概要
平成11年7月の医療用具承認申請ルール大改正に対し、現場から寄せられた疑問へまとめて回答した事務連絡です。発出元は厚生省医薬安全局審査管理課、日付は平成11年11月9日、発番は医療機器審査No.9。対象は医療用具(現在の医療機器)の製造販売業者と輸入販売業者です。申請区分の判定、添付資料の範囲、規格・試験方法の設定根拠、製造方法欄の記載まで、全34問のQ&Aで実務指針が示されました。
本Q&Aは、薬発第827号局長通知および医薬審第1043号課長通知の運用解釈を補完する位置づけです。実務に直結する判断基準が明文化されています。学会誌等での公表が申請要件から外れたこと。信頼性基準が非臨床試験にも及ぶこと。1検体の試験結果でも原則申請可能になったこと。古い通知ですが、現行の承認申請実務に通じる原則が多く、過去の運用変遷を理解するうえで重要な一次資料です。

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1. 背景
1.1 改正の経緯
従来の医療用具基本通知は昭和55年6月30日薬発第852号でした。約20年使われてきたこの通知に対し、医薬品側が平成11年4月8日に基本通知を改正したのを受け、医療用具側も内容を現状に合わせて整理する必要が生じました。今回の改正では、それまで一本だった通知を局長通知と課長通知の2階建てに再編しています。
局長通知は基本的事項を、課長通知は個別具体的事項を担う構成です。局長通知では、申請資料の倫理性・科学性・信頼性の確保、クラス分類の考え方、リスク度合いと新規性に応じた審査方針、添付資料の範囲などが明示されました。課長通知では、申請資料の具体的取り扱いや共同開発の取り扱いが整備されています。
1.2 何が変わったか
最大の変化は、添付資料の学会誌等での公表が申請要件から外れたことです。昭和55年通知に明記されていた公表規定が削除され、本通知日以降の申請ではこの要件を満たさなくても差し支えないと整理されました。平成12年3月31日以前の申請でも、公表なしで申請できる扱いです。
このほか、クラスⅡに該当する新医療用具のうち新構造医療用具以外の取り扱いが明示されました。申請資料の信頼性基準が臨床・非臨床を問わず全資料に適用されることも確認されました。いずれも実務上の大きな整理点です。
2. 主要なQ&A
2.1 添付資料の範囲と申請区分
申請区分の判定に迷う場合、事前相談制度を新設するのではなく既存の一般相談を活用する運用が示されました。相談時は、申請者が考える区分とその理由を明確にして持ち込むことが求められます。区分のみの事前相談ルートは設けられないため、判断材料を整えてから一般相談に進む流れになります。
別表3の「(4)クラスⅡに該当する新構造医療用具以外の新医療用具」は、平成7年薬機第100号で取り扱いが不明確だった領域を本通知で明文化したものです。再審査期間中に同等品を申請する場合は別表3の資料範囲で足ります。再審査期間終了後の同等品申請は、クラスⅣを除き原則「その他の医療用具」として扱われます。再審査結果が未公表の場合は、結果に応じて申請内容を見直す念書の提出が求められます。
2.2 信頼性基準の適用範囲
別添1「医療用具の申請資料の信頼性基準」は、原資料から申請資料を作成する際の信頼性確保を目的としています。臨床試験だけでなく非臨床試験を含む全資料が対象です。臨床と非臨床を切り分けて運用する誤解が起きやすい論点ですが、Q&Aで明確に否定されています。
類似の医療用具がすでに承認されている場合でも、新規性の程度によって取り扱いが変わります。比較表で異同をはっきりさせ、医療用具としての位置づけを示すことが基本です。臨床試験成績以外の資料で有効性・安全性を評価できると主張する場合は、その妥当性を別途説明する責任が申請者側にあります。
2.3 規格及び試験方法の裏付け資料
「仕様の裏付け」とは、規格値や電気的定格などの設定根拠を意味します。国内外の規格を採用する場合は、原則として規格全文の添付が求められます。ただし日本薬局方など薬事法のもとに制定された規格、および厚生大臣が主務大臣のJIS(日本工業規格)は省略可能です。原文が英文の規格は、当該部分のみの翻訳でも可とされました。
