概要
平成10年10月26日付の審査実務連絡No.98-2は、カテーテル類の承認申請書の作成にあたって特に留意すべき事項をまとめた通知です。 対象は新規承認申請書だけでなく、承認事項一部変更承認申請書も含みます。 カテーテル類では破断・破損等の不具合が少なからず報告されており、安全性確保を目的として承認申請書の記載内容が強化されました。 カテーテル類の製造・輸入業者および申請担当者は、本通知に示された形状・性能・規格の各欄について必須記載項目を漏れなく記載しなければなりません。

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1. 背景と目的
1.1 カテーテルの不具合報告と安全確保の必要性
カテーテル類は血管・体腔・尿路など体内に挿入して使用する医療用具であり、手技中に破断・破損が生じると重篤な合併症を引き起こすおそれがあります。 本通知は、こうした不具合報告を踏まえて安全性確保を図るために発出されました。
承認申請書において製品の寸法・強度・バルーン特性等を適切に規定することで、製造段階での品質管理基準を明確にし、不具合の発生リスクを低減することが狙いです。
1.2 既存承認品目への対応
既に承認を受けているカテーテル類についても、一部変更申請を行う際は本通知の必須記載項目を見直してください。 記載が不足している場合は追加が必要です。 また、変更申請の機会がない場合でも、社内で現在の申請書記載内容と本通知の要件を照合しておくことを推奨します。
2. 「形状、構造及び寸法」欄の必須記載項目
2.1 全カテーテルに共通する記載事項
カテーテル類の承認申請書「形状、構造及び寸法」欄には、製品の特性に応じて必要な事項を規定しますが、以下の項目は必ず記載しなければなりません。
・外径および有効長 カテーテル本体の外径(単位: mm、Fr等)と有効長(体内に挿入される部分の長さ)を明記してください。 外径と有効長は製品の基本仕様であり、不具合時の原因究明にも必須の情報です。
・エックス線造影マーカーの有無 エックス線造影マーカーを付すカテーテルについては、マーカーの有無を明記します。 造影マーカーの位置・素材が施術の安全性に直接影響するため、記載漏れのないよう注意してください。
2.2 バルーンカテーテルの追加記載事項
バルーンカテーテルには、以下の事項を加えて記載します。
- バルーンの有効長
- 拡張用バルーンにあっては、バルーンの拡張時直径
拡張時直径は血管内でのカテーテルの挙動に直接関わるため、適切に規格化してください。
2.3 ガイドワイヤー添付品の追加記載事項
ガイドワイヤーを構成品として添付するカテーテルについては、ガイドワイヤーの最大直径をカテーテルの寸法ごとに記載する必要があります。 カテーテルとガイドワイヤーの適合性は安全性に直結するため、各サイズの組み合わせを明確にしてください。
3. 「性能、使用目的、効能又は効果」欄の記載事項
3.1 使用目的の記載
使用目的欄には、主たる適用疾患・適用部位・手技等を含めて簡潔に記載します。 単に「血管内に挿入して使用する」という記載では不十分です。 たとえば「冠動脈の狭窄部位に対するバルーン拡張術に使用する」といった形で、適用疾患・部位・手技を具体的に示してください。
3.2 仕様(安全性能)の記載
性能欄には、以下の安全性能に係る仕様を原則として記載します。
・接合部の強度 体内に挿入される接合部、および体外であっても不具合が生じた場合に重大な危険が生じるおそれのある接合部について、強度の規格値を設定してください。 カテーテルが体内で分離・脱落すると除去が困難になるため、接合部強度の規格は特に重要です。
・カテーテルの引張り強さ カテーテルの構造に応じ、先端部を含む一定範囲を対象とした引張り強さを規定します。 破断リスクが高い先端部・屈曲部を含む範囲での評価が求められます。
・バルーンに関する仕様 拡張用バルーンには加圧限界および推奨加圧を、非拡張用バルーンには最大容量(または最大直径)および推奨容量を記載します。
・ガイドワイヤーの推奨径 ガイドワイヤーを構成品として添付しないがガイドワイヤーを使用するカテーテルについては、推奨するガイドワイヤー径を記載します。
4. 「規格及び試験方法」欄の必須規格項目
4.1 物理的安全性に関する規格
「規格及び試験方法」欄には、製品の特性に応じて必要な試験項目を設定しますが、物理的安全性については以下を原則として規格として設定します。
- 外観 — 目視等による検査基準
- 寸法 — 外径・有効長等の寸法規格
- 接合部の強度 — 体内挿入部および危険度の高い体外接合部の引張り強さ等
- カテーテルの引張り強さ — 先端部を含む範囲での規格
- 拡張用バルーンの加圧強度および漏れの有無
- 非拡張用バルーンの漏れの有無
外観・寸法・強度・バルーン性能はカテーテルの安全性を担保する基本的な規格です。 いずれか一項目でも欠落していると、不具合発生時の原因究明が困難になります。
4.2 試験方法の設定
各規格項目に対応した試験方法を承認申請書に明記してください。 市場に出回っている試験方法(JIS規格・ISO規格等)を参照できる場合は引用し、独自の試験方法を設定する場合は試験手順の概要を記載します。
5. 使用上の注意の充実
5.1 主たる使用国での使用上の注意の反映
本通知は、安全性確保のために使用上の注意の充実も求めています。 特定の要件に該当する医療用具については、主たる使用国の使用上の注意が確認できる添付文書等の写しを添付または記載する必要があります。 これにより使用上の注意の充実が図られます。
それ以外のカテーテル類についても、主たる使用国の当該品や類似製品の使用上の注意・不具合発生状況を踏まえ、記載内容を充実させることが推奨されています。
まとめ
カテーテル類の承認申請では、「形状、構造及び寸法」「性能、使用目的」「規格及び試験方法」の各欄において、外径・有効長・接合部強度・引張り強さ・バルーン特性といった必須項目の記載漏れがないかが審査上の重要ポイントとなります。これらが不十分な場合、PMDAからの照会や審査遅延、最悪の場合は申請差戻しにつながるリスクがあります。
特に実務では、規格値の設定根拠や試験方法の妥当性、ガイドワイヤーとの適合性、使用目的の具体性などで指摘を受けるケースが多く、単なる記載対応ではなく「審査で通る設計」が求められます。既存品についても、一部変更申請時に本通知の要件を満たしていないことが判明するケースがあるため、事前のギャップ分析が極めて重要です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、カテーテルを含む医療機器の承認申請書レビュー、規格・試験設計の最適化、PMDA対応まで支援しています。「この記載で問題ないか」「規格設定が妥当か」といった段階からでも対応可能ですので、審査リスクを最小化したい方はぜひお気軽にご相談ください。