概要

令和5年3月31日、厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課より、再製造単回使用医療機器(再製造SUD)の製造販売後安全対策に関する重要な事務連絡が発出されました。本通知は、再製造SUD基準策定等事業の検討結果を踏まえ、製造販売業者が実施すべき安全対策の考え方を体系的に整理したものです。

再製造SUDとは、医療機関で使用済みとなった単回使用医療機器を回収し、洗浄、滅菌等の再製造工程を経て、再び医療機器として製造販売される製品を指します。この再製造品については、原型医療機器と同等の品質、有効性及び安全性を確保することが求められており、特に製造販売後の安全管理体制の構築が重要となります。

本ガイドラインは、薬機法施行規則で定められた遵守事項に加え、GVP省令、QMS省令、リスクマネジメント規格(ISO 14971)に準拠した安全管理業務の実施方法を具体的に示しており、再製造SUD事業者にとって実務上の指針となる内容となっています。

1. 製造販売後安全対策の法的枠組みと基本要求事項

1.1 薬機法施行規則における3つの基本義務

再製造SUDの製造販売業者には、改正施行規則第114条の54において、以下の3つの重要な義務が課せられています。

第一に、原型医療機器の変更に伴う再製造単回使用医療機器の変更管理(第9号)です。原型医療機器の原材料や設計に変更が生じた場合、再製造SUDの品質等に影響を与える可能性があるため、継続的な監視と必要な措置の実施が求められます。

第二に、原型医療機器の不具合及び回収に関する情報やその他の情報に基づく安全確保措置の実施(第10号)です。再製造工程に由来する不具合情報だけでなく、原型医療機器の安全性情報も収集し、適切に対応することが必要となります。

第三に、原型医療機器の製造販売業者に対する情報提供(第11号)です。再製造SUDで確認された品質等の問題が原型医療機器に起因する可能性がある場合、原型医療機器の製造販売業者への情報提供が義務付けられています。

1.2 品質管理体制の基準(QMS省令・GVP省令)

製造販売業者は、許可要件としてQMS体制省令及びGVP省令への適合が求められます。QMS省令では、品質管理監督システムの構築と継続的な改善が要求され、製品受領者からの意見収集、苦情処理、データ分析等の仕組みを確立する必要があります。

GVP省令では、安全管理情報の収集、検討、必要な措置の立案と実施という一連のプロセスが規定されています。医療関係者、学会、文献、行政機関等から得られる情報を広く収集し、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための措置を講じることが求められます。

1.3 リスクマネジメント規格(ISO 14971)の適用

基本要件基準への適合性確保のため、ISO 14971に準拠したリスクマネジメント活動の実施が必要です。特に第10項「製造及び製造後の活動」では、製造後の段階において医療機器に関連する情報を積極的に収集し、安全性への影響を評価することが規定されています。

収集すべき情報には、製造プロセスの監視から得られる情報、ユーザーからの情報、サプライチェーンからの情報、一般に入手可能な情報等が含まれ、これらを体系的に分析し、必要に応じて製品の変更や市場にある製品への対応を検討することが求められています。

2. 原型医療機器の変更管理における実務的対応

2.1 情報収集体制の構築

原型医療機器の変更情報を継続的に把握するため、複数の情報収集ルートを確立する必要があります。まず、電子的な承認情報提供サービスや印刷物の購入により、承認事項の変更情報を定期的に確認します。

医療機関との連携も重要な要素です。再製造に使用するSUDの収集先である医療機関と密に連携を図り、製品変更に関する情報を適宜入手する体制を構築します。特に届出品目や認証品目の場合、変更情報が公開されていないため、医療機関からの情報提供が不可欠となります。

可能な限り、原型医療機器の製造販売業者からの直接的な情報入手も検討し、添付文書の変更等を通じて製品仕様の変更有無を確認する仕組みを整備することが推奨されます。

2.2 再生部品収集時の検査強化

受入検査において、従来の仕様と異なる部分の有無を日常的に検証する体制の構築が必要です。原材料等の変更に関する情報収集が困難な場合には、収集した原型医療機器に対して適切な頻度で化学分析を実施する等、変更の有無を継続的に確認します。

受入検査で従来製品との相違が確認された場合、承認情報の確認や医療機関からの情報収集により変更内容を特定し、必要な措置を速やかに検討することが求められます。

2.3 変更確認時の対応プロセス

原型医療機器の変更が確認された場合、リスクマネジメントの観点から再製造SUDへの影響を評価します。洗浄方法、洗浄条件、最大再製造回数等の見直しが必要と判断した場合、関連するバリデーションを再度実施し、品質等に問題がないことを検証した上で、承認事項の一部変更承認申請を行います。

再製造工程の見直しが不要と判断した場合でも、原型医療機器の承認事項に変更が発生している以上、再製造SUDの承認事項変更手続きは必須となります。併せて、添付文書の改訂により使用者への情報提供も適切に実施します。

