概要

医療用具用潤滑剤シリコーン油基準(Ⅰ)の適用範囲にコンドームが追加されました。平成10年3月2日付の本通知(医薬審第189号)は、厚生省医薬安全局審査管理課長から各都道府県衛生主管部局長宛てに発出されたものです。従来は注射針、注射筒、三方活栓のみが対象でしたが、コンドームの潤滑剤として使用されるシリコーン油にも同基準が適用されることになりました。コンドームの製造・輸入や承認申請を行う事業者は、シリコーン油基準(Ⅰ)への適合と承認申請書の原材料欄における規格設定が求められます。

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1. 背景と目的

1.1 シリコーン油基準(Ⅰ)とは

シリコーン油は医療機器の表面に塗布される潤滑剤として広く使用されています。注射針の穿刺時の痛みを軽減する、注射筒のプランジャーの摺動性を確保するといった目的で用いられます。医療機器の使用感と安全性の両方に影響する重要な原材料の一つです。体内に直接接触する部位に使用されるため、その品質と安全性は厳しく管理される必要があります。

平成7年12月20日付の薬務局医療機器開発課長通知(薬機第327号)により、同基準が示されました。正式名称は「注射針及び注射筒等に潤滑剤として用いられるシリコーン油の基準について」です。この通知の別添として定められたのが「医療用具用潤滑剤シリコーン油基準(Ⅰ)」です。制定当初の適用範囲は注射針、注射筒、三方活栓に限定されていました。

1.2 なぜコンドームに拡大されたのか

コンドームにも潤滑剤としてシリコーン油が使用されています。コンドームは粘膜に直接接触する医療機器であり、使用されるシリコーン油の品質は安全性に直結します。しかし、既存のシリコーン油基準(Ⅰ)ではコンドームが適用範囲に含まれておらず、基準に基づく品質管理が制度上求められていませんでした。

注射針等と同様に体液・粘膜との接触がある用途であることから、同等の品質基準を適用することが適切と判断されました。特にコンドームは広範な一般消費者が使用する医療機器であり、品質基準の統一は公衆衛生の観点からも重要です。こうした背景から、コンドームに使用される潤滑剤についても既存のシリコーン油基準(Ⅰ)を適用し、品質管理を統一することが適切と判断されました。

1.3 関連団体への周知

本通知の写しは幅広い関係団体にも送付されています。送付先は以下の4者です。

  • 財団法人医療機器センター理事長
  • 日本医療機器関係団体協議会会長
  • 在日米国商工会議所医療機器小委員会委員長
  • 欧州ビジネス協会医療機器委員会委員長

国内外の業界団体に広く周知が図られている点から、輸入品を含めた対応が想定されていることがわかります。

2. 改正の具体的内容

2.1 適用範囲の拡大

シリコーン油基準(Ⅰ)の「1.適用範囲」が以下のとおり改正されました。

  • 改正前:「注射筒又は三方活栓の」潤滑剤として用いられるシリコーン油
  • 改正後:「注射筒、三方活栓又はコンドームの」潤滑剤として用いられるシリコーン油

改正内容は適用範囲の文言変更のみです。基準そのものの試験項目や規格値には一切変更がありません。既にシリコーン油基準(Ⅰ)に適合した製品を供給している事業者にとっては、新たな試験の追加は不要です。注射針等に適用されていたものと同一の品質基準がコンドームにも適用される形です。

2.2 シリコーン油基準(Ⅰ)が求める品質

シリコーン油基準(Ⅰ)は、医療機器に使用されるシリコーン油の純度・安全性を確保するための規格です。医療機器の潤滑剤として使用されるシリコーン油は、一般工業用のシリコーン油とは異なり、生体への影響を考慮した厳格な品質管理が求められます。具体的には、粘度、屈折率、比重などの物理化学的性質に加え、重金属や揮発性物質の含有量に関する規格が設定されています。これらの規格に適合しないシリコーン油を使用した場合、体内への有害物質の溶出や生体組織への刺激性といったリスクが生じる可能性があります。

シリコーン油基準(Ⅰ)は、ジメチルポリシロキサンを主成分とする医療用シリコーン油を対象としています。基準への適合は製造業者が自ら試験を実施して確認するか、シリコーン油の供給元から適合証明を取得する方法が一般的です。

3. 承認申請時の留意事項

3.1 シリコーン油の基準適合

コンドームの潤滑剤として使用するシリコーン油は、シリコーン油基準(Ⅰ)に適合するものでなければなりません。これは新規の承認申請だけでなく、承認事項一部変更承認申請を含むすべての申請に適用されます。

既にシリコーン油を使用しているコンドームで承認を取得済みの場合でも、一変申請の際にはシリコーン油基準(Ⅰ)への適合が求められます。使用しているシリコーン油が基準に適合していることを確認し、必要に応じて原材料の切替えや試験データの取得を行う必要があります。

3.2 承認申請書の原材料欄への記載

承認申請書中の「原材料又は成分及び分量」欄には、シリコーン油基準(Ⅰ)に基づいて規格設定を行う必要があります。具体的には、使用するシリコーン油がシリコーン油基準(Ⅰ)に適合している旨を記載し、その根拠となる試験データを申請資料として準備します。

規格設定にあたっては、シリコーン油の種類(ジメチルポリシロキサンの粘度グレードなど)を明確にし、基準で定められた各試験項目への適合性を示すことが重要です。

3.3 輸入品への対応

本通知は在日米国商工会議所や欧州ビジネス協会にも送付されており、海外から輸入されるコンドームにも同様の基準適合が求められます。輸入品の場合、海外の製造元が使用しているシリコーン油が日本のシリコーン油基準(Ⅰ)に適合するかどうかを確認する必要があります。基準に適合しない場合は、適合するシリコーン油への切替えを製造元に依頼する必要があります。あるいは、試験データにより同等性を証明する対応も選択肢です。海外製のシリコーン油はUSP(米国薬局方)やPhEur(欧州薬局方)の規格に基づいていることが多いです。日本の基準との対照表を作成し、差異を明確にしておくと審査がスムーズに進みます。

まとめ

今回の通知により、医療用具用潤滑剤シリコーン油基準(Ⅰ)の適用範囲がコンドームにも拡大されました。コンドームの製造・輸入を行う事業者は、潤滑剤として使用するシリコーン油が当該基準に適合していることを確認するとともに、医療機器の承認申請における「原材料又は成分及び分量」欄で適切な規格設定を行うことが求められます。

特に輸入品の場合は、海外製造元が使用しているシリコーン油が日本のシリコーン油基準(Ⅰ)に適合しているかを事前に確認することが重要です。USPやPh.Eur.規格との違いを整理し、必要に応じて試験データや同等性の説明資料を準備しておくことで、PMDA審査や承認申請手続きをスムーズに進めることができます。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の承認申請における原材料規格の整理、海外規格との対照整理、申請資料の作成支援など、実務に即した薬事支援を行っています。
コンドームを含む医療機器の承認申請や原材料規格の設定でお困りの際は、「このシリコーン油は日本基準に適合するのか」「申請資料としてどこまで整理すればよいのか」といった段階からでも構いません。お気軽にご相談ください。

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