概要

血圧計や人工呼吸器で日常的に使われる「mmHg」「cmH2O」。本来はSI単位(Pa)への統一対象ですが、生体内圧力に限っては平成18年9月30日まで法定計量単位とみなされる経過措置が設けられていました。本通知(医薬審第1500号)は、その経過措置を医薬品・医療用具の製造(輸入)承認申請でどのように扱うかを整理したものです。

対象となるのは、医薬品・医療機器・医薬部外品・化粧品の製造販売業者や輸入業者。血圧計・眼圧計・人工呼吸器など、生体内圧力に関わる製品では、期限まで mmHg や cmH2O を承認申請書や表示へ使用できる一方、生体外圧力には適用されない点に注意が必要です。

本記事では、計量法改正の背景、mmHg・cmH2O が認められる範囲、Pa への移行実務、既承認品への影響まで、医療機器申請で押さえるべきポイントを実務目線で解説します。

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1. 背景と目的

1.1 計量法改正と単位整理の流れ

計量法(平成4年法律第51号)は、国内の取引・証明で用いる単位を SI 単位系に統一する目的で改正されました。これにより、圧力単位は本来パスカル(Pa)に集約されます。mmHg や cmH2O はその過程で法定計量単位から外される予定でした。

ただし医療現場では、血圧 mmHg 表記が長年定着しています。学会発表、診療ガイドライン、医療機器の表示など、すべてを一斉に Pa へ切り替えると混乱が大きくなります。そこで猶予期間を設け、その間の運用を政令で定める形が取られました。

1.2 先行通知との関係

本通知の前段に、平成9年9月30日付の 医薬審第205号(厚生省医薬安全局審査管理課長通知)があります。同通知が医薬品等の承認申請における計量単位の取扱いを示していました。今回の医薬審第1500号は、平成11年9月20日公布の 政令第273号(計量法附則第四条の計量単位等を定める政令)の施行に伴うものです。運用ルールを改めて整理しています。政令の施行日は平成11年10月1日です。

1.3 通知の目的

目的は二つあります。

一つは、生体内圧力の単位として mmHg・cmH2O を使い続けられる範囲と期限を明確にすること。

もう一つは、その間の医薬品等の製造(輸入)承認申請における記載ルールを示し、現場の混乱を防ぐことです。

2. 主要要件と事例

2.1 みなし法定計量単位の対象

政令第273号と本通知により、平成18年9月30日までは次の単位が圧力に係る法定計量単位とみなされます。

  • 水銀柱メートル系: 水銀柱ミリメートル(mmHg)、水銀柱センチメートル(cmHg)
  • 水柱メートル系: 水柱ミリメートル(mmH2O)、水柱センチメートル(cmH2O)
  • これらに「十の整数乗」を乗じたもの

「十の整数乗」とは10倍・100倍や0.1倍などのこと。スケール違いのバリエーションも同じ扱いになります。

2.2 使える範囲は「生体内の圧力」に限定

注意点は、みなし法定計量単位として使えるのが 生体内の圧力の計量に係る取引又は証明 に限られることです。使い方そのものは限定されません。表示・記録・申請書記載のいずれでも使えます。

具体的には次のような場面が該当します。

  • 血圧計の表示値(収縮期・拡張期 mmHg)
  • 眼圧計の測定値(mmHg)
  • 中心静脈圧、頭蓋内圧、膀胱内圧などの体内圧モニタ
  • 人工呼吸器の気道内圧(cmH2O)
  • 輸液ポンプ・透析回路の生体側圧力センサ

2.3 範囲外の用途では使えない

逆に、生体内圧力以外の場面では mmHg・cmH2O はみなし法定計量単位になりません。ガス供給配管の圧力、滅菌器のチャンバ圧、製造設備の真空度 などはパスカル系で表記する必要があります。同じ機器でも、生体に接する側か装置側かで単位の扱いが分かれる点に注意してください。

3. 実務対応と罰則

3.1 申請書類での記載ルール

医薬品・医薬部外品・化粧品・医療用具の製造(輸入)承認申請の書式について、平成18年9月30日までは、生体内圧力を mmHg・cmH2O で記載できます。Pa への換算併記は必須ではありませんが、機種の仕様書や添付文書で SI 単位併記が一般的です。併記しておくと審査照会や海外申請で再利用しやすい 利点があります。

3.2 期限後の対応

平成18年10月1日以降は、生体内圧力であっても 法定計量単位の地位を失います。新規申請・一変申請の機会に SI 単位(Pa、kPa、hPa)への記載見直しを進めるのが現実的です。実際には、医療現場の慣行に配慮して mmHg を主、Pa を従として併記する運用が多く見られます。

3.3 既承認品への影響

すでに承認を取得している製品については、本通知で直ちに記載変更を求められるわけではありません。一部変更承認や軽微変更届出のタイミングで、必要に応じて単位記載の整理を行えば足ります。表示・添付文書の改訂は、各社の改版計画に組み込んでおくと無理がありません。

3.4 罰則

本通知自体は経過措置の運用を示すもので、独立した罰則規定はありません。期限後に法定計量単位以外で取引・証明を行った場合、計量法本則の規定に照らして取引・証明の効力や監督上の問題が生じます。承認申請段階での記載不備は照会対応や差し戻しの原因になるため、期限管理を社内で共有しておくことが重要です。

まとめ

mmHg・cmH2O は、医療現場では現在も広く使われている圧力単位ですが、計量法上は SI 単位(Pa)への移行対象であり、適用範囲や経過措置を正しく理解しておく必要があります。特に医療機器の承認申請や添付文書作成では、「生体内圧力」と「装置側圧力」で単位の扱いが異なるため、記載ミスや整合性不足が PMDA 照会や申請差し戻しの原因になることがあります。

また、既承認品についても、一変申請・軽微変更・表示改訂のタイミングで SI 単位対応をどう進めるかを整理しておくことが重要です。海外規制対応や IEC/JIS 規格との整合、グローバル仕様書との統一を含め、単位表記の見直しは QMS・薬事・開発部門をまたぐ実務課題になっています。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の承認申請書レビュー、PMDA 照会対応、添付文書・表示の薬事チェック、QMS 体制構築支援まで実務ベースでサポートしております。
「この圧力表記は mmHg のままで問題ないか」「Pa 併記は必要か」「海外仕様との整合をどう取るべきか」など、医療機器の薬事・品質に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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