概要
本記事では、平成20年7月10日に厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室から発出された「医療機器及び体外診断用医薬品の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について(その3)」の内容を取り上げます。この事務連絡は、平成20年6月16日付けで発出された同名の事務連絡の一部訂正版として位置づけられています。
本Q&Aは、医療機器および体外診断用医薬品の承認申請、認証申請、届出等に関する実務上の疑問点について、厚生労働省の公式見解を示したものです。みなし承認の取扱い、外国製造業者認定の手続き、FD申請の記載方法、販売名の命名規則、組合せ医療機器の申請方法、そしてQMS調査や中間製品の取扱いなど、多岐にわたる論点が網羅されています。
医療機器の薬事業務に携わる方々にとって、日常業務における判断の拠り所となる重要な文書ですので、各項目の要点を整理してお伝えします。
1. みなし承認に関するQ&A
1.1 旧法下での許可取得者に対するQMS調査の取扱い(Q1・A1)
平成14年の薬事法改正に伴い、旧法第14条の承認を受けていた者がQMS調査を受けた場合の取扱いについて明確化されています。
旧法第14条第1項の承認を受け、かつ旧法第12条第1項(製造業)または第22条第1項(輸入販売業)の許可を受けていない者が、当該品目に係るQMS調査を受けたときは、改正薬事法第14条第1項の承認を受けたものとみなされます。
ここで問題となるのは、旧法第14条の承認を受け、旧法第12条または第22条の許可を取得しているが、平成17年3月31日までに旧法第18条の品目追加許可申請をしておらず、製造品目許可を受けていない場合です。
この場合、旧法第18条は旧法第12条の業態許可の変更についての許可を定めた規定であり、旧法第18条による製造品目追加許可を受けていない品目については旧法第12条の許可を受けていないこととなります。そのため、当該品目に係るQMS調査を受けたときは、改正薬事法第14条第1項の承認を受けたものとみなされます。
承認書に新たにQMS調査を受けた製造所を追加するための変更手続は、承認書全体の記載整備届出の際に合わせて行うか、または記載整備届出に先立って製造所の追加を一部変更承認申請することにより行います。
1.2 みなし期間経過後の承認・品目追加許可取得時の対応(Q2・A2)
旧法による承認申請および品目追加許可申請が行われた品目について、みなし期間を経過した後に旧法の承認および品目追加許可を取得した場合の取扱いも示されています。
この場合、承認取得者は速やかに承認書の記載整備届出を行うとともに、改正薬事法によるQMSの体制を確認することが求められます。
2. 外国製造業者認定に関するQ&A
2.1 外国製造業者認定申請時の添付資料(Q3・A3)
平成19年6月19日付け薬食審査発第0619004号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「外国製造業者の認定申請の取扱い等について」の1に関連して、医療機器及び体外診断薬に係る外国製造業者の認定申請に添付すべき具体的な資料について質問が寄せられています。
回答として、以下の通知およびQ&Aに示されたとおり取り扱うこととされています。
- 平成17年7月7日付け薬食機発第0707001号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「医療機器及び体外診断用医薬品に関する外国製造業者の認定の申請に添付すべき資料について」
- 平成17年7月7日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室事務連絡「医療機器及び体外診断用医薬品に関する外国製造業者の認定の申請に添付すべき資料に関するQ&Aについて」
- 外国製造業者認定申請添付資料Q&Aその2
2.2 登録免許税納付時の収入印紙の取扱い(Q4・A4)
平成19年厚生労働省令第41号による改正後の薬事法施行規則様式第18「外国製造業者認定申請書」には収入印紙を貼付する欄がありますが、登録免許税を納付した場合には、当該欄に収入印紙を貼付する必要はないと理解してよいかという質問です。
回答は「差し支えない」とされています。ただし、登録免許税として納付しているので、収入印紙を貼付する必要はありませんが、登録免許税法(昭和42年法律第35号)第21条にあるとおり当該納付に係る領収証書(原本)を当該登記等の申請書に貼付して提出することが必要です。
