概要

医療機器の製造販売を行うためには薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づく認証や承認が必要となります。本記事では、特に認証制度に焦点を当て、医療機器の製造販売に関わる基本的な法規制の枠組み、認証基準の考え方、申請手順について解説します。医療機器業界の初心者から実務担当者まで役立つ内容となっています。認証申請を成功させるためのポイントや注意事項も含め、医療機器認証申請の全体像を把握するための知識を提供します。

1. 薬機法における認証制度の基本

1.1 医療機器の定義

薬機法第2条4項によれば、医療機器とは「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く)であって、政令で定めるもの」と定義されています。

医療機器に該当する例としては、ペースメーカー、輸液ポンプ、電子・水銀体温計、真空採血管、針を含む輸液セットなどがあります。一方、一般に用いられるマスク(政令で医療機器として定められていない)やEMS(Electronic Muscle Stimulation)は医療機器に該当しません。

1.2 医療機器の製造販売に必要な条件

医療機器を製造販売するためには、以下の条件を満たす必要があります:

  • 製造販売業許可の取得(クラス分類に応じた許可区分)
  • 製造所の登録
  • 品目ごとの承認・認証の取得
  • QMS(Quality Management System)省令への適合

製造販売業許可は、高度管理医療機器には第一種医療機器製造販売業許可、管理医療機器には第二種医療機器製造販売業許可、一般医療機器には第三種医療機器製造販売業許可が必要となります。

1.3 認証制度の位置づけ

高度管理医療機器(クラスⅢ)や管理医療機器(クラスⅡ)の中で、厚生労働大臣が基準を定めて指定したもの(指定高度管理医療機器等)については、登録認証機関による認証を受けることで製造販売が可能となります。認証制度は、基準が明確な医療機器について審査の効率化を図るために設けられています。

2. 認証基準の理解

2.1 認証基準の構成

認証基準は厚生労働省告示第112号に規定されており、高度管理医療機器は別表第一、管理医療機器は別表第二または別表第三に基準が示されています。認証基準には以下の要素が含まれます:

  • 基準に適合する医療機器の一般的名称
  • 日本産業規格(JIS)または国際電気標準会議(IEC)が定める規格
  • 使用目的または効果

これらの基準に適合し、かつ基本要件基準にも適合することが認証の条件となります。

2.2 基本要件基準との関係

認証基準と基本要件基準はそれぞれ独立した基準であり、両方への適合を示す必要があります。医療機器の基本要件適合性チェックリストにおいては、認証基準で引用されるJIS等の規格が部分的に引用されることがありますが、その場合でも当該JIS等についてはフル適合が求められます。

2.3 認証基準の最新動向

認証基準は定期的に更新され、新しい一般的名称および認証基準の制定や、既存の認証基準の改正(使用目的または効果の変更、認証基準から引用される規格の変更)が行われます。例えば、最近では超音波画像診断装置について、超音波の減衰量を非侵襲的に計測し肝臓の脂肪量を定性的に評価するための情報を提供する機能が追加されるなどの変更がありました。

3. 認証申請の可否判断

3.1 高度管理医療機器における「実質的に同等」の考え方

高度管理医療機器(クラスⅢ)の認証基準告示では、「当該高度管理医療機器の形状、構造及び原理、使用方法又は性能等が既存の高度管理医療機器と実質的に同等でないときは、この告示の規定は適用しない」とただし書きがあります。

実質的同等性の判断では、以下の点が重要です:

  • 基準の主要評価項目において既存品と同等であるか
  • 既存品と差異がある使用用途が想定されていないか
  • 通知に記載がある適用範囲に定められた除外項目に該当しないか

3.2 管理医療機器のただし書きへの該当性

管理医療機器(クラスⅡ)の場合は、「当該管理医療機器の形状、構造及び原理、使用方法又は性能等が既存の管理医療機器と明らかに異なるときは、この告示の規定は適用しない」とされています。

判断ポイントとしては:

  • 別表第2の基準の場合、主要評価項目において既存品と比較し明らかな差異がないか
  • 既存品と差異がある使用用途が想定されていないか
  • 能動医療機器に関して、疾病の自動診断を意図する機能や新規性のある指標等を示すものでないか