実測値の試験結果は、原則として1検体分で申請可能です。ただしロットを形成する製品で、ロット間ばらつきが品質・有効性・安全性に大きく影響する項目については、3ロットの試験成績の添付が必要になります。製造条件で品質が変わる製品や、生体材料のように材料ロットでばらつきが出る製品が想定されています。
2.4 生物学的安全性に関する資料
生物学的安全性の資料は、生体に対する移植・挿入・接触で使用される医療用具に必要です。具体的な範囲は平成7年薬機第99号「医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的試験のガイドライン」に基づき個別判断する運用が維持されました。試験ロット数は原則1ロットで足り、品質ばらつきが通常を超えて予想される場合のみ追加対応となります。
2.5 製造方法欄と備考欄の記載
輸入品について「輸入先の製造方法による」とのみ記載する省略運用は廃止されました。GMPI施行を踏まえ、輸入品でも国内品と同様の記載が求められます。別紙には、滅菌品と非滅菌品それぞれのフローチャート例が示されています。セラミックス、ヒトまたは動物の組織由来製品、膜製品、生体材料などは、品質に大きく影響する工程を詳細に記載する必要があります。
備考欄には外観写真を貼付しますが、形状・構造及び寸法欄に写真を貼付済みであれば省略可能です。写真は代表的な外観でよく、写真と同等の確認ができればカタログのカラー印刷物やそのコピーでも代用できます。「使用上の注意」は、同等品の場合に先発品の記載に準じて準備すれば申請時の添付は不要です。ただし審査過程で求められた際にすぐ提出できる体制は維持しなければなりません。
3. 実務上の留意点
3.1 申請区分の判定で迷ったら一般相談
新医療用具か否かの判断は、既承認医療用具との比較が出発点です。比較表は他社製品の情報開示が限られる中でも、可能な限り詳細に記載することが求められます。対象となる既承認品が見つからない場合は新医療用具該当の可能性を検討し、迷ったら一般相談で区分とその根拠を整理して持ち込むのが実務の定石です。
3.2 規格・試験方法は設定根拠まで含めて整える
規格項目の設定理由、試験方法の選択理由、試験条件の設定理由、規格値の設定根拠は、医療用具の規格・試験方法を決める核心情報です。科学的妥当性を確認するための必須資料として位置づけられており、本通知以前から要求されてきた内容が改めて整理された形になります。資料概要では、構造・原理、性能・使用目的・効能・効果、操作方法、使用上の注意とその設定理由を漏れなく説明することが原則です。設定理由を科学的に説明できない場合は、可能な範囲で論理的に説明します。
3.3 形式面の細かいルールも見落とさない
一般的名称のコード番号は従来どおり鉛筆書き等で記載します。申請者の業者コードも申請書右下に鉛筆書きで記載する運用が維持されました。概説表には目次を作成し、通しページを必ず付けます。原文が英文の添付資料・参考資料は概訳ではなく全訳を添付する運用も継続されており、審査の迅速処理を優先する厚生省の姿勢が表れています。
3.4 既承認品との同一性主張は丁寧に
既承認医療用具との同一性を主張する際の比較表は、新医療用具該当性を判断する根幹資料です。他社情報のデータベースが開示されていない現実は踏まえつつも、十分な調査と詳細な記載が求められます。「「既承認医療用具との同一性に関する資料」作成上の留意点について」が別途通知される予定とされ、後続通知も併せて参照する運用が想定されました。
まとめ
本Q&Aは、平成11年改正で再編された医療用具承認申請ルールの実務解釈を整理した重要通知です。申請区分の判定、比較表の作成、規格・試験方法の設定根拠、信頼性基準の適用範囲、製造方法欄の記載など、現在の医療機器承認申請・認証申請にも通じる考え方が数多く示されています。特に、既承認品との同一性評価や試験データの裏付け資料は、現在でもPMDA審査で重要視されるポイントです。
また、本通知では「1検体試験の原則容認」や「学会誌公表要件の撤廃」など、当時の実務運用を大きく変えた整理も行われています。古い通知であっても、承認申請資料の作成方針や規格設定の考え方を理解するうえで、今なお参考になる内容が多く含まれています。過去通知との関係を正確に理解することは、現行制度下での申請戦略やPMDA対応を検討する際にも有効です。
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