概要
本記事では、平成27年2月10日付け薬食機参発0210第1号通知「医療機器の製造販売認証申請書添付資料の作成に際し留意すべき事項について」について解説します。この通知は、医薬品医療機器等法(薬機法)第23条の2の23に基づく医療機器の製造販売認証申請において、施行規則第115条第2項に定める添付資料の取扱いおよび作成上の留意点を示したものです。
医療機器の認証申請を行う際には、登録認証機関に対して適切な添付資料を提出する必要があります。本通知は特定の医療機器を想定したものではなく、医療機器全般に適用される添付資料作成の基本的な考え方と具体的な記載要領を定めています。認証申請業務に携わる薬事担当者や品質保証担当者にとって、申請資料作成の実務上の指針となる重要な通知です。
1. 添付資料の基本的考え方
1.1 STED形式による編集
添付資料は、医療機器規制国際整合化会議(GHTF:Global Harmonization Task Force)において合意されているサマリー・テクニカル・ドキュメント(STED)の形式に従って編集することが求められています。STEDは国際的に標準化された医療機器の技術文書形式であり、この形式を採用することで国際整合性が確保されます。
規格への適合宣言書等の別添となる資料については、「別添資料」として末尾に取りまとめて添付し、資料番号を付すとともに目次を設ける等により、添付する資料が一覧できるように分かりやすく編集する必要があります。なお、別添資料を添付資料の間に編入する形式でも差し支えありませんが、その場合も資料が一覧できるよう編集することが重要です。
1.2 信頼性基準の遵守
提出する資料は、局長通知別紙「製造販売認証申請資料の信頼性基準」または平成17年厚生労働省告示112号第1条第2号に掲げる要件を遵守し、精密かつ客観的な考察がなされたものであることが求められます。
試験成績書を添付する場合は、ISO 17025またはJIS Q17025「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」における試験報告書に対する要求事項のうち、必要な事項が記載されたものでなければなりません。具体的には、題目、試験所の名称、試験所の所在地(外部試験施設で実施された場合)、試験報告書の識別(一連番号等)、試験方法、試験検体情報、試験の実施日、試験の結果、発行者の署名等が必要です。
2. 一般的留意事項
2.1 形式的な要件
添付資料の作成にあたっては、以下の形式的な要件を遵守する必要があります。用紙の大きさは日本工業規格A4とし、記載内容の構成は別添に示す添付資料作成の留意事項に示す順序に従ってまとめます。ページは通しでつけ、表紙の次(表紙の裏面)に略号一覧表を掲載し、続いて添付資料全体の目次を記載します。
2.2 記載上の留意点
記載にあたっては、資料に基づく事実関係と申請者側の考察ないし解釈とを明確に区別することが重要です。さらに、資料に基づくものは正式な添付資料と参考資料との区別を明確にします。重複の記載はできるだけ避け、参照すべき事項の記載箇所を明記するなどの方法を講じます。
厚生労働省の示した基準やガイドライン等のあるものは、それに基づいて実施した試験か否かを明記し、これらと相違している場合にはその部分および理由ならびに妥当性について明記します。JIS、ISO、IEC等の規格についても同様の取扱いとします。
2.3 表記・体裁に関する留意点
できるだけ見出しを用い、また記述はなるべく箇条書きにすることが推奨されています。その際、見出し記号や番号の付け方にも留意が必要です。活字は見やすい大きさのものを使用し、強調する場所等についてはゴシック体等を適宜用います。適切な箇所において改行・改ページを行い、折り込みは特に必要な場合に限り使用します。
測定値等の数値には必ず単位(原則としてSI単位)を明記し、適切な学術用語を使用します。特に翻訳の場合には注意が必要であり、専門家の校閲を受けることが望ましいとされています。図表のタイトルはその内容が明確に判断できるようにし、図表を原著からそのまま引用する場合は原著の資料番号および掲載ページ数を記載します。
統計解析の結果を示す場合には、解析方法を明示し、サンプルサイズ、平均値、標準偏差等の基本的な統計量および検定統計量、p値等の検定結果を記載します。また、必要に応じて点推定値とともに区間推定値も示し、解析結果を図示できる場合はできるだけ図を用います。