3.3 同等性の考え方

同等性は同一性を求めるものではありません。既存品と比較して以下の点を確認することが主となります:

  • 臨床上の使用用途が同じと想定できるか
  • 新たな効果を謳うものではないか
  • 性能の差異が新規性のある測定・使用を意図していないか

4. 適合性調査申請の準備

4.1 必要な申請資料

適合性調査申請には以下の資料が必要です:

  • 申請書(様式67)
  • 各調査対象施設における実地調査結果報告書等の写し
  • 実地によるQMS適合性調査申請書(必要な場合)
  • 調査対象品目の製造工程の概要
  • 各調査対象施設で実施している活動の概要と相互関係を確認できる資料
  • 子品目リスト

4.2 追加提出資料

製造販売業者と登録製造所それぞれについて、以下のような追加資料が求められる場合があります:

製造販売業者向け:

  • 品質マニュアル
  • 文書類の保管期限が確認できる手順書
  • 記録類の保管期限が確認できる手順書

登録製造所向け:

  • 品質マニュアル
  • 文書類の保管期限が確認できる手順書
  • 記録類の保管期限が確認できる手順書
  • 登録製造所のQMSを確認する方法を示した文書

以上は必要な資料の一部であり、認証機関によって異なる場合がございます。

5. 申請手続きの流れ

5.1 申請のフロー

新規申請で適合性調査を含む場合のフローは以下のようになります:

  1. 適合性調査申請書と認証申請書の提出
  2. 各施設ごとに実地・書面の判断
  3. 書面調査または実地調査の実施
  4. 照会対応
  5. 適合性調査に対するレビュー
  6. 基準適合証の発行
  7. 品目評価
  8. 認証申請に対するレビュー
  9. 認証申請書に対する照会対応
  10. 認証書の発行

2〜6の適合性調査と7〜9の申請書に対するレビューは通常並行して行われます。
また、有効な基準適合証がある場合は、適合性調査が省略され、認証申請の品目評価のみが行われます。

5.2 申請書類の準備

申請の種類によって必要な様式が異なります:

  • 新規申請:様式64
  • 適合性調査申請:様式67

これらの様式は厚生労働省のウェブサイトからダウンロード可能です。

5.3 電子申請と紙申請

申請は電子媒体または紙媒体で行うことができます。電子申請の場合は、ファイルの整理方法や命名規則について注意が必要です。ただし、電子申請に対応していない認証機関もありますので事前に確認が必要となります。

紙申請の場合は、申請書・別紙を正副2通ずつ提出し、その他の資料は全て1部ずつ提出します。

6. その他の重要事項

6.1 認証関連の通知・情報源

認証申請に関連する主な通知等は、登録認証機関のウェブサイトで確認できます。最新の認証基準や申請書類の様式などが公開されています。

6.2 テクニカルミーティングの活用

申請前や申請中の懸念事項について、登録認証機関と直接相談するテクニカルミーティングを利用することができます。これにより、申請プロセスの円滑化や不備の事前解消が可能となります。

6.3 セミナーや情報サービスの活用

多くの認証機関では、薬機法や認証基準に関するセミナーや情報サービスを提供しています。これらを活用することで、最新の規制動向や申請のポイントなどを学ぶことができます。

まとめ

医療機器の認証申請は、薬機法の理解、認証基準の適合、適切な資料の準備など多岐にわたるステップが必要です。本記事では、医療機器の定義から始まり、認証制度の枠組み、認証基準の考え方、申請可否の判断基準、必要な資料、申請フローまでを解説しました。認証申請を成功させるためには、事前の十分な準備と関連法規への理解が不可欠です。また、登録認証機関のテクニカルミーティングやセミナーなどを活用して、申請プロセスを効率化することも重要です。適切な知識と準備により、スムーズな認証取得を目指しましょう。

弊社では、医療機器の認証申請に関するご相談や書類作成のサポート、QMS体制の構築支援など、実務に直結したサービスを提供しております。認証申請をご検討中の企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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