概要
医療用具の承認申請後も臨床試験を継続できる扱いを正式に認めた通知です。対象は医療用具の製造販売承認申請を行う事業者で、平成11年9月1日付で厚生省医薬安全局審査管理課長から発出されました。申請後の追加データ収集が可能になり、治験参加患者への継続提供も差し支えないと整理されています。
ただし無条件ではありません。GCP相当の基準遵守、治験計画届の提出、申請時点での進捗状況の明示など、いくつかの要件を満たす必要があります。承認申請を予定している事業者は、申請計画と並行して継続試験の枠組みを設計しておくことが求められます。

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1. 背景と目的
1.1 通知発出の経緯
医療用具の承認申請には、薬事法第14条第3項に基づき臨床試験成績の資料提出が求められてきました。試験の実施基準は平成4年7月1日薬発第615号「医療用具の臨床試験の実施に関する基準について」(旧GCP相当)に定められています。倫理的配慮のもと科学的に適正に実施することが原則です。
一方、承認審査が長期化するなか、申請後も追加情報を収集したい場面は珍しくありません。代替治療がない患者に治験用具を提供し続けたいケースもあります。こうした実務上のニーズに応える形で、医薬品分野では平成10年12月1日医薬審第1061号により承認申請後の臨床試験継続が整理されていました。
1.2 医薬品ルールの医療用具への準用
本通知は医薬品の取扱いに準じ、医療用具にも同様の枠組みを適用するものです。承認申請で実施完了する従来型の運用に加え、申請後も継続できる選択肢が公式に位置づけられました。事業者は申請戦略の幅を広げられます。
1.3 通知の射程
対象は臨床試験成績が必要とされる医療用具全般です。クラスIIIやクラスIVなど、有効性・安全性の評価に治験データが不可欠な品目が中心となります。事務連絡として財団法人医療機器センター、日本医療機器関係団体協議会、在日米国商工会議所、欧州ビジネス協議会へも写しが送付されました。
2. 主要要件と事例
2.1 認められる継続試験の範囲
通知は2つのパターンで継続を認めています。
- 追加情報収集型: 承認申請後も安全性・有効性のデータを集める
- 患者継続提供型: 申請前の治験参加者で代替治療がない患者に、治験用具を継続提供する
後者は患者保護の観点から重要です。長期使用デバイスや代替手段が乏しい治療機器で典型的に発生します。たとえば心臓ペースメーカーの新規モデルや、特殊な人工弁、希少疾患向けの治療機器などが該当します。
2.2 申請資料での進捗開示
継続試験を行う場合、承認申請時点における治験の進捗状況を申請資料中で明らかにする必要があります。「どこまで終わっているか」「何例が継続中か」「終了見込みはいつか」を示すイメージです。審査側が全体像を把握できないと、提出データの位置づけを評価できません。
2.3 審査に耐えるデータ量の確保
申請時には、有効性・安全性の評価に足りる症例数と期間の試験成績を提出する必要があります。継続試験の存在を理由に申請時データを薄くすることは認められません。あくまで本体の臨床試験は申請時に完了相当のデータが揃っていることが前提です。
3. 実務対応と罰則
3.1 治験計画届と基準遵守
継続試験は薬事法第80条の3第2項に基づく治験計画届を事前に提出する必要があります。届出を欠けば違法な治験となり、データの信頼性も否定されます。実施基準は薬発第615号に従い、IRB審査・インフォームドコンセント・モニタリング体制を整えます。
3.2 中間データの提出時期
継続試験の試験成績は、その時点で取りまとめ可能な範囲のデータを承認までに審査センターへ提出します。提出先は国立医薬品食品衛生研究所・医薬品医療機器審査センター(現PMDA、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の前身)です。提出時期は個別品目ごとに審査センターの指示に従う運用です。
事業者側の判断で「まだ集計中なので後で」と先送りすることはできません。審査の進行に合わせて、求められたタイミングで中間取りまとめを出す必要があります。
3.3 承認後の市販後調査への移行
継続試験は原則として承認前に終了させます。とはいえ、承認時点で完了していない場合もあります。その際は同じ内容の臨床試験を使用成績等に関する市販後調査として引き続き実施できます。治験から市販後調査への切り替えにより、患者への治療継続とデータ収集の両立が可能です。
切り替えに当たっては、被験者への説明・同意取得の更新、試験計画書の改訂、市販後調査としての届出など、実務手続きが発生します。スムーズな移行には事前設計が欠かせません。
3.4 違反時のリスク
治験計画届を出さずに継続試験を行えば、薬事法違反として行政指導や業務停止の対象となります。データの信頼性が否定されれば、承認審査でも資料として採用されません。最悪の場合、申請の差し戻しや承認取消しもあり得ます。手続きの抜けは致命傷です。
まとめ
医療用具の承認申請後に臨床試験を継続する運用は、追加データ収集や患者への継続提供を可能にする重要な制度です。一方で、治験計画届の提出、GCP相当基準の遵守、申請資料での進捗開示など、実務上は高度な薬事対応が求められます。手続きを誤れば、データの信頼性否定や承認審査への影響につながるため注意が必要です。
特に、PMDA相談の進め方、継続試験から市販後調査への移行設計、症例データの提出タイミングなどは、品目特性や開発戦略によって最適解が変わります。クラスIII・IV医療機器やSaMDなど、高リスク機器では早期段階から申請戦略と治験継続計画を一体で設計することが重要です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の承認申請、PMDA対応、治験計画、QMS体制構築、市販後調査への移行支援まで実務ベースでサポートしています。 「承認申請後も治験を継続したい」「PMDAへの説明方法に不安がある」「市販後調査への切替設計を相談したい」といった場合は、ぜひお気軽にご相談ください。初回30分の無料相談も承っております。