概要

この通知は、植込み型心臓ペースメーカと導線(リード)の承認申請における臨床試験データ提出の取扱いを整理したものです。クラスIVの高リスク医療用具であっても、自社の承認実績や非臨床データで有効性・安全性を評価できる場合は、臨床試験成績の提出を省略できる道が示されました。

対象はペースメーカおよびリードを開発・申請する医療機器メーカーです。既承認自社製品の機能改良や、診断用機能の追加といった一定範囲の変更であれば、臨床試験を新たに実施せずに申請できます。一方で、新たな基本的機能を追加する場合は、原則として臨床試験成績の添付が引き続き必要です。

申請担当者は、自社の改良が「機能変更なし」「基本的機能の範囲内変更」「診断用機能の追加」のどれに該当するか見極め、必要書類を整理することが求められます。

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1. 背景と目的

1.1 通知の経緯

植込み型心臓ペースメーカは、徐脈性不整脈の治療に用いられる代表的なクラスIV医療用具です。平成11年7月9日付の医薬発第827号「医療用具の承認申請について」では、新構造医療用具以外でも原則として臨床試験成績の提出が必要とされていました。

平成11年12月28日付の医薬発第1439号で、ペースメーカの非臨床試験ガイドラインが国際整合の形で示されました。40年以上の臨床使用実績と技術蓄積があることも踏まえ、臨床試験成績の代わりに他資料で評価できる範囲を明確化したのが本通知です。

1.2 通知の目的

目的は、臨床試験を必須とすべき範囲と、非臨床データで代替できる範囲の線引きを示すことにあります。各社が長年蓄積してきた開発実績を活用し、合理的に申請手続きを進められる枠組みを提供しています。

ただし、いずれの場合も「示された資料で臨床的な有効性・安全性が評価できないとき」は臨床試験成績の添付が必要です。資料省略はあくまで原則であり、個別判断が前提となる点に留意が必要です。

2. 主要要件と事例

2.1 機能区分の定義

通知では、ペースメーカの機能を3つに区分しています。

  • 基本的機能:徐脈ペーシングに関係する機能。モード、出力、感度、極性、ブランキング、不応期、A-V間隔がこれに該当する
  • 治療的機能:出力制御に影響を及ぼす付加機能。レート応答、ヒステリシス、モードスイッチング、抗頻拍ペーシング等
  • 診断用機能:治療に直接影響しない情報記録・測定機能。イベントカウンタ、ホルター、リードインピーダンス測定等

別紙には基本的機能の数値目安(基本レート30-180ppm、パルス振幅0-10V、心房感度0.1-25mV等)と、付加機能の具体例が網羅されています。申請時はこの区分に沿って自社製品の機能を整理することが出発点となります。

2.2 臨床試験省略が可能な3類型

以下のいずれかに該当すれば、原則として臨床試験成績の提出は不要です。

  • ア. 機能変更なし:既承認自社製品と基本的機能、治療的機能、診断用機能のいずれも変更がない場合
  • イ. 基本的機能の範囲内変更:自社製品の基本的機能変更で、変更後の値が他社含めた既承認品の範囲内にあり、治療的機能に影響を与えない場合
  • ウ. 診断用機能の追加・変更:治療的機能に影響を及ぼさない診断用機能の追加または変更の場合

イの場合、基本的機能の変更が治療的機能に影響を与えないことの説明が必要です。基本的機能を新たに追加する場合は、その動作確認のための臨床試験成績の添付が求められます

2.3 治療的機能追加とリードの取扱い

既承認自社製品に「発生頻度が極めて低い事象」への治療的機能を追加した場合は別の扱いになります。非臨床試験と文献により有効性・安全性・品質を科学的に評価できるなら、臨床試験成績の添付は不要です。判断理由を簡潔にまとめ、根拠資料を添付することが条件となります。

リードおよびアダプターについては、既承認製品(自社・他社問わず)との同等性を説明できれば、原則として臨床試験成績は不要です。本体とは別の柔軟な扱いが認められています。

3. 実務対応と罰則

3.1 申請書への記載事項

承認申請書の「形状、構造及び寸法」欄には、申請品目の概要として基本的機能、治療的機能、診断用機能のそれぞれにどのような機能を持つかを記載します。別紙の機能リストを参照しながら自社製品の機能を網羅的に整理しておくと、審査側の理解も得やすくなります。

臨床試験を省略する場合でも、申請品目の原型となった既承認品の臨床試験成績は添付が必須です。さらに申請品目と既承認品との相違を明らかにする説明資料も合わせて準備します。

3.2 臨床試験を行う場合の症例数

臨床試験が必要な場合、症例数・施設数・観察期間は科学的妥当性に基づいて設定します。3.(1)イの「基本的機能の動作確認」を目的とした臨床試験では、少なくとも2施設で各3症例以上、植込み後1ヶ月前後のフォローアップ評価が求められます。

これは新規の有効性評価ではなく、既存範囲内の機能動作確認という位置づけです。フル規模の臨床試験を要求しない代わりに、最低限のクリニカルエビデンスで担保する考え方が示されています。

3.3 再審査の判断

再審査は臨床試験の実施の有無に関わらず、ペースメーカとして承認前例のない新たな基本的機能または治療的機能を追加した製品について承認時に再審査期間が指定されます。

総合的に評価して既承認品と比較して新規性がないと判断される場合は、再審査の対象外となる可能性もあります。新機能搭載製品を計画する事業者は、再審査義務の発生を前提に開発スケジュールを組む必要があります。

まとめ

植込み型心臓ペースメーカの承認申請では、改良内容によっては臨床試験を省略できる可能性があります。特に「基本的機能の範囲内変更」や「診断用機能の追加」に該当するかどうかの判断は、PMDA審査対応における重要な分岐点です。一方で、新たな基本的機能や治療的機能の追加では、臨床試験や再審査の要否判断が複雑化し、非臨床データや既承認品との比較資料の作り込みが申請成否を左右します。

また、ペースメーカやリードはクラスIVの高度管理医療機器であり、機能区分の整理、同等性説明、臨床評価ロジック、申請資料の整合性まで、高度な薬事対応が求められます。「どこまでなら臨床試験不要と判断できるのか」「PMDAへどのように説明すべきか」で悩む企業も少なくありません。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、植込み型心臓ペースメーカ・リードを含むクラスIII・IV医療機器について、承認申請戦略の立案、PMDA相談対応、臨床評価資料・比較資料作成、QMS体制整備まで総合的に支援しています。ペースメーカ改良時の臨床試験要否判断や申請資料作成でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください

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