概要
平成26年9月25日、厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)より、医療機器及び体外診断用医薬品の承認番号及び認証番号の付与方法に関する重要な通知が発出されました。本通知は、同一の医療機器について複数の販売名が必要な場合の番号付与方法と、薬事法改正に伴う認証取得者の地位承継時における番号の取扱いを明確に定めたものです。
医療機器製造販売業者にとって、承認番号や認証番号は製品管理の根幹をなす重要な要素です。特に複数の販売名を持つ製品や、企業の合併・事業承継などで認証の承継が発生する場合、番号体系の一貫性を保ちながら適切に管理することが求められます。本通知により、これまで不明確だった番号付与の詳細なルールが明文化され、業界全体での統一的な運用が可能となりました。
1. 通知の背景と目的
本通知が発出された背景には、二つの重要な制度変更があります。
第一に、「医療機器の複数販売名に係る製造販売承認(認証)に関する取扱いについて」(平成17年7月7日付け薬食機発第0707003号)により、同一医療機器について販売名のみ異なる複数の申請を行う場合の取扱いが定められていました。この制度は、OEM供給や複数ブランドでの販売展開を行う企業にとって重要な仕組みですが、承認番号の付与方法について詳細な規定が必要とされていました。
第二に、平成26年11月25日に施行された薬事法等の一部を改正する法律により、医療機器及び体外診断用医薬品に係る認証取得者の地位の承継規定が整備されました。この法改正に伴い、「医療機器及び体外診断用医薬品の認証の承継手続について」(平成26年9月25日付け薬食機参発0925第1号)が発出され、承継に伴い登録認証機関を変更する場合の具体的な手続きが示されました。
これらの制度変更を受けて、承認番号及び認証番号の付与方法を体系的に整理し、明確なルールとして定める必要が生じました。本通知は、複数販売名申請と認証承継という二つの重要な場面における番号付与方法を詳細に規定することで、医療機器業界における番号管理の透明性と一貫性を確保することを目的としています。
2. 複数販売名に係る承認(認証)番号の付与方法
2.1 基本となる番号付与方法
複数販売名通知に基づき承認または認証される医療機器のうち、申請書の添付資料が省略されていない医療機器については、通常の承認・認証と同様の番号付与方法が適用されます。具体的には、承認番号または認証番号の下3桁(サブ番号)を「000」として付与します。
例えば、「22600BZX12345000」という形式で番号が付与されます。この番号は、当該医療機器の基準となる承認・認証を示すもので、親品目として位置づけられます。
2.2 添付資料が省略される場合の番号付与方法
複数販売名通知に基づき承認または認証される医療機器のうち、申請書の添付資料が省略されている場合は、特別な番号付与方法が適用されます。
サブ番号以外の13桁の番号は、基準となる承認・認証番号と同一とします。その上で、サブ番号については当該医療機器の承認または認証ごとに、アルファベットと数字による連番を付与します。
具体的な付与ルールは以下の通りです。
- サブ番号は「A01」から始まり、「M99」まで使用可能です
- 上1桁目のアルファベットは、AからMまでを順番に使用します
- 下2桁の数字は01から99まで連番で付与します
- アルファベット「I(アイ)」は数字の「1」と混同する恐れがあるため使用しません
- 下2桁「00」は親品目と区別するため使用しません
番号付与の具体例を示すと、「22600BZX12345A01」「22600BZX12345A02」と順に付与され、「22600BZX12345A99」の次は「22600BZX12345B01」となります。このようにアルファベットを切り替えながら、最大で「22600BZX12345M99」まで付与することが可能です。
この番号体系により、一つの親品目に対して理論上最大で1,188個の子品目を設定することができます(12文字×99番号)。これは、大規模なOEM供給や多数の販売チャネルを持つ医療機器メーカーにとって、十分な番号容量を提供するものとなっています。
3. 承継における認証番号の取扱い
