概要
令和7年8月18日付けで、厚生労働省医薬局医療機器審査管理課および監視指導・麻薬対策課より、一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」(以下「血行促進用衣」という)に関する質疑応答集(Q&A)の一部改訂が通知されました。本改訂は、令和7年3月10日付けで発出された質疑応答集の内容を一部見直すもので、製造販売届書の記載要件および遠赤外線輻射機能の範囲に関する取扱いを明確化することを目的としています。
今回の改訂では、Q5の回答に新たな段落が追加されるとともに、新たにQ6とA6が追加され、以前のQ6以降が繰り下げられる形となっています。これらの改訂により、血行促進用衣として認められる製品の範囲がより明確化され、製造販売業者が遵守すべき要件が具体的に示されることとなりました。

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1. 改訂の背景と主なポイント
1.1 改訂の経緯
血行促進用衣は、遠赤外線の血行促進作用により疲労や筋肉のこり等の症状改善を行うことを目的とした衣類形状の医療機器です。生地に鉱物等による特殊な加工が施されており、一定程度の遠赤外線を輻射する特性を有しています。この製品については、令和7年3月10日付けで質疑応答集が発出されていましたが、製造販売届書の記載要件や製品範囲についてさらなる明確化が必要との判断から、今回の一部改訂が行われました。
1.2 改訂の主なポイント
今回の改訂における主な変更点は以下の2点です。
第一に、Q5のA5に新たな段落が追加され、製造販売届書における「形状、構造及び原理」欄の記載要件が明確化されました。具体的には、製品のタイプや寸法等を記載する際、その形状の呼称として「長袖シャツ」「長ズボン」「半袖シャツ」「半ズボン」と明確に記載できる範囲の製品のみが血行促進用衣として認められることが示されました。
第二に、新たにQ6とA6が追加され、衣類の一部分のみに遠赤外線輻射機能を有する製品や、プリント・シール等を部分的に施した製品の取扱いが明確化されました。これにより、血行促進用衣として認められる製品の範囲がより厳格に定義されることとなりました。
2. 使用目的・効果の記載に関する要件
2.1 認められる使用目的・効果の範囲
血行促進用衣の製造販売届書における「使用目的又は効果」欄の記載については、自主基準に基づく試験評価を実施し、その適合性を示す根拠を文書化することが前提となります。特に、附属書に定める「家庭用遠赤外線血行促進用衣を用いた血流量の変化に係る評価試験方法」に基づく試験を実施し、定められた基準値を満たしていることの確認が必要です。
使用目的・効果の具体的な記載方法としては、定義に準じて「遠赤外線の血行促進効果により疲労や筋肉のこり等の症状を改善する」と記載する方法、または遠赤外線の血行促進効果によることを記載した上で「血行促進」「筋肉のこり改善」「疲労の回復、改善」「筋肉の疲れを軽減」等と箇条書きにする方法が示されています。
2.2 認められない効果の標榜
一般医療機器は、医薬品医療機器等法第2条第7項において「副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの」と定義されています。すなわち、クラスⅠの医療機器は人体への影響がごく軽微であることが前提となるため、使用目的や効果も使用者への影響がごく限定されたものでなければなりません。
したがって、「筋肉痛、腰痛、生理痛、神経痛、関節炎等の症状改善や消炎効果」「むくみの改善」「代謝の促進」「運動効率の向上」「冷え性の改善」等の記載は、一般医療機器の定義から逸脱する可能性が高く、血行促進用衣の使用目的・効果としては認められません。また、このような効果等を広告や営業資料、インターネットへの情報掲載等に表示して販売行為を行う場合にも、法令違反の疑いが生じることに十分留意する必要があります。
2.3 より強い効果を標榜する場合の対応
遠赤外線の技術を利用した衣類等について、前述のような一般医療機器の範囲を超える使用目的・効果を標ぼうして製造販売したい場合は、「法令上の位置づけがない新たな医療機器」として承認申請することが必要となります。この場合、実際にそのような効果があることを示す臨床試験データ等を適切に収集した上で、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が行う「全般相談」を受けることが推奨されています。
3. 製品形状と遠赤外線輻射機能に関する要件
3.1 被覆範囲の要件
血行促進用衣の定義では、「上半身用及び下半身用があり、それぞれ少なくとも上腕部および大腿部を被覆する」こととされています。また、自主基準では「長袖シャツ/長ズボン/半袖シャツ/半ズボンの形状を有するものだけが該当する」と規定されています。
長袖シャツおよび長ズボンの場合は、それぞれ上腕部および大腿部を被覆する条件を満たしていますが、上半身用の半袖シャツの場合は、想定する使用者において少なくとも上腕部を被覆できる長さの袖丈が必要です。同様に、下半身用の半ズボンの場合は、想定される使用者において少なくとも大腿部を被覆できる長さの股下丈が必要となります。
今回の改訂により、製造販売届書の「形状、構造及び原理」欄において製品のタイプや寸法等を記載する際、その形状の呼称として「長袖シャツ」「長ズボン」「半袖シャツ」「半ズボン」と明確に記載できる範囲の製品のみが血行促進用衣として認められることが明示されました。この要件を満たさない製品については、血行促進用衣としての製造販売届書の提出ができないこととなります。
