概要
救急絆創膏は、平成10年3月30日の薬事法施行規則改正で品目ごとの承認を要しない医療用具になりました。承認が不要になったぶん、製品の品質をどう担保するかが業界の課題でした。本通知は、その答えとして日本衛生材料工業連合会(衛材連)が作成した「救急絆創膏自主基準」を厚生省が認め、各都道府県に周知した事務連絡です。対象は救急絆創膏の製造業者・輸入販売業者で、承認不要の代わりにこの自主基準に従って品質を確保することが求められます。
ただし、創傷面の消毒等のために医薬品が付着しているもの(いわゆる薬剤付き絆創膏)は対象外です。

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1. 背景と目的
1.1 承認不要化の経緯
平成10年3月30日厚生省令第43号により、薬事法施行規則別表第1に救急絆創膏が掲げられました。これにより、救急絆創膏は品目ごとの承認取得が不要となります。リスクの低い汎用医療用具を承認対象から外し、規制を合理化する流れの一環です。
1.2 自主基準が必要な理由
承認不要になっても、不良品が市場に出れば患者の創傷面に直接触れる製品である以上、安全性は損なわれます。そこで業界団体である衛材連が製品の品質を業界全体で底上げするために自主基準を制定しました。本通知は、その内容が「適当」と国に認められ、行政側からも事業者への周知が図られた点に意義があります。
1.3 通知の位置づけ
事務連絡(医療用具審査No.7、平成11年10月28日)として、各都道府県衛生主管部局の薬務主管課宛に発出されました。写しは医療機器センター、日本医療機器関係団体協議会、在日米国商工会議所医療機器小委員会、欧州ビジネス協議会医療機器委員会にも送付されています。
2. 主要要件と事例
2.1 適用範囲と構成
自主基準が対象とする救急絆創膏は、軽微な創傷面の保護、手術後の縫合部の被覆保護、注射針等の穿刺部の被覆保護を目的とした製品です。具体的には切り傷・すり傷・さし傷・かき傷・靴ずれ等が想定されます。構造はパッド・粘着テープ・セパレーター(剥離紙)の3要素からなります。市販の絆創膏のほとんどがこのカテゴリに入ります。
2.2 物理的要求事項(粘着テープ)
粘着テープには5項目の物理試験が課されます。
- 外観: 目視で破れ・異物付着がないこと
- 寸法・: 任意に抜き取った試料を測定し、規格値に適合していること
- 厚さ:ダイヤルゲージ等を用いて測定し、均一な厚みが維持されていること
- 引張強さ: 日本薬局方の絆創膏試験法、またはJIS Z 0237に準拠
- 粘着力: 日局法、JIS Z 0237の180度引きはがし法、傾斜式ボールタック法のいずれかで適合
試験は温度23±2℃、相対湿度65±5%の標準状態で行うのが原則です。
2.3 化学的要求事項
粘着テープ・パッドそれぞれに溶出物試験(pH、重金属、過マンガン酸カリウム還元性物質、蒸発残留物)が定められています。パッドはさらに蛍光増白剤の不使用と、殺菌剤の濃度上限(医薬品で認められた有効濃度下限値の1/5以下)が要求されます。創傷面に触れる以上、化学的安全性は譲れない部分です。
2.4 生物学的要求事項
粘着剤は健常皮膚に貼付するため、化粧品・医薬部外品製造申請ガイドブックのヒトパッチ試験法で皮膚刺激(紅斑・浮腫等)を確認します。パッドは損傷表面に接触するため、薬機第99号通知に基づく生物学的試験(細胞毒性・感作性・刺激性皮内反応試験)を実施します。既に使用前例のある材料はその限りではありません。
2.5 無菌性の保証
滅菌品については、医薬監第1号「滅菌バリデーション基準」、またはISO 11135(EOG滅菌)・ISO 11137(放射線滅菌)に従い無菌性保証を行います。バリデーションと日常管理の枠組みがそのまま適用される形です。
3. 実務対応と罰則
3.1 表示事項のチェック
二次包装(最小販売単位)には次の8項目を表示します。一次包装で流通する場合は一次包装に表示します。
- 製造業者・輸入販売業者の氏名・住所
- 医療用具許可番号
- 販売名
- 数量(入り数)
- 滅菌品で「滅菌済」表示する場合は品質保持期限
- 製造番号または製造記号
- 使用方法
- 使用上の注意
このうち医療用具許可番号と滅菌済表示の品質保持期限は見落としやすいので注意が必要です。
3.2 自社規格の設定と試験記録
自主基準は試験方法を規定していますが、規格値そのものは事業者がロット内・ロット間のばらつきを把握して設定します。JIS Z 9001等の抜取検査通則に従い、合理的な根拠と試験記録を残しておくことが重要です。第三者監査や行政の立入りに備える意味でも、規格値設定の根拠資料は必須です。
3.3 自主基準と異なる規格を採用する場合
別紙「11.追補」に明記されているとおり、自社で別途規格を設けることは可能です。ただし適切な根拠が説明できる資料を整備しておくことが前提条件です。試験法の置き換えや規格値の緩和を行う場合は、なぜそれで品質が担保できるかを文書で残しておきます。
3.4 違反時のリスク
承認不要医療用具であっても、薬事法上の品質確保義務は外れません。自主基準を満たさない製品で健康被害が起これば、製造販売業者の責任が問われます。回収・業務改善命令の対象となるリスクもあるため、自主基準への適合は事実上の必須要件と理解すべきです。
まとめ
救急絆創膏は承認不要医療用具となった一方で、事業者には自主基準に基づく品質管理と記録管理が強く求められています。特に、物理・化学・生物学的試験の実施、滅菌バリデーション、表示事項の整備は、製品安全性と薬機法対応の両面で重要な実務ポイントです。承認不要だから対応が不要になるわけではなく、むしろ自社責任で品質を説明できる体制構築が不可欠になります。
また、救急絆創膏のような低リスク医療機器であっても、自主基準と異なる規格を採用する場合には合理的根拠資料や試験記録が必要です。行政対応・監査・回収リスクを見据え、設計管理・試験計画・表示確認を含めた総合的な薬事・品質対応を進めることが重要です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、救急絆創膏を含む一般医療機器・承認不要医療機器について、薬機法対応、自主基準の整理、試験項目の検討、表示レビュー、QMS構築支援まで実務ベースでサポートしています。自主基準への適合性確認やPMDA対応、製品仕様・試験計画の整理でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。