概要
令和7年10月16日、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、小児用医療機器の開発を促進するための新たな支援制度を発表しました。この制度は、小児用医療機器の承認申請にかかる審査及び調査手数料について補助金を支給するもので、令和7年4月1日付の交付要綱改正に基づき実施されます。小児の治療には専用の医療機器が必要であるにもかかわらず、開発コストの問題などにより国内開発が進めづらい状況にあることから、財政負担を軽減することで開発を促進することを目的としています。

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1. 制度の背景と目的
1.1 小児用医療機器開発の課題
小児の治療においては、体格の小ささや先天性疾患への対応等のため、専用の医療機器が必要とされています。しかし、複数の要因により、その国内開発が進めづらい状況にあります。小児患者は成人と比較して市場規模が小さく、開発投資に対する収益性が低いことに加え、臨床試験の実施における倫理的配慮や被験者の確保の難しさなど、開発における特有の課題が存在します。
1.2 制度の目的
開発の隘路に対しては多面的な対応が必要であり、このうち開発コストの問題に対して、申請手数料の減免を行うことにより、小児用医療機器の承認に係る申請における財政負担を軽減し、我が国の小児を対象とした医療機器の開発を促進していくことを目的としています。本制度は、厚生労働省発医薬0401第110号「医薬品副作用等被害救済事務費等補助金(革新的医療機器等相談承認申請支援事業等)の国庫補助について」の交付要綱の一部改正により実施されます。
2. 補助対象となる医療機器
2.1 対象品目の要件
補助対象となる医療機器は、製造販売後に国内にて供給する医療機器であることを前提とし、以下のいずれかに該当する必要があります。
第一に、小児専用の医療機器として承認申請された品目が対象となります。
第二に、小児期患者が主な対象患者となる先天性疾患のための医療機器として承認申請された品目が該当します。
第三に、小児期から成人期まで使用可能であるものの、特定の小児疾患に対して必要とされる医療機器として承認申請された品目も対象に含まれます。
2.2 優先される品目
補助対象の決定には優先順位が設けられています。最も優先されるのは、承認申請時に学会や患者団体からの検討要請を受けて「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」において選定されている品目の開発要請を受けた企業、または特定用途医療機器の申請企業です。これらの企業については、承認申請順に補助対象となります。
次に優先されるのは、希少疾病用医療機器及び条件付き承認制度該当品目の申請企業で、これらも承認申請順に補助対象となります。さらに予算額に余裕がある場合には、上記の対象ではない医療機器の申請企業についても、各製品に対する小児期患者に対する貢献度や医療ニーズを考慮して補助対象とします。
3. 補助の内容と補助率
3.1 対象となる手数料
本制度の補助対象となるのは、対象品目の承認申請にあたりPMDAへ納付した以下の手数料です。まず、承認申請の審査手数料が対象となります。次に、信頼性調査として適合性書面調査及びGCP調査に係る手数料が含まれます。さらに、QMS適合性調査に係る手数料も補助対象となります。なお、収入印紙で納めた国宛ての手数料は補助対象外となります。
3.2 補助率と補助金額
補助率は、上記の手数料額の9割相当となります。具体的には、各手数料の金額に0.9を乗じた金額の千円未満を切り捨てた金額が補助されます。補助対象を決定してもなお補助金に残額がある場合は、その残額限りで補助することとされており、この場合の補助率はPMDAへ納付した手数料額の9割相当に満たないこととなります。
3.3 対象期間
当該年度における補助金交付要綱の適用日(令和7年4月1日)から令和8年1月31日(必着)までに補助金の申請を受理したものを対象とします。具体的には、令和7年2月1日から令和8年1月31日までに対象品目に係る承認申請を受付けたもの、または前年度(令和6年4月1日から令和7年3月31日まで)に補助金交付決定を受けたもののうち前年度の補助の申請締切日(令和7年1月31日)の翌日以降令和8年1月31日までに追加で対象となる手数料を納付したものが該当します。
4. 申請手続きの流れ
4.1 承認申請及び補助金申請
補助を希望する企業は、まず対象品目の承認申請に係る手数料をPMDAへ全額納付し、承認申請を行います。補助金申請は、別紙様式1により、承認申請と同時または後日に行うことができます。申請時には、承認申請において提出した承認申請書等鑑の写し、審査調査申請書の写し、PMDAに手数料を納付したことが証明できる書類の写しを添付する必要があります。
補助金申請書には、対象品目の要件該当状況や対象手数料、手数料金額などを記載します。また、他の補助金等受給状況に関する確認も必要となります。本事業の補助金と他の補助金等を合算して補助対象額(審査・調査手数料)を上回って受け取ることはできないため、他の補助金等を受給した実績または受給する予定がある場合は、その旨を記載し、関連書類を添付する必要があります。
4.2 補助金の交付・不交付の決定
PMDAは、補助金の申請を受けた後、定められた決定方法に基づき、補助金の交付・不交付を決定します。決定方法は、適正に承認申請及び補助金の申請手続きが行われたものについて、予算額(厚生労働大臣から交付決定された補助金の額)の範囲内で決定されます。補助金申請を行った企業に対しては、別紙様式2により、交付の決定または不交付の決定の通知が行われます。
要件を満たす補助の申請の合計額が予算額を超過した場合かつ複数の補助の申請を行った企業があった場合は、申請期間終了後、各企業ができるだけ均等に補助の機会が得られるよう調整が行われます。
4.3 補助金の請求と支給
交付の決定を受けた企業は、期限内に別紙様式3により、PMDA宛てに補助金の請求を行います。PMDAは、請求を行った企業に対し、補助分を支給します。補助金の支給時期は当該年度末までとされています。請求書には、交付決定通知書の番号、請求額、振込先の銀行情報などを記載する必要があります。
4.4 留意事項
補助金の申請内容に虚偽があった場合は、補助金の支給の取止め、若しくは補助金の返還、公表される場合があります。また、交付要綱には補助金の交付の条件として、事業に要する経費の配分の種目間変更や事業の内容の変更、事業の中止または廃止、事業が予定の期間内に完了しない場合などの手続きが定められています。さらに、事業により取得し、または効用の増加した価格が単価30万円以上の機械器具及びその他の財産については、一定の制限が設けられています。
まとめ
令和7年度に開始された「小児用医療機器の承認申請支援事業」は、PMDAに支払う承認申請の審査・調査手数料の最大9割が補助される、開発企業にとって非常にインパクトの大きい制度です。特に、小児専用医療機器や小児期患者が主な対象となる先天性疾患関連医療機器、特定の小児疾患に必要とされる医療機器を開発している企業にとっては、承認申請時の財政的ハードルを大きく下げる制度といえます。
一方で、本制度の活用にあたっては、「自社製品が補助対象に該当するか」「優先順位の高い区分に該当するか」「申請タイミングや手数料の範囲は適切か」など、制度解釈や実務判断が結果を左右するポイントも少なくありません。補助対象外となるケースや、他の補助金との併給制限にも注意が必要です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、小児用医療機器の承認申請戦略の整理から、補助対象該当性の確認、申請スケジュール設計、PMDA対応を見据えた実務支援まで一貫してサポートしています。「この製品は補助の対象になるのか」「今の申請計画で制度を活用できるのか」といった初期段階のご相談でも構いません。小児用医療機器の開発・承認申請でお悩みの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。