概要
医療機器の非臨床試験の信頼性調査について、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)がQ&Aを全面改訂しました。令和7年12月25日付け薬機審長発第1238号として発出され、令和8年1月20日から施行されます。
対象は医療機器の承認申請を行う事業者、特に改良医療機器(臨床なし)と後発医療機器で信頼性調査を受ける可能性のある製造販売業者です。同日付の理事長通知(薬機発第9065号)と一体で運用されます。
主な改正点は6つで、副本等の提出方法の明確化、資料詳細目録の作成上の留意事項追記、ゲートウェイシステム提出時の発送伝票省略などが盛り込まれました。旧Q&A通知(令和4年12月28日 薬機審長発第1228001号)は本通知の施行に伴い廃止されます。
申請者は施行日までに、社内の調査対応手順書や提出フォーマットを新Q&Aに合わせて更新する必要があります。

1. 背景と目的
1.1 改正の経緯
医療機器の非臨床試験に関する適合性書面調査は、承認申請資料の信頼性を確認する重要なプロセスです。旧Q&A通知は令和4年12月28日に発出され、約3年間運用されてきました。
この間、申請者からの照会や運用実態をふまえ、提出方法や記載事項に解釈の幅が生じていた論点が複数ありました。今回の改正は、PMDAが理事長通知を改めて発出することに合わせ、Q&Aを実務に即した内容へ整備したものです。
1.2 改正の目的
改正の狙いは大きく3つあります。第一に、副本等と根拠資料等の提出方法を明確化することです。第二に、資料詳細目録の作成精度を高めることです。第三に、ゲートウェイシステム利用時の手続きを簡素化することです。
これらにより、申請者とPMDA双方の事務負担が軽減され、調査対応のばらつきも抑えられます。
1.3 旧通知との関係
本通知の施行日は令和8年1月20日で、施行と同時に旧Q&A通知は廃止されます。施行日をまたいで進行中の案件については、PMDA医療機器調査部に個別確認するのが安全です。
2. 主要な改正ポイント
2.1 副本等の提出方法の明確化(Q2)
副本等および根拠資料等の提出方法は、郵送・宅配便またはゲートウェイシステムのいずれかと明記されました。これらが使えない場合は、医療機器調査部(電話03-3506-9590、メール md_nonclinical@pmda.go.jp)へ連絡します。
申請書がオンライン提出されている場合は、副本等の提出は不要です。ただし審査担当からの連絡後、信頼性調査依頼書(別紙様式3)と副本等提出書(別紙様式4)をゲートウェイシステム経由で提出する必要があります。
このとき使うゲートウェイの機能は、四課長通知別添要領2.(3)a(a)のFD申請手続き用機能です。他の信頼性調査用資料の提出機能とは異なるため注意が必要です。別紙様式4の「申請書等はオンライン提出」のチェックボックスにチェックを入れ、別紙様式3の備考欄「オンライン申請品目」を丸で囲みます。
2.2 資料詳細目録の作成上の留意事項追記(A4)
資料詳細目録は、調査対象となった承認申請資料の根拠資料の目録です。承認申請時に提出した資料の一覧ではない点に注意が必要です。
新Q&Aで明確化されたのは次の4点です。
- 根拠資料は記載例以外のものもすべて記載する
- 電磁的記録の場合は媒体の種類など資料情報を記載する
- ゲートウェイシステム経由で提出する根拠資料は「分量」欄の「冊」欄にその旨を記載する
- 「調査対象の資料名」欄には、別紙様式1に記載された資料名を転記する
特に4点目は記載漏れが起きやすい論点で、社内チェックリストへの反映が望まれます。
2.3 ゲートウェイ提出時の発送伝票が不要に(A10)
旧通知では、根拠資料等を送付する際に返却用の発送伝票の同封が求められていました。新Q&Aでは、ゲートウェイシステム経由で提出した場合、発送伝票や特定封筒郵便物の同封は不要と明記されました。
郵送・宅配便で送った場合は従来どおり、着払いの発送伝票か特定封筒郵便物の同封が必要です。根拠資料の説明文書や参考資料も含めて返却対象になることも併せて明記されました。
2.4 資料詳細目録の確認欄の変更(記載例1)
記載例1の「送付/受領の確認欄」の運用が変わりました。「申請者」の「受領」欄が削除され、「申請者」の「送付」欄に送付日と氏名を記載する形に整理されました。
根拠資料等の返却時にはPMDAが資料詳細目録を同封するため、申請者は受領内容を確認します。様式変更に伴い、社内の送付管理票や受領記録も合わせて見直しが必要です。
3. 実務対応のポイント
3.1 試験の記録に関する具体例(Q5、Q6)
「試験の記録」とは、実験ノート、ワークシート、測定機器の出力(チャート等)などです。試験実施時に発生する試験結果を正確に記録したもので、データ品質が確保された状態で保管されている必要があります。
実験ノートを介さず試験報告書に直接記入している場合や、測定機器から直接電磁的記録として取り込んでいる場合も「試験の記録」に該当します。この場合は試験報告書等を根拠資料として提出し、試験実施から試験報告書作成までの手順をQC/QA体制を含めて説明した資料を添付します。説明資料は記載例2のフロー図を参考に作成します。
試験の記録には、試験実施者の氏名、試験実施日、使用機器の型式・シリアル番号、被験検体のロット番号などが確認できることが求められます。記録自体にこれらが含まれていない場合、別資料で補完して提出します。
3.2 機器の管理・点検の記録(Q7)
特殊な測定機器を使う場合や、検量線で測定結果の妥当性を示す場合は、校正証明書や校正の記録が必要に応じ求められます。日常点検で信頼性を担保している場合は点検記録が対象です。
提出する記録は試験実施時に有効であったものに限られます。試験後に再校正した記録を流用するのは不適切です。
3.3 提出期限と遅延時の対応(Q8)
申請者は、資料詳細目録および根拠資料等の提出連絡を受けてからおおむね4週間以内に提出します。4週間以内に提出できない場合や、信頼性調査依頼書に記入した提出予定時期から大きく変更が生じた場合は、4週間を超える前に速やかに医療機器調査部へ連絡します。
遅延の事後報告ではなく、事前の相談が原則です。
3.4 様式の入手先
別紙様式2〜6および別紙様式8は、PMDAウェブサイトの「各種様式ダウンロード」から入手します。施行日前後に様式が差し替わる可能性があるため、案件着手時に最新版を取得します。
まとめ
今回の「医療機器の非臨床試験信頼性調査Q&A」改正により、副本等の提出方法や資料詳細目録の作成ルール、ゲートウェイシステムの運用方法がより明確化されました。特に、医療機器の承認申請における適合性書面調査では、根拠資料の整備状況や試験記録のトレーサビリティがこれまで以上に重要となります。施行日である令和8年1月20日までに、社内手順書や提出様式、チェックリストの見直しを進めておくことが重要です。
また、改良医療機器や後発医療機器の承認申請では、非臨床試験の信頼性調査への対応が審査期間や照会対応に影響する可能性があります。資料詳細目録の記載方法や根拠資料の管理方法、ゲートウェイシステムによる提出手続きに不備があると、追加説明や資料提出を求められる可能性もあります。申請前の段階から調査対応を見据えた準備が求められます。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の承認申請支援をはじめ、非臨床試験資料の信頼性確認、適合性書面調査対応、PMDA相談資料のレビューまで幅広く支援しております。「自社の資料で信頼性調査に対応できるか確認したい」「承認申請前に第三者の視点でチェックしてほしい」といった場合は、お気軽にお問い合わせください。