3. 不具合・回収情報への対応と安全確保措置

3.1 不具合等報告への対応

原型医療機器の不具合等報告は直ちに公開されないため、積極的な情報収集が必要です。原型医療機器の製造販売業者が実施する自主回収の前段階として不具合等報告が行われている可能性があることに留意し、早期の情報把握に努めます。

医療機関との連携により、原型医療機器の製造販売業者が配布する安全性情報や添付文書改訂版等の有無を定期的に確認します。また、PMDAのホームページに掲載される各種安全性情報を定期的に確認し、関連情報の収集を行います。

学会、文献、海外での使用状況等、原型医療機器及び再製造SUDの安全性に関連する幅広い情報源からの情報収集も重要です。

3.2 回収情報への対応プロセス

PMDAのホームページで公開される回収情報を継続的に監視する体制を構築します。原型医療機器の自主回収が開始された場合、回収理由、対象ロット、危惧される健康被害等の情報を分析し、適切な措置を検討します。

再製造するSUDに回収対象ロットが含まれる場合、該当製品の所在を速やかに把握し、原型医療機器の製造販売業者への情報提供と共に、対象ロット品を回収します。医療機関に販売済みの再製造品がある場合には、都道府県への報告と自主回収の実施が必要となります。

原型医療機器の回収原因が交換部品や包装、滅菌状態等、再製造SUDに影響しない場合もあるため、回収の要否については適切な検討が求められます。

3.3 安全確保措置の実施と連携

確認された事象について、原型医療機器と再製造SUDの製造販売業者間で認識の相違や対応の違いが発生すると、医療現場の混乱を招く恐れがあります。このため、双方で歩調を合わせた安全確保措置を講じることが重要です。

再製造SUDの使用者に対しても十分な情報提供を行い、安全使用の確保に努めます。特に緊急性の高い事案については、電話等による迅速な連絡を行った上で、書面による正式な情報提供を実施します。

4. 原型医療機器製造販売業者との情報共有体制

4.1 情報提供の基本原則

改正施行規則第114条の54第11号に基づく情報提供は、原則として書面により行い、記録を5年間保存することが義務付けられています。緊急時には電話等による速やかな連絡を行った上で、書面による情報提供を実施します。

再生部品として収集した使用済み原型医療機器において、設計自体に起因すると考えられる品質不良や製造工程に起因する瑕疵等を発見した場合、GVP省令に基づく「安全管理情報」として適切に取り扱い、原型医療機器の製造販売業者への情報提供を行います。

4.2 安全確保措置の協調実施

再製造SUDの製造販売業者が実施する安全確保措置において、その理由が再製造工程に起因することが明らかな場合を除き、措置の根拠となった安全管理情報及び措置内容について原型医療機器の製造販売業者へ情報提供することが求められます。

品質等に関する理由による廃棄、回収、販売停止、添付文書改訂、医療関係者への情報提供等の措置を実施する場合、原型医療機器の製造販売業者と適切に連携し、確実な安全確保措置の実施に努めます。

5. 統合的な安全管理体制の構築

5.1 情報管理システムの統合

製造販売後安全対策においては、QMS省令、GVP省令、リスクマネジメント規格それぞれの要求事項を満たしつつ、効率的で漏れのない管理体制を構築することが重要です。各種情報を一元的に管理し、リスクマネジメントプロセスへのインプット情報として活用します。

製品受領者からの苦情、製造現場からの情報、試験検査部門からの情報、購買先からの情報、行政機関からの情報等、多様な情報源からの情報を体系的に収集し、分析する仕組みを確立します。

5.2 継続的改善への取り組み

収集した情報のレビューを通じて、製品の設計変更、製造工程の改善、検査方法の見直し、教育訓練の適正化、購買管理の徹底等、必要な是正措置・予防措置を展開します。

マネジメントレビューを定期的に実施し、品質管理監督システムの適切性、妥当性及び実効性を確認すると共に、継続的な改善を推進します。複数企業による協業形態においても、統一されたシステムとして安全管理業務を適正かつ円滑に実施することが重要です。

まとめ

再製造単回使用医療機器(再製造SUD)の安全管理は、原型医療機器と再製造SUDという二つの製品を同時に管理する特殊な薬機法対応が求められます。特に、原型医療機器の変更管理、不具合・回収情報への対応、原型医療機器製造販売業者との情報連携など、ガイドラインで求められる実務対応の重要性が高まっています。

また、GVP省令・QMS省令・ISO 14971に沿った安全管理体制の構築は、再製造SUD事業者にとって必須の要件です。安全確保措置の実施、添付文書改訂、変更承認手続きなど、実際の対応には専門的な判断が求められます。

再製造SUD制度の運用や安全管理体制構築について具体的な相談やサポートが必要な場合は、ぜひ弊社(一般社団法人薬事支援機構)へお問い合わせください。実務に即した運用支援や申請手続き、体制構築まで幅広くご支援いたします。

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