概要
平成29年8月16日付けで厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課より発出された本通知は、単回使用医療機器(SUD:Single Use Device)の再製造制度の創設に伴い、再製造単回使用医療機器の製造販売承認申請における詳細な取扱いを定めたものです。
再製造単回使用医療機器とは、医療機関で一度使用されたSUDを回収し、適切な洗浄、滅菌、検査等の工程を経て再び医療機器として製品化されたものを指します。本通知では、このような医療機器の承認申請書作成において必要となる記載事項や留意点を、通常の医療機器承認申請とは異なる再製造特有の要件を中心に規定しています。
再製造プロセスは「部品再生プロセス」と「製品化プロセス」の2つの工程に大別され、医療機関からの使用済み医療機器の引き取りから、洗浄、分解、検査、滅菌、再組立て、最終製品の出荷まで、各工程での品質管理と追跡可能性の確保が求められます。特に、原型医療機器との同等性の証明、最大再製造回数の設定、再生部品と交換部品の明確な区別など、再製造医療機器特有の管理項目が詳細に定められています。
1. 通知の対象と基本定義
1.1 対象となる医療機器
本通知は、医薬品医療機器等法施行規則第114条の8第4号に規定される再製造単回使用医療機器に該当する品目を対象としています。これらは使用済みの単回使用医療機器を原材料として、適切な再製造プロセスを経て製品化される医療機器です。
1.2 主要な用語の定義
再製造に関わる重要な用語として、以下の3つのプロセスが定義されています。
1.再製造プロセスは、医療機関からの再生部品の引き取りから再製造単回使用医療機器として出荷するまでの全過程を指します。このプロセスは、部品再生プロセスと製品化プロセスの2つに大別されます。
2.部品再生プロセスは、医療機関からの再生部品の引き取りから再生部品の汚染等を除去するまでの過程であり、主に洗浄、滅菌、検査等の工程が含まれます。
3.製品化プロセスは、部品再生プロセス後の再生部品や交換部品等を用いて再製造単回使用医療機器を製品化する製造工程であり、組立て、最終滅菌、包装等の工程が含まれます。
2. 製造販売承認申請書の記載事項
2.1 名称欄の記載方法
再製造単回使用医療機器の一般的名称については、原型医療機器の一般的名称の頭に「再製造」を付した名称とすることが原則となります。該当する一般的名称がない場合は、新たに一般的名称案を作成し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出する必要があります。
販売名については、先頭に「再製造」を付け、末尾に製造販売業者名を括弧書きで含めることが義務付けられています。例えば「再製造○○○○(製造販売業者名)」といった形式となります。
2.2 形状、構造及び原理欄
原型医療機器に関する情報として、販売名、承認番号、承認年月日等の基本情報に加え、再製造に供する原型医療機器を特定するために必要な承認事項一部変更承認年月日等も記載します。
再生部品については、その形状、構造及び寸法を詳細に記載し、使用済み医療機器の全部を再生部品とするか一部を再生部品とするかを明確にします。一部を再生部品とする場合は、再製造単回使用医療機器のうち再生部品が用いられる部位を特定します。
交換部品を用いる場合は、交換部品の形状、構造、寸法等及び再製造単回使用医療機器のうち交換部品が用いられる部位を記載します。
2.3 原材料欄の詳細
再生部品の原材料については、劣化・耐久性等の評価に必要となる情報として、原材料の一般名、化学構造、規格値等を記載します。リバースエンジニアリング等により同定した原材料の情報と、その同定に用いた方法を明記することが求められます。
最大再製造回数の設定は重要な要素であり、再生部品ごとに個別に設定する必要があります。最大再製造回数が2回以上の品目では、交換部品を以降の再製造において再生部品として用いる場合、当該交換部品は再生部品としても記載します。
3. 性能及び安全性に関する規格
3.1 再製造単回使用医療機器の規格設定
