概要

平成12年3月28日付け医薬審第526号通知により、整形インプラント製品の承認申請における臨床試験成績の添付要否が明確化されました。対象は人工関節、人工骨、骨接合材などを製造販売する事業者です。吸収性材料・金属製・セラミックス製の3区分について、既承認品との同等性が証明できる場合は臨床試験成績の添付が不要となります。

「自社の整形インプラントは新規申請で臨床試験が必要か」を判断する際、最初に確認すべき通知の一つです。既承認品との同等性を示す資料を整えれば、臨床試験を省略できる経路が用意されていることを押さえてください。

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1. 背景と目的

1.1 通知発出の経緯

医療用具の承認申請に必要な臨床試験成績の取扱いは、順次見直しが行われてきました。整形インプラント製品のうちセラミックス製の一部は、平成11年7月9日医薬審第1043号通知の別紙1に例示されていました。これは「クラスⅢに該当する医療用具のうち、原則として臨床試験成績の提出が必要な医療用具」の例示です。

この区分は新医療用具に該当する製品を念頭に置いたものでした。一方、既承認品と同等であることを科学的に証明できる場合まで一律に臨床試験を求めるのは、開発の合理性や患者アクセスの観点から過剰な負担となります。

1.2 通知の目的

本通知は、整形インプラント製品の3カテゴリについて、同等性証明により臨床試験を省略できる範囲を明示することを目的としています。平成11年7月9日医薬発第827号通知の別紙3「(5)その他の医療用具」とみなして取扱う、という位置づけが与えられました。

ただし同等性の証明が十分でないと判断された場合は、臨床試験成績の添付が改めて求められます。各項で要求される資料も、合理的理由が説明できれば省略が可能です。

2. 主要要件と事例

2.1 吸収性材料を用いた整形インプラント製品

対象材料は限定的で、L乳酸またはディオキサノンのいずれかのみを構成モノマーとするホモポリマーに限られます。L乳酸とディオキサノンを組み合わせたコポリマーは対象外です。

臨床試験を省略できるのは次の2パターンです。

  • 申請品目と同等の材料・同等の形状・同じ使用目的の既承認品が存在する場合
  • 申請品目の形状が下表の範囲内で、同じ使用目的の既承認品(吸収性材料)が存在する場合

形状と使用目的の組合せは次のとおり規定されています。

形状使用目的
ピン骨接合用、顎顔面補綴用
プレート骨接合用、顎顔面補綴用
ロッド骨接合用
スクリュー骨接合用、靱帯・軟部組織固定用
アンカー靱帯・軟部組織固定用
ボタン靱帯・軟部組織固定用
ワッシャー骨接合用

例えばL乳酸ホモポリマー製の骨接合用スクリューを新規申請する場合、既承認のL乳酸ホモポリマー製スクリュー(骨接合用)との形状・性能の同等性を示せば、臨床試験は不要となります。

2.2 金属製整形インプラント医療用具

対象材料はチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼の3種類です。臨床試験を省略できる場合は次の2パターンです。

  • 既承認の金属材料と同一材料で、他の既承認金属製製品と同等の形状・同じ使用部位の場合
  • 既承認の金属製品と同等の形状・同じ使用部位で、製造工程の一部変更または材料組成の一部変更にとどまる場合

ただし鋳造合金から鍛造合金への変更、鍛造合金から鋳造合金への変更は「製造工程の一部変更」には該当しません。冶金組織が大きく変わるためです。例えばチタン合金製プレートで、既承認品と同じ使用部位・同等形状のまま微量元素の組成だけを調整した申請であれば、本取扱いの対象になります。

