概要
令和8年5月1日から、医療機器と体外診断用医薬品の条件付承認制度の運用が新しくなります。根拠は医薬機審発0331第23号(令和8年3月31日、厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長通知)です。この通知により、平成29年の革新的医療機器条件付早期承認制度の通知と、令和2年課長通知(薬生機審発0831第2号)は廃止されます。
条件付承認制度は、重篤で代替治療がない疾患などに対し、必要性の高い製品を迅速に届けるための仕組みです。新たな臨床試験を実施せずに承認申請できる代わりに、市販後のデータ収集とリスク管理を条件として課します。今回の改正では対象品目が2つの類型に整理され、相談から承認後評価までの手続きが明確化されました。適用は令和8年5月1日以降です。

1. 背景と目的
1.1 制度の位置づけ
条件付承認制度は、令和元年の改正法(令和元年法律第63号)で医薬品医療機器等法に位置づけられました。その後、令和2年課長通知により運用されてきました。今回、令和7年の改正法(令和7年法律第37号)で関係規定が見直され、これを踏まえて取扱いが更新されました。
1.2 目的
目的は、有効性と安全性を確保しつつ、重篤かつ代替治療がない疾患などに必要な製品を迅速に提供することです。臨床データが限られる段階でも、一定の安全性と有効性が合理的に予測できる場合に承認へ道を開きます。その代わり市販後のリスク管理でデータを補完します。
2. 主要要件と2つの類型
2.1 類型1の要件
類型1は、次の3要件すべてを満たす医療機器等が対象です。
第一に、希少疾病用・先駆的・特定用途のいずれかの指定を受けている、またはその他医療上特に必要性が高いと認められることです。必要性が高いとは、生命に重大な影響がある疾患などを対象とし、かつ既存治療がない、または既存治療より高い有効性・安全性が期待されることを指します。
第二に、適切な臨床データで一定の安全性が示され、効能・性能を有すると合理的に予測できることです。
第三に、関連学会と連携して適正使用基準を作成でき、市販後のデータ収集・評価計画を具体的に示せることです。
2.2 類型2の要件
類型2は医療機器のみが対象で、次の4要件すべてを満たすものです。
第一に、焼灼など物理的機能で人体の構造・機能に影響を与える機器で、必要性が高いことです。
第二に、既存の臨床データで直接評価されていない適用範囲について、外挿により評価できる臨床データを示せることです。
第三に、新たな臨床試験なしで適正使用を確保できると合理的に説明できることです。
第四に、関連学会と連携した適正使用基準の作成と、市販後のデータ収集・評価計画の提示ができることです。
2.3 該当性概要の作成
いずれの類型でも、要件該当性を示す「該当性概要」を別紙様式で作成します。様式は日本産業規格A4で、公表資料として用いる前提で作ります。対象疾患の重篤性、既存治療との差異、臨床データの要旨、関連学会との検討状況などを記載します。
3. 実務対応
3.1 相談から申請までの流れ
まず総合機構(PMDA)の開発前相談を申し込みます。該当性概要をもとに、厚生労働省医療機器審査管理課とPMDAが対象該当性を検討します。対象になる可能性が高いと判断されれば、医療機器臨床試験要否相談などへ進みます。相談記録の確定は対面助言からおよそ30勤務日以内が目安です。
なお、希少疾病用などの指定やニーズ検討会の選定を既に受けている品目は、開発前相談を経ずに対象と判断される場合があります。この場合は該当性概要を作成のうえ、医療機器審査管理課へ相談します。
3.2 承認申請時の留意点
承認申請では、臨床試験成績に関する資料の一部として医療機器等リスク管理計画案を添付します。申請書の備考欄に、要件該当性の相談を実施済みである旨、相談日時と受付番号を記載します。承認申請後は速やかにQMS適合性調査申請ができるよう、体制を整えておくことが必要です。リスク管理計画の書き方は、令和2年8月31日付けの関連通知(薬生機審発0831第3号・第4号)を参照します。
3.3 承認後の手続き
原則として販売開始の1か月前までに、リスク管理計画書をPMDAへ提出します。対象品目は原則として使用成績評価の対象となり、調査期間中は1年ごとの定期報告が必要です。使用成績調査を学会のレジストリで行う場合は、データの管理・利用の責任関係をあらかじめ明確にしておきます。
条件付承認された製品である旨と条件の概要は、注意事項等情報や資材を通じて患者・医療現場へ周知しなければなりません。調査等の成績は、完遂の有無を問わず公表義務があります。販売中止や承認整理を行う場合でも、それまでに得た成績は公表が必要です。
3.4 承認後評価と承認取消し
条件とされた調査等の成績は提出し、条件付承認後評価を受けます。この評価は使用成績評価や一変申請の審査に準じた手続きを経て、薬事審議会で取り扱われます。評価の結果、承認拒否事由に該当すれば、薬事審議会の意見を聴いて承認が取り消されることがあります。必要に応じて条件や承認内容の変更も行われます。
まとめ
令和8年5月1日から、医療機器・体外診断用医薬品の条件付承認制度は新たな運用へ移行しました。今回の改正では、対象品目が「類型1」と「類型2」に整理され、条件付承認の対象要件に加えて、PMDAへの開発前相談、承認申請、市販後のリスク管理、条件付承認後評価までの手続きが明確化されています。
条件付承認制度を活用するためには、自社製品が要件を満たすかを早い段階で検討し、臨床データや該当性概要、市販後のデータ収集・評価計画などを踏まえてPMDA相談を進めることが重要です。特に、「条件付承認の対象となる可能性があるか」「新たな臨床試験を行わずに承認申請できるか」「PMDA相談にどのような資料を準備すべきか」といった判断は、その後の開発計画や承認申請スケジュールにも大きく影響します。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器・体外診断用医薬品の条件付承認に関する該当性の検討から、PMDA相談、承認申請資料の作成・レビュー、リスク管理計画を含む薬事戦略の立案まで、医療機器薬事の専門的な観点から支援しています。条件付承認制度の活用を検討している場合や、自社製品に適した承認申請ルートの判断でお困りの場合は、ぜひ弊社までお問い合わせください。