再製造単回使用医療機器の完成品としての規格は、品質(安定性を含む)、安全性(物理的・化学的・生物学的安全性を含む)及び有効性(性能、機能)の観点から設定します。これらの規格は、原型医療機器との同等性を保証するために必要な内容を含み、複数回再製造を行う場合は、最大再製造回数においても原型医療機器と同等の性能を有することを示す必要があります。
3.2 再生部品の規格設定
再生部品の洗浄及び滅菌に係る規格として、洗浄前の保管方法及び期間、残留するたん白質、発熱性物質、ウイルス等の試験方法及び合格基準、残留する洗浄物質の試験方法及び合格基準等を設定します。
再生部品の性能に係る規格として、物理的、機械的及び電気的特性等、再製造単回使用医療機器の有効性及び安全性を担保するために必要な規格を設定します。
3.3 製造工程内の試験検査
再生部品の適格性に係る受入検査の規格として、再製造単回使用医療機器基準第4の1に規定する事項への適合確認、破損等により再製造に供さない再生部品の判別方法等を定めます。
医療機関からの引き取り手順として、医療廃棄物との区分方法、再製造を不可能とする汚染を防止するための区分保管方法、専用容器の仕様、運搬方法等を詳細に規定します。
4. 製造方法と品質管理
4.1 製造プロセスの記載
再製造プロセスについて、部品再生プロセスと製品化プロセスの区別が明確になるよう工程フロー図等を用いて記載します。各工程について、製造所ごとに実施する内容を明確にし、工程内検査規格や製造条件等を詳細に記載します。
部品再生プロセスでは、医療機関からの受入検査、分解、洗浄、検査、滅菌等の各工程について、性能及び安全性に関する規格欄に記載した内容と関連付けて記載します。
4.2 追跡可能性の確保
再製造プロセスにおいて、シリアル番号等を用いた識別方法により追跡可能性を確保する方法を記載します。製造工程において追跡可能性が失われないよう、各工程での管理方法を明確にします。
複数の使用済み医療機器から部品を組み合わせて再製造する場合は、再生部品の追跡可能性を確保する方法と再製造回数を管理する方法の概要を記載します。
4.3 滅菌方法の管理
部品再生プロセスにおける洗浄及び滅菌の方法等並びに合格基準等を詳細に記載します。滅菌については滅菌方法及び引用する基準を明記し、洗浄については洗浄条件、洗浄剤、洗浄の妥当性を示すための基準やガイドライン等を記載します。
再製造単回使用医療機器の最終滅菌方法についても明確に記載し、構成品ごとに滅菌方法が異なる場合は、それぞれの滅菌方法が分かるよう記載します。
5. その他の留意事項
5.1 承認事項の変更手続き
原型医療機器の承認事項の変更に伴い再製造単回使用医療機器の承認事項を変更する場合、必要となる変更手続きは、原型医療機器の承認事項に係る変更手続きが一部変更承認申請か軽微変更届のいずれであったかを考慮して決定されます。
再製造プロセスは個々の再製造単回使用医療機器ごとに異なるため、承認事項の変更が一部変更承認申請に該当するか軽微変更届に該当するかは一律に判断することが困難です。このため、事前にPMDAが実施する再製造に係る相談等の活用が推奨されています。
5.2 添付資料の取扱い
製造販売承認申請書に添付しなければならない資料については、別途通知される再製造単回使用医療機器の製造販売承認申請における添付資料作成の手引きに従うこととされています。
まとめ
再製造単回使用医療機器の承認申請では、原型医療機器との同等性証明、再生部品・交換部品の明確化、最大再製造回数の設定など、極めて専門的な対応が求められます。さらに、洗浄・滅菌・追跡管理などの各工程を適切に設計し、品質と安全性を維持することが不可欠です。
この制度に基づく承認申請書作成では、厚生労働省通知の理解に加え、PMDAとの事前相談の活用や工程ごとのリスク評価・妥当性確認が成功の鍵となります。通常の医療機器申請と異なり、再製造プロセス固有の要件に精通した対応が求められる点が特徴です。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、再製造単回使用医療機器(R-SUD)承認申請書の作成支援、QMS体制構築、工程設計アドバイス、PMDA相談対応などを包括的にサポートしています。再製造制度への対応でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。