概要

令和8年4月20日、厚生労働省医薬局の医薬品審査管理課と医療機器審査管理課から事務連絡が発出されました。同日付の課長通知(医薬薬審発0420第4号・医薬機審発0420第1号)を補足するQ&Aです。示された問答は1問のみ。しかし、実務で判断が分かれやすい学歴要件の解釈を埋める内容になっています。

対象は、生物由来製品の保管のみを行う製造所を持つ製造業者です。課長通知は令和8年5月1日から適用されます。保管専用の製造所で製造管理者を選任する場合、候補者の幅が大きく広がりました。今回のQ&Aは、新しく追加された要件のうち「専門の課程を修了した」の判定方法を具体化するもの。人事配置の検討は5月1日を待たずに始められます。

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1. 背景と目的

1.1 生物由来製品の製造管理者という規制

生物由来製品の製造業者には、製造所ごとに製造管理者を置く義務があります。根拠は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第68条の16第1項。ここでいう製造管理者は、医師、細菌学的知識を有する者その他の技術者とされ、厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。一般の医薬品や医療機器の責任技術者とは別枠の、生物由来製品に固有の仕組みです。

具体的な要件は、平成15年5月15日付け医薬発第0515017号(局長通知)のⅢ(5)で示されてきました。従来の対象は次の4類型です。

  • 医師、医学の学位を持つ者
  • 歯科医師であって細菌学を専攻した者
  • 細菌学を専攻し修士課程を修めた者
  • 大学等で微生物学の講義及び実習を修得し、その後3年以上の製造等の経験を有する者

いずれも細菌学・微生物学に軸足があります。保管しか行わない倉庫型の製造所でも同じ要件が課され、人材確保のハードルが高いという課題がありました。

1.2 制度部会のとりまとめが起点

見直しの直接のきっかけは、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」です。令和7年1月10日に公表されました。この中で、保管のみを行う製造所の製造管理者要件について、細菌学的知識を有する者に加え、薬学等の医薬品等に係る必要な知識を有する技術者を追加すべきとされています。

保管工程では微生物学的な操作を伴いません。求められるのは温度管理や記録管理、品質システムの適切な運用です。リスクに見合った要件へ整理し直したのが今回の課長通知になります。

1.3 対象となる「保管のみを行う製造所」

課長通知の対象は2類型に限定されています。

1つ目は、医薬品(体外診断用医薬品を除く)、医薬部外品又は化粧品である生物由来製品の製造所。保管以外に包装、表示その他の製造行為や試験検査を行わないことが条件です。試験検査には、自社の他の試験検査設備や他の試験検査機関を利用する場合も含みます。なお、保管のために必要な検査等は「保管」の範囲に入ります。

2つ目は、医療機器又は体外診断用医薬品たる生物由来製品の製造所。こちらは国内における最終製品の保管のみを行う製造所が該当します。包装や表示を行っていれば対象外です。自社の製造所が当てはまるかは、許可・登録上の区分だけでなく実際の作業実態で判断してください。

2. 追加された要件とQ&Aの論点

2.1 ⑤から⑧が新たに承認対象へ

課長通知は、従来の①〜④に加えて次の4類型を承認の対象としました。

  • ⑤ 薬剤師
  • ⑥ 大学等で、歯学、薬学、獣医学、化学、生物学又は農学に関する専門の課程を修了した者
  • ⑦ 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、医学、歯学、薬学、獣医学、化学、生物学又は農学に関する専門の課程を修了した後、3年以上の生物由来製品若しくはそれと同等の保健衛生上の注意を要する医薬品、医療機器等の製造等に関する経験を有する者
  • ⑧ 医療機器については、大学等で、物理学、工学、情報学、金属学、電気学又は機械学に関する専門の課程を修了した者

薬剤師が単独で認められた点と、医療機器で工学系出身者が認められた点が大きな変化です。医療機器の保管製造所であれば、工学系のバックグラウンドを持つ人材を製造管理者の候補にできます。