3. 添付資料の構成と各項目の留意事項
3.1 品目の総括
品目の総括では、別紙様式1に従い品目の概要を説明します。当該品目の外観が把握できるような写真または図版(CG等)を添付することが求められます。
認証基準への適合性等については、当該品目の「使用目的又は効果」が認証基準に適合していること、認証基準のただし書きに該当しないこと、付帯機能がある場合は認証基準の範囲内の機能であることを説明します。また、法第42条第2項に基づく基準がある場合にはその基準への適合性も説明します。
性能及び安全性に関する規格については、認証基準で引用する規格等および基本要件基準への適合性を示すために用いる規格等を踏まえ、製造販売認証申請書の「性能及び安全性に関する規格」欄に設定した規格の設定根拠について、当該申請品目の有効性、安全性および品質を確保するのに必要かつ十分であることを説明します。
3.2 類似医療機器との比較
類似医療機器との比較は、認証基準のただし書きに該当しないことを説明するための項目です。有効性、安全性、製品の特徴等について、認証基準への適合性に関して類似の届出・既認証(承認)医療機器と比較しながら、それら類似医療機器との相違点が明確になるように記載します。
類似の既認証(承認)医療機器との比較については、使用目的、性能及び安全性に関する規格、使用方法等からみて類似しているものを選択し、可能な限り最新の添付文書等を用いて比較します。比較項目としては、一般的名称、販売名、製造販売業者名、承認・認証年月日、使用目的、原理、原材料、性能及び安全性に関する規格、使用方法、付帯機能、参照した添付文書の作成年月日等が挙げられます。
原材料に関する比較では、JIS T 0993-1等の生物学的安全性評価に係る規格の適用を受ける品目で使用前例のある原材料を用いる場合は、接触部位および接触期間を踏まえた使用前例の有無について説明します。新規の材料を用いる場合にはその理由を説明し、血液・体液・粘膜等に接触せず性能に大きく影響しない原材料の記載については簡潔な記載で差し支えありません。
3.3 基本要件基準への適合性
基本要件基準への適合性については、平成17年厚生労働省告示第122号「基本要件基準」への適合性を示すために用いた規格について、出典、年号、規格番号などとともに一覧表として記載します。基本要件基準適合性チェックリストとして表形式にまとめ、基本要件基準の項目ごとに当該機器への適用または不適用、適合の方法(不適用の場合はその理由)、特定文書の確認、および該当する添付資料または文書番号等の内容について記載します。
基本要件基準への適合性を説明するために用いた規格および基準等を申請品目に適用することの妥当性を説明するとともに、得られた試験結果により基本要件基準への適合性を説明します。また、当該品目が基本要件基準、認証基準、ならびに医療機器の製造管理及び品質管理基準に適合して製造されるものである旨の自己宣言書を添付することが必要です。
3.4 設計検証及び妥当性確認文書の概要
基本要件基準に適合することを示すために用いた規格および認証基準で引用する規格等への適合を証する試験等について記載します。ILAC(International Laboratory Accreditation Cooperation)またはAPLAC(Asia Pacific Laboratory Accreditation Cooperation)に加盟する認定機関によるISO 17025適合の認定を受けた機関、JNLA登録を受けた機関、または登録認証機関自らが認めた機関によって規格への適合を確認されている場合は、その機関が発行する適合証明書を添付することで差し支えありません。
適合証明書によって証明できない場合は、当該規格で規定される試験について試験項目、実施施設、資料番号等を一覧表にし、試験ごとに試験方法および試験結果を一覧表として要約するとともに、当該規格に適合していると判断した理由を説明します。申請品目と同一の機器を試験検体として用いた場合はその旨を説明し、異なる機器を用いた場合は使用した試験検体の妥当性について説明します。
また、実施した安定性または耐久性(放射線滅菌済み医療機器にあっては滅菌による材質劣化に関する事項を含む)に関する試験結果の概略、保管方法および有効期間の設定の要否を含めた考察を記載します。
