概要
平成10年10月20日付の医薬審第912号通知は、医療用具の承認申請書およびその添付資料における誤記載・記載漏れ・転記ミスの防止を目的として発出されました。 承認申請書の誤記載は、承認された内容と実際の製造・輸入品目に相違が生じた場合、無承認無許可医療用具の製造または輸入に該当するおそれがあり、重大な問題です。 医療用具の製造・輸入業者は、社内の申請書作成体制を整備し、責任者を配置した管理体制を構築する必要があります。
本通知のうち、承認申請書への責任者名の明記に関する規定は平成11年1月1日以降の申請から適用されます。 申請担当者は、この施行時期を念頭に置いた上で準備を進めてください。

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1. 背景と目的
1.1 誤記載が重大問題となる理由
医療用具の承認申請書には、製品の名称・形状・構造・成分・性能・使用目的など、承認内容のすべてが記載されます。 承認を受けた後、実際に製造・輸入する品目がこの承認内容と一致していなければ、法的には無承認・無許可の医療用具を製造または輸入したことになりかねません。
実際に最近の事例では、承認申請書の誤記載・記載漏れ・転記ミスが見受けられるとして、本通知が発出されました。 こうしたミスは意図せず生じる場合でも、承認内容と実態の乖離を生む点で重大なコンプライアンスリスクです。
1.2 申請書作成体制の整備の必要性
複数の部署・担当者が関与する申請書作成プロセスでは、情報の転記ミスや記載漏れが発生しやすくなります。 特に、外国語の文書を邦訳して申請書を作成する場合には、専門用語の訳出ミスが生じるリスクがあります。 こうしたミスを組織的に防ぐには、標準手順書の整備と責任者の配置が不可欠です。
2. 申請書作成体制の整備
2.1 組織・人員の整備と標準手順書の作成
承認申請者(製造業者・輸入業者)は、承認申請書等を作成するための組織および人員を整備しなければなりません。 具体的には、申請書作成に係る業務の標準手順書(SOP)を作成し、社内的な管理体制を確立することが求められます。
標準手順書には、少なくとも以下の内容を盛り込むことが望ましいです。
- 申請書各欄への記載方法と確認手順
- 外国語文書を邦訳して申請書・添付資料を作成する際の確認手順
- 転記ミス・記載漏れを防ぐためのダブルチェック手順
- 試験データ等の添付資料と申請書記載内容の突合確認手順
- 申請書完成後の最終確認手順と承認フロー
2.2 責任者の配置と役割
承認申請者は、申請書等の作成に係る業務を統括管理する責任者を配置しなければなりません。 責任者は標準手順書等に基づき、申請書作成に係る業務全般と関係職員の教育訓練を適切に管理する役割を担います。
責任者が業務を支障なく遂行できるよう、承認申請者は必要な措置を講じるよう努めることも規定されています。 責任者を名目上配置するだけでなく、実際に機能する体制とすることが求められます。
2.3 承認申請書への責任者名の明記
本通知の主要な新規制事項として、承認申請書の備考欄に責任者の所属および氏名を記載することが義務付けられました。 この規定は平成11年1月1日以降の申請に係る承認申請書等から適用されます。
責任者名を申請書に明記することで、申請内容に対する責任の所在が明確になります。 誰が申請書の作成を統括したかを公的な書類上で示すことで、申請者内部の品質管理への意識向上も期待されます。
3. その他の信頼性確保措置
3.1 試験実施者の確認
添付資料に含まれる試験成績については、昭和58年3月12日付薬発第154号通知「試験実施者の確認について」の内容に従い、従来通りの取扱いを継続します。 試験実施者の確認要件は変更されていないため、改めて確認手続きを整理してください。
3.2 邦訳の適正化
外国語の文献・報告書等を添付資料とする場合の邦訳については、邦訳者および専門技術者の氏名・身分・資格を明記することが従来から求められています。
本通知ではさらに、添付資料に限らず外国語文書をもとに申請書等を作成する場合も対象が広がりました。 専門用語の訳出ミスがないよう、当該分野の専門家による厳密な内容確認を徹底することが指示されています。
特に、医療用具の専門的な技術文書では、用語の訳し方一つで承認内容が変わりかねません。 翻訳業者への委託だけでなく、当該分野の専門家による内容確認を必ず実施してください。
3.3 承認内容と製造実態の整合
申請書の誤記載防止だけでなく、承認後も承認内容と実際の製造・輸入実態が一致しているかを定期的に確認する体制を整えることが重要です。 承認事項の一部変更が生じた場合には速やかに変更承認申請または軽微変更の届出を行い、実態と承認内容のズレが生じないよう管理してください。
4. 実務対応のチェックポイント
4.1 標準手順書の見直し
既存の申請書作成手順書がある場合は、本通知の内容に沿って以下を確認・見直してください。
- 責任者の位置付けとその役割が明文化されているか
- ダブルチェック・トリプルチェックの手順が明確になっているか
- 外国語文書の邦訳確認に専門家が関与する手順が規定されているか
- 申請書備考欄への責任者名記載が含まれているか
4.2 施行時期への対応
承認申請書への責任者名記載は、平成11年1月1日以降の申請から適用されます。 この施行時期に間に合うよう、責任者の選定・配置と申請書様式の確認を事前に完了させてください。
まとめ
医療用具の承認申請書における誤記載・記載漏れは、承認内容と製造実態の不一致を招き、無承認無許可製造・輸入に該当する重大な薬機法リスクにつながります。医薬審第912号通知では、標準手順書(SOP)の整備、責任者の配置、邦訳確認手順、ダブルチェック体制など、申請書作成に関する社内管理体制の構築が求められています。
しかし実務上は、申請書作成フローが属人化している、翻訳確認が不十分、責任者の役割が曖昧、承認内容と実態の突合確認ができていないなど、監査・適合性調査・承認申請時に指摘されやすいポイントが多く見受けられます。特に外国資料を用いた申請や複数部署が関与する案件では、体制整備の不備が大きなリスクとなります。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、承認申請書作成SOPの整備、社内管理体制構築、PMDA対応、QMS体制見直しまで実務レベルで支援しております。
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