領収証書を必要とする場合においては、申請時に別途領収証書の写しを独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「総合機構」という。)に提出すれば、原本を受領した旨の受領印を当該写しに捺印して返却するので、これを保管することとされています。
2.3 製造所名称のみの変更と軽微変更届出(Q5・A5)
承認(認証)書に記載のある製造所(または外国製造業者)の名称を変更する場合、軽微変更届出のみにより変更できる事例について明確化されています。
人員(QMS体制)および構造設備に変更がなく、製造所(または外国製造業者)の名称のみの変更にあっては、軽微変更届出によることができます。
ただし、法人格の変更により製造所(または外国製造業者)の名称が変更される場合は、新規に製造業許可(または外国製造業者認定)を取得する必要があることに留意が必要です。この場合、製造業許可(または外国製造業者認定)取得後に、承認(認証)書に記載されている製造所の名称に加えて製造業許可番号(または外国製造業者認定番号)についても軽微変更届出により変更することができます。
3. FD申請および販売名に関するQ&A
3.1 FD申請における適合性調査情報の記載方法(Q6・A6)
FD申請の場合には、製造販売する品目の製造所に対する適合性調査の有無を入力することとされていますが、紙での申請の場合には、備考欄に記載することでよいかという質問です。
回答は「差し支えない」とされています。具体的には、製造所の名称、適合性調査の有無、適合性調査申請提出予定先を記載します。適合性調査「無」の場合には、その根拠を記載します。製造販売する品目に対して複数の製造所がある場合には、それぞれについて記載します。また、原材料の製造所や外部試験検査施設、外部設計開発管理機関について承認申請書に記載した場合も同様に記載します。
3.2 FD申請における所在地欄の入力(Q7・A7)
FD申請の際、設計を行った事業所の所在地欄に何も入力しないとエラーになりますが、この欄に何も記載しない場合は同欄に「-」(ハイフン)を入力することでよいか、また、軽微変更により設計を行った事業所の所在地を削除する場合も同様にハイフンを入力することでよいかという質問です。
回答は「差し支えない」とされています。
3.3 体外診断用医薬品における複数販売名の取扱い(Q8・A8)
販売名のみが異なる複数の体外診断用医薬品を製造販売したい場合、販売名ごとに承認(または認証)を受けること又は製造販売届出を行うことが必要かという質問です。
回答は「必要である」とされています。販売名については一物一名称が原則ですが、妥当な理由により一物多名称のものを申請する場合は、平成17年2月16日付け薬食機発第0216005号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「体外診断用医薬品の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」の第1の1.の(2)の4)(又は平成17年3月31日付け薬食機発第0331010号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「体外診断用医薬品の製造販売認証申請に際し留意すべき事項について」の第1の1.の(2)の4))に記載のように、販売名ごとに申請を行い、その説明資料を申請書に添付します。
3.4 医療機器の販売名におけるアルファベットのみの使用(Q9・A9)
医療機器について、アルファベットのみで構成される販売名を用いることができるかという質問です。
回答として、英文字のみ(又は英文字、数字、記号のみの組み合わせ)のもの、又はほとんど英文字のものは適当でないとされています。
3.5 販売名の変更と一部変更承認申請(Q10・A10)
機器承認申請留意事項通知の別紙2の1.一般的事例(1)において、「原則として、次のような変更で、その医療機器の本質を損なうものでない場合は承認事項一部変更承認申請による。」とされている中に(イ)として「名称」が記載されています。この「名称」には、販売名の変更も含まれると理解してよいかという質問です。
回答は「差し支えない」とされています。
4. 組合せ医療機器に関するQ&A
4.1 キット製品の構成品変更と軽微変更届出(Q11・A11)
承認を受けた品目を組み合わせたもの(例えば消毒薬を組み合わせたキット製品)として承認を受けた品目において、その構成品(医薬品)の一つについて名称変更の代替新規申請が行われ、当該構成品の販売名及び承認番号が変わる場合は、軽微変更届出を行うことでよいかという質問です。