2.2 Q&Aが答えたのは⑦の「専門の課程」

今回のQ&Aが取り上げたのは⑦です。「専門の課程を修了した」とは具体的にどのような要件を満たした者か、という問いが立てられました。⑦は大学卒業を前提としない類型のため、学歴の証明方法が曖昧になりやすい部分でした。

回答は2段構えになっています。

第一に、原則として学科名で判断します。学科名から医学、歯学、薬学、獣医学、化学、生物学、農学のいずれかが読み取れれば足ります。

第二に、学科名から専門の課程と判断できない場合の救済が示されました。上記7分野の専門科目を12単位以上取得していれば、対象に含めて差し支えないという整理です。ただし、製造管理者としての業務に支障がないと認められることが前提になります。

2.3 12単位に数えない科目

単位数のカウントには除外規定があります。次の3種類は専門科目に含めません。

  • 教養科目
  • 実験・実習に関する科目
  • 教職等の資格に必要な科目

一般教養として履修した化学や、教員免許のために取った理科系科目は算入できません。実験・実習が外れる点も見落としやすいところ。成績証明書を上から順に足していくと、単位数を過大に計上してしまいます。

3. 実務対応

3.1 まず自社の製造所を仕分ける

最初にやるべきは、生物由来製品を扱う製造所の棚卸しです。保管のみの製造所を抽出し、課長通知の2類型に当てはまるかを確認します。包装や表示を併せて行っている製造所は対象外。緩和された要件は使えません。

3.2 候補者の資格証憑を整える

⑤や⑥に該当する候補者なら、免許証や卒業証明書で説明できます。⑦を使う場合は、卒業証明書に加えて成績証明書が必要です。学科名で判断できないケースでは、科目ごとに分野と単位数を整理した一覧表を作っておくと、承認手続での説明が容易になります。

⑦にはもう一つ、3年以上の実務経験という要件があります。生物由来製品、またはそれと同等の保健衛生上の注意を要する医薬品・医療機器等の製造等の経験です。経歴書で在籍期間と担当業務を具体的に示してください。

3.3 承認手続そのものは省略されない

製造管理者は、厚生労働大臣の承認を受けて設置します。要件を満たす人材を見つけただけでは足りません。要件が緩和されても、承認手続が不要になるわけではない点に注意してください。適用は令和8年5月1日から。同日以降の新規選任や交代で新しい要件を使えます。

3.4 判断に迷う場合

学科名の読み替えや単位の算入可否は、最終的に承認する側の判断に委ねられます。境界事例では、事前に都道府県の薬務主管課へ相談するのが安全です。Q&Aは「製造管理者としての業務に支障がないと認められる場合」という条件を重ねています。単位数だけで自動的に決まる仕組みではありません。

まとめ

令和8年5月1日から、生物由来製品の保管のみを行う製造所では、製造管理者として選任できる人材の範囲が広がります。 薬剤師に加え、化学・生物学・農学などの専門課程を修了した者や、医療機器では工学・情報学・電気学・機械学などを修了した者も候補となります。 また、今回のQ&Aでは「専門の課程」の判断について、学科名を原則としつつ、一定の場合には専門科目を12単位以上取得していることでも要件を満たし得ることが示されました。

一方で、すべての保管製造所に新しい要件が適用できるわけではありません。 包装・表示・試験検査などを行っている場合の取扱いや、学科名から専門性を判断できない場合の単位確認、3年以上の実務経験の証明など、実際の選任では個別の確認が必要です。特に、教養科目・実験実習・教職等の資格に必要な科目は12単位の算定対象とならないため、候補者の成績証明書を精査しておくことが重要です。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、生物由来製品に関する薬事対応をはじめ、製造所の業務内容が今回の要件緩和の対象となるかの整理、製造管理者候補者の要件確認、必要資料の整理、製造業許可・登録や薬機法に関する各種相談を支援しています。「自社の保管製造所は対象になるのか」「この学歴・履修科目で製造管理者になれるのか」「12単位の算定方法が分からない」など、生物由来製品の製造管理者の選任・変更でお困りの場合は、ぜひ弊社までお問い合わせください。

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