2.3 セラミックス製整形インプラント製品

対象材料はアルミナセラミックスとジルコニアセラミックスです。いずれの場合も臼蓋カップは本取扱いの対象に含まれません

臨床試験を省略できる場合は次の3パターンです。

  • 既承認のアルミナまたはジルコニア製人工股関節ステム用ヘッドと同一材料で、他の既承認人工関節と使用部位が同一・同等形状の場合
  • 材料規格(アルミナ:ISO 6474またはASTM F603-83、ジルコニア:ISO 13356またはASTM F1873-98)に適合する人工股関節骨頭
  • 既承認のアルミナまたはジルコニア製人工関節の「材料の成分割合」または「製造方法」を変更した場合(使用部位は同一、形状は同等であること)

「材料の成分割合の変更」は微量配合成分の若干の割合変更を指し、主要成分の大幅な変更は含まれません。

3. 実務対応と罰則

3.1 同等性を示す資料の構成

3区分とも、既承認品との同等性は次の3資料で示します。

  1. 原材料に関する資料(既承認品と同一であることの確認資料、または物理化学的試験成績および生物学的安全性試験ガイドラインに従った試験成績)
  2. 形状の同等性に関する資料
  3. 性能の同等性に関する資料(機械的試験、分解試験、強度試験等)

セラミックス製では、原材料資料の選択肢に「材料規格がISOまたはASTMに該当することの確認資料+生物学的安全性試験成績」が加わります。

3.2 試験項目の選択と参考規格

吸収性材料は別紙1に分子構造(IR・NMR・DSC・X線回折)、分子量(GPC)、純度、機械的試験(曲げ・衝撃・引張・圧縮・剪断・捩り)、in vitro実時間分解試験などが例示されています。観察期間は少なくともインプラントの90%が吸収され骨に置換されるまでとされます。

金属製は別紙2に用途別の試験項目が示されています。人工関節は荷重・腐食・疲労特性・繰り返し摩耗試験などの長期埋入を想定した試験を実施します。骨接合材や脊椎固定材料は、抜去前提のため比較的短期の強度試験を中心に組みます。

セラミックス製は別紙3にアルミナ・ジルコニアごとの規格値が示されています。具体的にはかさ密度、化学組成、平均結晶粒径、二軸曲げ強度、弾性係数、静荷重圧縮強度、耐摩耗性などです。素材・製法の違いで強度に大きな差が生じるため、同等性試験はこの点を勘案して設計します。

3.3 同等性が認められなかった場合のリスク

同等性の証明が不十分と判断された場合、臨床試験成績の添付が改めて要求されます。新規の臨床試験を追加で実施することになり、開発期間・費用が大幅に膨らみます。

そのため対象材料・形状・使用部位の合致確認、試験項目の選定根拠、既承認品の特定とデータ取得は、申請前の段階で慎重に行ってください。試験設定や選択根拠の説明が求められるため、試験計画書の段階から論理を整えておくのが現実的です。

まとめ

整形インプラント製品の承認申請では、既承認品との同等性を適切に証明できれば、臨床試験成績の添付を省略できる可能性があります。特に人工関節・骨接合材・人工骨などは、材料、形状、使用部位、性能試験の設計が審査上の重要ポイントとなります。一方で、同等性の整理が不十分な場合は追加試験や臨床試験が必要となり、開発期間やコストが大幅に増加するリスクがあります。

また、吸収性材料・金属製・セラミックス製では、それぞれ求められる試験項目や参考規格(ISO・ASTM)が異なります。既承認品の選定、比較戦略、試験設定の根拠整理を申請初期段階から行うことが、PMDA審査を円滑に進めるうえで重要です。特に整形インプラントは長期埋入製品が多く、材料変更や製造工程変更の影響評価も慎重に検討する必要があります。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、整形インプラント製品の薬機法対応、承認申請資料作成、同等性評価戦略、QMS体制整備、PMDA相談対応まで実務支援を行っています。「臨床試験が必要か判断できない」「既承認品との比較方法に悩んでいる」「試験項目の設定根拠を整理したい」といった場合も対応可能です。整形インプラントの承認申請やPMDA対応でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

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