3.1 医療機器の承継時の番号付与
承継した医療機器及び体外診断用医薬品は、原則として承継前の品目と同一の認証番号を使用します。これにより、製品の継続性と追跡可能性が確保されます。
しかし、承継に伴い登録認証機関を変更する場合は、特別な番号付与方法が適用されます。複数の販売名を持たない変更品目については、既に付与された承継前の品目の認証番号のサブ番号のうち、上1桁目の「0(ゼロ)」を「Z」に変更します。
例えば、承継前の品目の認証番号が「224AZBZX12345000」の場合、変更品目の認証番号は「224AZBZX12345Z00」となります。この変更により、登録認証機関が変更されたことが番号上で識別可能となります。
3.2 複数販売名を持つ医療機器の承継
複数販売名通知に基づき認証された医療機器を承継する場合、より複雑な番号変換ルールが適用されます。
基本的には、サブ番号の上1桁目を「Z」に変更しますが、承継前の子品目が100品目以上存在する場合(サブ番号の上1桁目が「B」以降のアルファベットが付与されているもの)は、特別な対応表に従って変換します。
変換の対応表は以下の通りです。
- 承継前「A」→ 変更後「Z」
- 承継前「B」→ 変更後「Y」
- 承継前「C」→ 変更後「X」
- 以下、アルファベットを逆順に対応させ
- 承継前「M」→ 変更後「N」
この変換ルールにより、大量の子品目を持つ医療機器であっても、承継後の番号体系の一貫性が保たれます。また、「O(オー)」は数字の「0(ゼロ)」と混同する恐れがあるため使用されません。
3.3 体外診断用医薬品の承継
体外診断用医薬品の承継における認証番号の取扱いも、基本的に医療機器と同様のルールが適用されます。
承継に伴い登録認証機関を変更する体外診断用医薬品については、既に付与された承継前の品目のサブ番号のうち上1桁目の「0(ゼロ)」を「Z」に変更した上で、他の箇所は同一の番号で新たに付与します。
例えば、承継前の品目の認証番号が「224AZAMX12345000」の場合、変更品目の認証番号は「224AZAMX12345Z00」となります。
4. 実務上の留意点
4.1 番号管理システムの構築
本通知に基づく番号体系を適切に運用するためには、企業内での番号管理システムの構築が不可欠です。特に複数販売名を扱う企業や、M&Aによる事業承継が予定されている企業では、以下の点に留意する必要があります。
番号の重複を防ぐため、付与済み番号のデータベース化と新規付与時の照合システムの構築が重要です。また、承継時の番号変換を正確に行うため、変換ルールを組み込んだ管理システムの整備が推奨されます。
4.2 登録認証機関との連携
認証番号の付与や変更に際しては、登録認証機関との密接な連携が必要です。特に承継に伴う登録認証機関の変更時には、新旧両機関との調整を適切に行い、番号の連続性を確保することが重要です。
過去に変更品目として認証番号を付与された医療機器については、同一の認証番号を用いることとされているため、過去の付与履歴の確認も必要となります。
4.3 規制当局への報告
承認番号や認証番号の変更は、規制当局への適切な報告が必要です。都道府県の薬務主管課や地方厚生局への届出時には、本通知に基づく番号付与であることを明確に示す必要があります。
また、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への各種申請や報告においても、正確な番号記載が求められます。
まとめ
承認番号および認証番号の付与方法に関する本通知は、複数販売名を持つ医療機器や、事業承継・M&Aに伴う番号の取扱いを明確に定めたものです。これにより、医療機器業界における番号管理の透明性と一貫性が強化され、規制遵守とトレーサビリティの確保に直結する実務的な指針が整備されました。
特に、複数ブランド展開を行う企業や、承継時に登録認証機関が変更となるケースでは、サブ番号の付与や変換ルールの理解が欠かせません。誤った運用は承認・認証上の不整合や当局対応の遅延につながる可能性があるため、社内の番号管理体制の整備や、担当者間でのルール共有が重要となります。
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