概要
平成元年10月25日付の薬監第89号(厚生省薬務局監視指導課長通知)が発出されました。 この通知により、承認取得前に治験その他の目的で製造・輸入された医療用具について、承認取得後の販売・授与の条件が明確化されました。 この通知の対象となるのは、「治験」「社員訓練」「商品見本」「展示」等の目的で製造または輸入された医療用具です。 承認取得後に販売等を行うためには、承認内容との適合確認が前提であり、製造・輸入に関する記録を3年間保存する義務が課されます。 なお、この通知の施行に伴い、昭和60年7月8日薬監第43号「治験に用いられた器具器械の承認後の取扱いについて」は廃止されています。

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1. 背景と目的
1.1 通知が整備された経緯
医療機器の承認申請においては、臨床試験(治験)のために事前に製品を製造・輸入する必要があります。 承認申請前に製造・輸入された製品は、本来は未承認品として販売できないものです。 しかし、その後無事に承認を取得した場合、当該製品をそのまま廃棄するのは経済的な無駄となってしまいます。 品質が確認されていれば患者・医療機関への提供を妨げる合理的な理由もありません。
このような状況を踏まえ、承認申請前に特定の目的のために製造・輸入された医療用具について、承認取得後に一定条件のもとで販売等を認める規定が整備されました。
1.2 対象となる製造・輸入の目的
この通知が対象とする「治験等の目的」は以下の4種類です。
- 治験その他の試験研究: 承認申請に必要な資料を作成することを目的とした試験に用いる場合
- 社員訓練: 承認申請中に承認申請業者の社員訓練用として用いる場合
- 商品見本: 原則として製造業者(輸入販売業者)自身が商品価値等を判断するために用いる場合
- 展示: 学会・公的機関等が主催または後援する展示会等で、学術研究の向上・発展や科学技術・産業振興等を目的として展示する場合
2. 承認後の販売・授与の条件
2.1 承認内容との適合確認が必須
承認取得前に治験等の目的で製造・輸入された医療用具を販売または授与できる場合があります。 ただし条件があり、当該医療用具が承認の内容に適合していることが確認された場合に限ります。 「承認の内容に適合」とは、承認書に記載された仕様・性能・品質等の要件をすべて満たしていることを意味します。
治験用に製造・輸入された製品が最終的な承認仕様と完全に一致していない場合(例えば、承認審査の過程で仕様変更が生じた場合)は、販売・授与は認められません。 適合確認は、製造記録・試験記録・仕様書との照合等によって行い、その結果を記録として保持することが必要です。
2.2 目的の転用(転用手続き)
承認取得前の段階で、当初の目的から別の目的に転用する場合は所定の手続きが必要です。 例えば、「展示」から「治験」への転用、「商品見本」から「社員訓練」への転用といったケースが該当します。
転用にあたっては、以下の要件を満たす必要があります。
- 転用目的から見て使用上支障のないことを確認すること
- 所定の手続きを経ること
転用の際には、製品の状態・品質が転用後の目的に適していることを確認し、必要な申請・届出手続きを完了してから転用先目的に使用することが求められます。
3. 記録保存の義務
3.1 保存すべき記録の内容
承認後に治験等の目的で製造・輸入された医療用具を販売・授与する場合は、以下の記録を承認取得後3年間保存しなければなりません。
- 当該医療用具の製造(輸入)に関する記録
- 当該医療用具が承認の内容に適合していることを示す資料
- その他必要な記録
「製造(輸入)に関する記録」とは、製造ロット、製造日、製造数量、製造時の品質試験結果等を指します。 「承認の内容に適合していることを示す資料」とは、承認書仕様と製品の照合記録、品質試験成績書等です。
3.2 記録保存の実務的な整備
3年間の記録保存義務を適切に果たすためには、以下の実務対応が有効です。
製造段階での記録管理として、治験用製造から承認取得・販売に至るまでの過程を一元的に管理する記録システムを整備することが重要です。 治験開始前の製造記録、治験実施中の品質管理記録、承認申請・取得の記録、承認後の適合確認記録が連続して追跡できる状態が理想的です。
電子データによる記録保存が現実的であり、改ざん防止措置を講じた上で適切に管理することが求められます。
4. 実務対応のポイント
4.1 治験計画段階での準備
治験用製品を最終的に承認後に販売することを見据えた場合は、治験開始時から以下を整備しておくことが重要です。
- 承認申請予定の仕様と治験用製品の仕様の整合性確認
- 治験製造に関する製造記録・品質試験記録の保存体制の構築
- 承認取得後の適合確認手順の事前策定
特に、治験の過程で仕様変更が生じた場合は、治験用製品と最終承認仕様の差異を明確にし、当該製品が承認内容に適合するかどうかを慎重に判断する必要があります。
4.2 旧通知との比較
この通知の施行により、昭和60年7月8日薬監第43号「治験に用いられた器具器械の承認後の取扱いについて」は廃止されました。 旧通知と比較すると、今回の通知では以下の点が拡張されています。
旧通知は「治験」目的のみを対象としていましたが、新通知では「治験その他の試験研究」「社員訓練」「商品見本」「展示」の4目的が対象となりました。 また、目的間の転用手続きについても明確化されています。
4.3 輸入品への適用
この通知は「製造(輸入)された医療用具」を対象としているため、国内製造品と輸入品の両方に適用されます。 輸入品については、輸入販売業者が輸入に関する記録(通関書類、輸入検査記録等)を適切に保管し、承認内容との適合確認を行う必要があります。 また、外国製造業者からの品質証明書等も「承認の内容に適合していることを示す資料」として活用できます。
まとめ
本通知により、治験・社員訓練・商品見本・展示の目的で製造・輸入された医療用具については、承認内容との適合確認を満たすことで承認後の販売・授与が可能であることが明確化されました。一方で、仕様差異がある場合は販売不可となるため、承認審査過程での変更管理が極めて重要です。
また、販売・授与を行う場合には、製造記録・適合確認資料等の3年間保存義務が課されており、QMS体制の不備は重大なコンプライアンスリスクにつながります。特に、治験段階から承認後販売を見据えた記録管理・仕様整合性の確保が実務上の分かれ目となります。
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