概要
厚生労働省は令和7年4月1日付けで、医薬品等の承認・許可等に係るオンライン申請で使用する電子証明書について、その取扱いを一部変更する通知を発出しました。この変更は、認証局の事業者変更に伴うもので、使用可能な電子証明書の名称が一部変更されています。
本通知により、従来の「申請書等のオンライン提出に係る取扱い等について」(令和5年3月22日付け通知)は廃止され、新たな取扱いが示されました。医薬品等の製造販売業者、製造業者等の関係事業者は、今回の変更内容を確認し、適切に対応する必要があります。
1. オンライン提出制度の概要
1.1 制度の位置づけと法的根拠
医薬品等のオンライン申請は、「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」(デジタル手続法)第6条第1項に基づいて実施されています。この制度により、従来の書面による申請に代えて、電子的な方法で申請書等を提出することが可能となっています。
オンラインで提出された申請等は、薬機法および関係法令の規定に従って行われたものとみなされ、書面で提出した場合と同等の法的効力を有します。
1.2 使用するシステム
申請書等のオンライン提出には、以下のシステムを使用します。
- 医薬品医療機器申請・審査システム:行政機関側で申請の受付・審査を行うシステム
- 申請電子データシステム(ゲートウェイシステム):申請者が申請書等を提出するためのシステム
ゲートウェイシステムは、PMDAのウェブサイトhttps://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/p-drugs/0030.html
1.3 申請書等の作成方法
申請者は、FD申請ソフトウェアまたは医療機器WEB申請プラットフォーム(DWAP)を使用して申請書等の電子ファイルを作成し、ゲートウェイシステムを通じて提出できます。
2. 電子証明書の取扱い変更
2.1 変更の背景
今回の通知における主要な変更点は、オンライン提出で使用する電子証明書に関するものです。電子証明書は、申請者の本人確認とセキュリティ確保のために必要不可欠なものであり、「電子署名及び認証業務に関する法律」に基づく認証局が発行する証明書を使用することが義務付けられています。
2.2 使用可能な電子証明書の変更内容
変更前後の電子証明書は以下のとおりです。
認証局名 | 電子証明書名 |
一般財団法人医療情報システム開発センター | Medicertified電子証明書(Type-V) |
一般財団法人医療情報システム開発センター | Medicertified電子証明書(Type-S) |
サイバートラスト株式会社 | サイバートラスト パーソナルID |
GMOグローバルサイン株式会社 | マネージドPKI Lite |
デジサート・ジャパン合同会社 | Secure Email for Business |
この変更は、電子証明書の取扱事業者の変更に伴うものであり、証明書の機能や使用方法に変更はありません。
3. オンライン提出の対象となる申請書等
3.1 対象書類の範囲
オンライン提出の対象となる書類は、薬機法規則第284条第1項に定める様式による届書をはじめ、通知により定められた様式による書類など、幅広い申請・届出書類が含まれます。
主な対象書類には以下のものがあります。
- 製造販売業・製造業の許可申請書、更新申請書
- 医薬品等の製造販売承認申請書、一部変更承認申請書
- 適合性調査申請書、区分適合性調査申請書
- 外国製造業者の認定・登録申請書
- 治験届出書類
- 安全性定期報告書
3.2 添付資料の取扱い
オンライン提出する申請書等に添付すべき資料は、原則として電子ファイル(PDF等)で提出します。やむを得ない事情により電子化できない場合は、書面を別途提出することも可能ですが、その場合はゲートウェイシステムで付与された番号と書類一覧を明記した書面を添付する必要があります。
3.3 開始時期
オンライン提出の開始時期は、申請書等の種類により異なります。令和3年7月から順次開始され、現在も段階的に対象が拡大されています。具体的な開始時期は、通知の別表3(サイト下部にPDFがございます)および別表4に詳細に記載されています。
4. 申請書等の到達と受付
4.1 到達時点の定義
申請書等がオンラインで提出された場合、「申請・審査システム等のサーバに記録された時」が到達時点となります。この時点で申請等の手続きが法的に開始されたものとして取り扱われます。
4.2 受付票の発行
行政機関による受付が完了すると、受付日やシステム受付番号等を記載した受付票が発行されます。申請者はゲートウェイシステムからこの受付票を取得でき、他の手続きにおいて申請等が行われたことを証する書類として使用できます。
4.3 届出書等の形式審査
期限の定めがある届出書等については、到達日以降の開庁日における確認で形式上の要件に適合していないと認められた場合、手続上の義務が履行されたことにはなりません。そのため、申請者は記載事項の不備や必要書類の添付漏れがないよう、十分な確認が必要です。
5. 実務上の留意点
5.1 電子証明書の準備
オンライン提出を行うためには、事前に指定された認証局から電子証明書を取得する必要があります。証明書の取得には一定の期間を要するため、余裕を持って準備することが重要です。
5.2 システムの利用登録
ゲートウェイシステムの利用には事前登録が必要です。令和3年5月14日から利用登録が開始されていますので、まだ登録していない事業者は早めに手続きを行う必要があります。
5.3 書面提出が必要な場合
一部の添付資料については、引き続き書面での提出が必要な場合があります。通知の別表2に該当する書類がある場合は、オンライン提出と併せて書面も提出する必要があることに注意が必要です。
まとめ
今回の通知により、医薬品等のオンライン申請で使用する電子証明書の取扱いが一部変更されました。主な変更点は認証局名と電子証明書名の変更であり、申請手続きやシステムの使用方法には大きな変更はありません。
オンライン申請制度は、行政手続きの効率化と申請者の利便性向上を目的として今後さらに拡充が見込まれます。電子証明書の取得やシステム利用登録、添付資料の取扱いなど、事前準備が必要な点も多く、最新の運用方針に応じた対応が重要です。
変更内容の詳細確認や実務対応に不安がある場合は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。貴社の状況に合わせたサポートをご提供いたします。