回答は「差し支えない」とされています。ただし、軽微変更届の備考欄には「構成品○○の代替新規承認に伴う変更」との旨を記載し、代替新規であることを証する書類として、代替新規の承認申請書の写しと承認書の写し(新旧の販売名、承認番号等が判る部分のみで可。)を添付します。
4.2 認証基準が定められた医療機器同士の組合せ(Q12・A12)
「歯科合着用グラスポリアルケノエート系レジンセメント」と「歯面処理材」の組合せのように、それぞれ認証基準が定められており該当する認証基準に適合する医療機器同士を組合せた医療機器については、それぞれの医療機器について認証を受けていない場合であっても、組合せ通知に基づいて、認証申請することは可能かという質問です。
回答として、認証申請可能であるとされています。あらかじめ医療機器同士を接続しているもの(組立工程を有するもの)等組合せ通知の対象外の製品でなければ、組合せ通知に基づき認証申請することができます。この場合、一般的名称欄は、主たる性能から判断してもっとも適切な一般的名称を記載し、該当する一般的名称のすべてを備考欄に記載します。
なお、既認証医療機器(申請時点において認証申請中である場合を含む。)を組み合わせる場合には、組合せ通知の2.(2)に基づいて簡略記載が可能ですが、質問のように認証を受けていない医療機器を組み合わせる場合には、組合せ通知の2.(1)に基づいて必要な事項をすべて記載する必要があることに留意が必要です。
4.3 認証基準のない組合せ品の一般的名称記載方法(Q13・A13)
Q12に関連して、本Q&Aでは訂正版の内容が示されています。組み合わせる医療機器が「歯科用金合金」と「歯科用金銀パラジウム合金」であり、組合せ品として適切な「歯科用合金キット」という一般的名称が存在するが、「歯科用合金キット」には認証基準が定められていない場合、認証申請書の記載はどのようにしたらよいかという質問です。
回答として、一般的名称欄には、認証基準の定められている一般的名称を記載します。すなわち、「歯科用合金キット」ではなく、主たる性能から判断して「歯科用金合金」又は「歯科用金銀パラジウム合金」のいずれかの一般的名称を記載します。また、該当するすべての一般的名称及び適合性認証基準名を、備考欄に記載します。
なお、Q12及びQ13は接続しているもの(組立工程を有するもの)を除く組合せ事例に限定したものですが、あらかじめ医療機器同士を接続している組合せ医療機器についても、別途通知にて取扱いを定める予定であるとされています。
5. その他の実務的なQ&A
5.1 添付文書(案)の添付省略(Q14・A14)
機器承認申請留意事項通知の記の第2の12備考欄(10)によれば、承認申請時には添付文書(案)を添付することとされています。では、医薬品として承認申請されるプレフィルドシリンジ製剤に使用される注射筒部分について別途医療機器としての申請を行う場合で、最終的なプレフィルドシリンジ製剤自体は添付文書(案)を添付して申請されている場合、製造専用であって、製造販売されることのない注射筒部分の申請に当たっては、医療機器の承認申請書に添付文書(案)を添付しなくてよいかという質問です。また、機器認証申請留意事項通知の記の第1の12備考欄(7)及び機器製造販売届出留意事項通知の記の第2その他の1についても同様と考えてよいかという質問です。
回答として、「貴見のとおり」とされています。申請書の備考欄に「別途、本医療機器を原材料等として製造される最終製品の申請にあたり当該最終製品としての添付文書(案)を添付するため、本申請においては添付文書(案)を添付しない。」旨を記載します。なお、認証申請及び製造販売届出においても同様です。
5.2 定期QMS調査申請の手数料計算(Q15・A15)
定期QMS調査申請を総合機構へ行う際の手数料が「基本」と「品目追加」に分かれていますが、「基本」の金額の中には1品目分の手数料が既に含まれているのかという質問です。
回答として、「含まれていない」とされています。基本単価については、複数の調査区分がある場合には最も上位の区分を基本単価とします。品目追加単価については、それぞれの品目の区分の単価に品目数を乗じて得た金額とします。基本単価に品目追加単価を加算した金額が定期調査における適合性調査の手数料金額となります。
なお、各都道府県のQMS調査の手数料については、個別に問い合わせることとされています。
5.3 製造販売業者の吸収・合併時のQMS調査(Q16・A16)