4. リスクマネジメントと製造に関する情報
4.1 リスクマネジメント
申請品目について、JIS T 14971「医療機器-リスクマネジメントの医療機器への適用」またはISO 14971を参照して実施されたリスクマネジメントの概要を説明します。リスクマネジメントの実施者によってどのような組織および文書に基づいてリスクマネジメント活動が行われたのかについて、表形式を用いて概要を簡潔に記載します。
安全上の措置を講じたハザードについては、申請品目に関連性のあるハザード(類似の医療機器に係るものを含む)であって厚生労働省等から安全対策上の対応を求められたハザードがある場合には、当該ハザードに係るリスク分析の結果および必要な場合には実施したリスク軽減措置について表形式等を用いて簡潔に記載します。
設計開発時に実施したリスクマネジメントにおいて、リスクマネジメント計画で設定したリスクの受容可能性に関する判断基準を用いて残留リスクを受容できないと判断した場合は、その内容を記載するとともに、当該医療機器の使用目的におけるベネフィットが全体的な残留リスクを上回ると最終的に判断した理由を記載します。
4.2 製造に関する情報
製造販売認証申請書に記載した性能及び安全性に関する規格項目に対し、検査工程にて確認している事項について別紙様式2を参考に説明します。内容理解の効率化の観点から、必要に応じて工程フロー等を利用して説明することが推奨されています。
滅菌方法に関する情報については、滅菌バリデーションの実施状況を記載し、無菌性保証水準(SAL)を担保するためのバリデーションに関する宣言書を添付します。エチレンオキサイド滅菌を行う品目の場合は、滅菌後に残留するエチレンオキサイドおよびエチレンクロロヒドリンの試験結果を記載します。
ウシ等由来原材料を使用する場合は、その原材料の原産国、部位、処理方法、必要に応じてTSE資料に関する情報その他の品質・安全性確保の観点から必要な事項を記載します。ヒトおよび動物由来材料を使用する場合には、その起源(ドナースクリーニングの内容を含む)の妥当性を明らかにすることを含め、ウイルスその他の病原体の製造工程中での除去または不活化方法のバリデーションに関する試験についても記載が必要です。
5. 添付文書(案)の作成
5.1 記載事項の確認
認証基準で引用する規格等に設定されている記載事項について、当該事項が記載されていることを説明します。添付文書は医療機器の適正使用を確保するための重要な情報提供手段であり、規格で要求される事項を漏れなく記載することが求められます。
5.2 リスクマネジメント結果の反映
実施したリスクマネジメントの結果、添付文書に注意事項等を反映させた箇所については、リスクに対する対応であることがわかるように記載します。これにより、使用者が潜在的なリスクを認識し、適切な予防措置を講じることが可能となります。
5.3 取扱い説明書等の情報
認証基準で引用する規格等において定められた取扱い説明書などの情報についても記載が必要です。医用電気機器等においては、操作方法、保守点検方法、トラブルシューティング等の詳細な情報を適切に提供することが重要です。
まとめ
本通知「医療機器の製造販売認証申請書添付資料の作成に際し留意すべき事項について」は、製造販売認証申請における添付資料作成の実務ルールを体系的に整理した重要な指針です。STED形式による資料構成、信頼性基準の遵守、基本要件基準への適合性説明、類似医療機器との比較など、審査で確実に確認されるポイントが具体的に示されています。
一方で、実際の申請業務では「どこまで書けば十分か」「既存資料をどう整理すべきか」「類似機器の選定や比較の妥当性」など判断に迷う場面も少なくありません。記載不足や説明の不明確さは、登録認証機関からの照会や審査の長期化につながる可能性があります。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、本通知を踏まえた添付資料の構成整理、STED編集、基本要件基準適合性チェック、類似医療機器比較資料の作成支援まで実務ベースでサポートしています。
製造販売認証申請や添付資料作成でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。