概要
本記事では、平成25年3月29日に厚生労働省から発出された「希少疾病用医療機器等に関する臨床試験データの取扱いの明確化について」(薬食機発0329第1号)について解説します。
この通知は、希少疾病用医療機器の製造販売承認申請における臨床試験データの取扱いを明確化したものです。希少疾病用医療機器は対象患者数が限られているため治験実施が困難な場合が多く、本通知では治験を新たに実施しなくても承認申請が可能となる条件や、製造販売後に求められる対応について指針が示されました。
1. 本通知発出の背景
厚生労働省は、医療機器の特性を踏まえた合理的な規制制度の構築を目指し、平成24年2月に「医療機器規制制度タスクフォース」を立ち上げました。このタスクフォースでは医療機器業界と意見交換が行われ、得られた結論は速やかに運用改善されることとなりました。
希少疾病用医療機器とは、薬事法第77条の2の規定により指定されたものを指します。これらの医療機器は患者数が少ない希少疾病を対象としているため、十分な症例数を集めて治験を実施することが困難です。
2. 治験を新たに実施しなくてもよい場合
2.1 基本的な考え方
医療機器の承認審査では、疾患の重篤性や既存療法との比較等を含めてリスクベネフィットを総合的に評価することが重要です。本通知では、有効性及び安全性等に関するデータを収集・活用することで科学的な評価が可能と判断されれば、新たに治験を行う必要がない場合があることが示されました。
対象となる「希少疾病用医療機器等」には、指定された希少疾病用医療機器に加え、当該指定基準に準じるものも含まれます。
2.2 具体的な事例
新たに治験を行う必要がない場合として以下の4つが示されています。
(ア)外国において既に承認され、相当の使用実績があり、承認申請資料が入手できる場合。「外国」とは、本邦と同等の水準にある承認制度を有している国(例えば米国)を指します。
(イ)外国において承認され相当の使用実績があり、国際的に信頼できる学術雑誌に掲載された論文又は国際機関で評価された総説等がある場合。
(ウ)公的な研究事業の委託研究又は先進医療により実施されるなど、倫理性、科学性及び信頼性が確認し得る試験成績がある場合。
(エ)既承認の希少疾病用医療機器の一部変更承認申請であって、変更により安全性の向上が見込まれるが、治験の実施が困難あるいは必要性が低いと考えられる場合。
2.3 対面助言の活用
上記の事例に該当する可能性がある場合は、あらかじめPMDAの対面助言(薬事戦略相談等)を活用することが推奨されています。
3. 製造販売後の調査等について
3.1 製造販売業者に求められる対応
希少疾病用医療機器等は承認時点での臨床データが限られているため、製造販売後の安全対策が重要です。製造販売業者には、使用成績調査等における使用患者の登録を行い、有効性及び安全性等に関するデータを収集し安全対策に活用することが求められます。
また、関連学会等と連携した使用要件の策定や、製造販売後に想定し得ない不具合等が生じる可能性について医療関係者や患者へ情報提供を徹底することが求められます。
3.2 承認条件について
上記の事項等は承認条件として付される場合があります。承認条件が付された場合、製造販売業者は情報収集や情報提供等の対策を講ずることにより保健衛生上の危害防止を図ることが求められます。
4. 関連通知の改正
本通知の発出に伴い、「医療機器の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」(平成17年2月16日付け薬食機発第0216001号)の一部が改正され、臨床試験データの必要な範囲等については本通知によることとされました。
まとめ
本通知は、希少疾病用医療機器の承認申請における臨床試験データの取扱いを明確化し、治験を実施せずに申請可能となる条件や、外国承認実績・学術文献の活用基準、製造販売後に必要な安全対策を体系的に示した重要な指針です。希少疾病領域は症例数が極めて限られるため、通知内容を正しく踏まえた申請戦略の立案が承認取得の成否を大きく左右します。
特に、治験省略の可否判断、既存データの科学的妥当性評価、製造販売後調査計画の策定などは個別性が高く、製品特性に応じた慎重な検討が不可欠です。また、PMDAへの相談タイミングや申請資料の構成も、適切に設計することで審査の円滑化が期待できます。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、希少疾病用医療機器の承認申請、治験省略の可否判断、既存データの評価、PMDA相談支援、製造販売後調査計画の策定までトータルでサポートしています。
希少疾患領域の申請でお困りの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。最適な申請戦略をご提案いたします。