3.2 遠赤外線輻射機能の範囲
今回の改訂で新たに追加されたQ6とA6により、血行促進用衣に該当する製品の範囲がより厳格に定義されました。衣類の一部分のみにおいて遠赤外線を輻射する機能を有する製品や、当該機能を有するプリントやシール等を部分的に施した製品は、血行促進用衣として認められないことが明確化されています。
血行促進用衣に該当するのは、衣類の全体において遠赤外線を輻射する機能を有する製品であって、少なくとも遠赤外線を輻射する機能を有する部分のみを取り出した場合でも、その範囲がA5に示す「長袖シャツ」「長ズボン」「半袖シャツ」「半ズボン」の要件を満たしている場合に限られます。
この規定により、例えば通常の衣類に部分的に遠赤外線輻射機能を持つ素材をプリントやワッペンとして貼付したような製品は、血行促進用衣としては認められないこととなります。製品全体が遠赤外線を輻射する機能を有していることが必須の要件となっています。
4. その他の重要な実務上の留意点
4.1 原材料等が異なる製品の取扱い
自主基準では、原材料の異なる製品、組成の異なる製品、加工方法(編み方等を含む)の異なる製品は、それぞれ別品目として取り扱う必要があるとされています。したがって、個々に試験等を実施するとともに、製造販売届書もそれぞれ別品目として提出することが求められます。
誤って原材料、組成、加工方法等の異なる製品を同一の製造販売届書に記載して届出していた場合には、原材料の異なるごと、組成の異なるごと、加工方法等の異なるごとに、それぞれの製品を用いて個別に自主基準に基づく試験が適切に実施されていることを確認した上で、製造販売届書の変更手続きおよび新規の届出等によって、届出の内容を整備する必要があります。
4.2 試験方法の見直しと公定規格
自主基準の「赤外線放射特性」に関する試験方法の見直しは、ISO(国際標準化機構)が定めた規格やJIS(日本産業規格)等の公定規格が適切に整備されるまでは行われないことが確認されています。医療機器の基準として採用できる試験方法や基準値等は、標準化された公定規格を根拠とすることが基本的な考え方となるためです。
4.3 使用方法の記載と試験
添付文書における使用方法の記載については、肌着等の上に重ねて着用することを意図するのか、素肌に直接接触させる形で着用することを意図するのか、その具体的な使用方法を明記することが求められています。
両方の着用方法を許容する製品の場合、肌着等の上に重ねて着用したケースと、素肌に直接接触させる形で着用したケースの二とおりの試験を個別に実施する必要があります。双方のデータに有意差がなく、双方ともに基準値を満たしていることをあらかじめ試験によって確認し、その根拠データ等を適正に保管しておくことが前提となります。
4.4 基本要件基準とQMS省令への適合
製造販売業者は、製造販売届書を提出するすべての製品について、医療機器及び体外診断用医薬品の基準(基本要件基準)への適合確認を行う必要があります。個々の要求項目ごとに「適用/不適用の別」を明らかにし、「適合の方法」を定め、その規格基準等の詳細を「特定文書」として明らかにし、規格基準等に基づいて評価や試験等を実施して適合性を確認したことを「適合証拠」として文書化しておくことが求められます。
また、血行促進用衣は「限定一般医療機器」に該当し、限定一般医療機器のみを製造販売する製造販売業者は「限定第三種医療機器製造販売業者」となることから、QMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)において限定一般医療機器に係る製品および限定第三種医療機器製造販売業者について適用される全ての条項についてその適合性を確保する必要があります。
QMS省令第7条の2に規定される「製品標準書」については、製造販売届書と対応する形で整備されている必要があり、基本要件基準を満たしていることを示す文書や記録、また自主基準を満たしていることを示す文書や記録等も含めて、この製品標準書と紐付けされた形で作成・管理されていることが望ましいとされています。
まとめ
今回のQ&A一部改訂により、一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」に関する製造販売届出要件、製品範囲、広告表示の考え方がより明確になりました。特に、製品形状を「長袖シャツ」「長ズボン」「半袖シャツ」「半ズボン」と明確に記載できる範囲に限定した点、そして衣類全体に遠赤外線輻射機能を有することが必須要件であると明示された点は、既存製品の適法性確認にも直結する重要な改訂ポイントです。
また、使用目的・効果の記載は一般医療機器(クラスⅠ)の範囲内に厳格に限定されており、届出内容と広告・ECサイト表示・営業資料の表現に齟齬がある場合には、監視指導の対象となる可能性も否定できません。届出実務だけでなく、表示・販促資料まで含めた総合的な薬機法対応が求められる局面に入ったといえます。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、家庭用遠赤外線血行促進用衣の該当性判断、製造販売届書の作成支援、自主基準試験の整理、広告表示の適法性確認、限定第三種医療機器製造販売業者としてのQMS体制整備まで、実務に即した支援を行っております。「この製品は届出可能か」「部分加工製品は該当するのか」「広告表現はどこまで許容されるのか」といった具体的なご相談にも対応しておりますので、血行促進用衣に関する薬機法対応でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。