製造販売業者の吸収、合併等に伴う承認の承継については、当該製造所の人員(QMS体制)及び構造設備に変更がない場合は、承継時のQMS調査申請は必要とせず、その後の被承継者のみなしの製造販売業許可の有効期限までに行う定期QMS調査等を受ければよいかという質問です。
回答として、「貴見のとおり」とされています。
5.4 滅菌品の中間製品を他製品の原材料として使用する場合(Q17・A17)
滅菌品として認証を受けた医療機器Aについて、滅菌を行う前の中間製品を他の医療機器Bの原材料又は構成品として製造に用いることは認められるか、また、この場合、医療機器Bの承認(又は認証)申請書において医療機器Aの中間製品の記載を簡略記載とすることは認められるかという質問です。
回答として、「認められる」とされています。ただし、医療機器Bの承認(又は認証)申請書においては、医療機器Aの未滅菌品を用いることを明記します。また、医療機器Aの滅菌方法と医療機器Bにおける医療機器Aの滅菌方法が異なる場合には、放射線滅菌の場合における材質劣化等の安定性に関する資料等、然るべき資料を添付します。
申請書の記載方法については、「形状、構造及び原理欄」は機器承認申請留意事項通知第2の4を、「原材料又は構成部品欄」は同通知第2の5を、「製造方法欄」は同通知第2の8のケを鑑みること(医療機器Bが認証品である場合はそれぞれ機器認証申請留意事項通知の第1の4、第1の5及び第1の8を鑑みること)とされています。なお、医療機器Aの製造所については、医療機器Bの承認申請書の製造所欄への記載は不要です。
また、中間製品については、製造販売される医療機器ではないことが明らかとなるよう、表示等の取扱いに十分留意することとされています。
5.5 外国製造業者の役員変更届出の廃止(Q18・A18)
平成19年3月30日付け薬食発第0330012号厚生労働省医薬食品局長通知「薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行について」第1の2によると、「外国製造業者が法人であるときは、その業務を行う役員の氏名が変更された場合には、変更の届出をしなければならないとしたこと。」とありますが、外国製造業者認定申請添付資料Q&Aその2のQ&A10は、廃止されたと考えてよいかという質問です。
回答として、「貴見のとおり」とされています。
5.6 製造所変更迅速化通知に基づく承認申請の添付資料概要(Q19・A19)
製造所変更迅速化通知に基づく承認申請においては、添付資料概要は提出する必要があるのかという質問です。
回答として、「提出する必要はない」とされています。
5.7 製造所変更迅速化通知の適用対象外となる場合の添付資料(Q20・A20)
製造所の変更・追加のみの一部変更承認申請であって、製造所変更迅速化通知の適用対象から外れる場合(当該通知の記2.①から④に該当する場合)、承認申請時の添付資料はどのようなものを提出すればよいかという質問です。
回答として、製造所変更迅速化通知の別添1の1.に示される資料に準じたもので良いとされています。なお、添付資料概要については、Q19と同様であり、提出する必要はありません。
5.8 高度管理医療機器等営業管理者の継続的研修受講(Q21・A21)
厚生労働大臣の登録を受けた者が行う講習を受講し、新たに高度管理医療機器等営業管理者又は医療機器の修理業の責任技術者(以下「管理者等」という。)となった者については、同一年度に限り継続的研修の受講は不要としてよいかという質問です。
回答として、「原則、毎年度の受講が必要である」とされています。ただし、管理者等となった同一年度の残期間に継続的研修が実施されていない等、継続的研修を受講する機会がない場合は、次年度の継続的研修を受講することで差し支えないとされています。
まとめ
本Q&Aは、医療機器および体外診断用医薬品の承認申請に関する厚生労働省の公式見解を整理した重要な資料であり、申請手続・記載方法・外国製造業者認定・組合せ医療機器・QMS調査など、実務で頻出する論点を体系化しています。
特に、みなし承認制度や製造所変更、販売名の命名、FD申請の記載方法などは、申請スキームの誤解や手続き遅延につながりやすい要素であり、最新の通知や運用解釈を踏まえた判断が求められます。
本記事で取り上げた通知は過去のものも含まれており、その後の改正通知やPMDA運用により一部の取扱いが変わっている可能性があります。医療機器の承認申請・認証申請・製造販売届出、QMS適合性調査、外国製造業者認定、組合せ医療機器の取扱いでお悩みの場合は、弊社(一般社団法人薬事支援機構)へお気軽にご相談ください。最新動向を踏まえて最適な手続きや実務対応をご提案いたします。