通知の別紙様式2に置き換わりました。

年度末報告を毎年提出している製造所は、令和8年度末の分から新しい様式で起票することになります。

2.3 変更届の対象事項が入れ替わった

実務への影響がいちばん大きいのがここです。前後を並べると違いがはっきりします。

改正前

  • 製造業者又は製造管理者若しくは責任技術者の氏名又は住所
  • 製造所の名称

改正後

  • 製造業者の名称、所在地又は代表者の氏名
  • 製造所の名称又は所在地

製造管理者・責任技術者の交代は、カルタヘナ法に基づく変更届の対象から外れました。代わりに製造所の所在地が新たに対象へ加わっています。製造業者側の書きぶりも「氏名又は住所」から「名称、所在地又は代表者の氏名」へ改まり、法人を前提とした表現になりました。

3. 製造所で見直すべきこと

3.1 手順書の様式引用を差し替える

カルタヘナ法対応の手順書やSOPに「局長通知の別紙様式1」といった引用が残っていれば、課長通知の様式へ書き換えてください。廃止された様式のひな形を共有フォルダに置いたままにすると、次回の報告で旧様式のまま起票する事故につながります。ひな形の差し替えと旧版の回収はセットで進めてください。

3.2 変更届の起票トリガーを見直す

製造管理者や責任技術者の交代時にカルタヘナ法の変更届を起票する運用であれば、その手順は不要になります。一方で、製造所の移転や住居表示の変更をトリガーに含めていなかった製造所は、追加が必要です。

ここで注意したいのが、医薬品医療機器等法に基づく製造業許可の変更届出との混同です。今回外れたのはカルタヘナ法側の届出であって、他法令の届出義務まで整理されたわけではありません。手順書には根拠法令を分けて記載しておくと安全です。

3.3 改正されていない部分こそ点検する

今回動いたのは様式と変更届の対象事項だけです。裏を返せば、それ以外の要求事項は平成16年から変わっていません。改正を機に次の点を確認してください。

  • 製造管理者(医薬部外品・化粧品・医療機器では責任技術者)と製造安全主任者が任命され、製造安全委員会が設置されているか
  • 製造作業の開始前に、製造管理者が製造従事者へ教育訓練を実施しているか
  • 第三章第八の帳簿を、当該医薬品等の製造終了の日から5年間保存しているか
  • 培養・発酵設備と除菌装置の密閉の程度または性能の検査を、設置時・定期・改造や交換の都度に実施しているか
  • カテゴリー3の製造従事者について、従事前に採取した血清を従事終了日から2年間保存しているか

3.4 同日付けの関連通知もセットで入手する

様式の本体は課長通知にあります。事務手続の細部は、同日付けの事務連絡「カルタヘナ法に基づく承認の申請等の事務手続等に関する質疑応答集(Q&A)について」が示しています。報告・届出の担当者は、局長通知の改正文だけを見て済ませないでください。

まとめ

今回の2026年9月改正では、カルタヘナ法に基づく遺伝子組換え微生物の報告・届出様式と、変更届の対象事項が見直されました。 局長通知の別紙様式1〜3は廃止され、課長通知の様式へ一本化されています。また、製造管理者・責任技術者の氏名・住所は変更届の対象から外れ、製造業者の名称・所在地・代表者氏名や、製造所の名称・所在地が対象となりました。

遺伝子組換え微生物を用いて医薬品等を製造する事業者は、旧様式から新様式への切替えだけでなく、SOP・手順書、変更管理、届出の起票トリガーまで確認しておくことが重要です。 一方、GILSPやカテゴリー1〜3に応じた拡散防止措置そのものは変更されていません。今回の改正を機に、設備要件、教育訓練、記録保存、製造安全管理などを含め、カルタヘナ法対応全体を点検しておくとよいでしょう。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、カルタヘナ法に基づく遺伝子組換え微生物の使用に関する手続、拡散防止措置の確認申請、変更届・報告様式への対応、SOP・手順書の見直しなどについてご相談を承っています。 「今回の改正で自社の手順書を変更する必要があるか分からない」「どの届出・報告が必要なのか整理したい」「拡散防止措置の確認申請を進めたい」といった場合も、対応内容の整理から申請・届出資料の作成支援までサポートいたします。カルタヘナ法や遺伝子組換え微生物を用いた医薬品等の製造に関する薬事対応でお困りの際は、ぜひ弊社までお問い合わせください。

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