概要

本記事では、平成26年10月20日に厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)から発出された「医療機器及び体外診断用医薬品の製造業の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」(薬食機参発1020第4号)を解説します。

この通知は、平成25年の薬事法改正(現・医薬品医療機器等法)に伴い、医療機器及び体外診断用医薬品の製造業の登録制度が導入されたことを受けて発出されたものです。製造業の登録範囲や具体的な取扱いについて、31項目のQ&Aが示されています。

本通知の前提となる「医療機器及び体外診断用医薬品の製造業の取扱いについて」(平成26年10月3日付け薬食機参発1003第1号)と併せて理解することで、製造業登録の実務に役立てることができます。

1. 通知の背景と法令改正の概要

1.1 法改正の経緯

平成25年に薬事法が改正され、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)となりました。この改正により、医療機器及び体外診断用医薬品の製造業は、従来の許可制から登録制へと変更されました。

本Q&Aでは、改正前の薬事法を「旧法」、改正後の施行規則を「新施行規則」、改正後のQMS省令を「QMS省令」と呼んでいます。また、QMS省令への適合性に係る調査を「QMS調査」と定義しています。

1.2 登録制度の基本的な考え方

新制度では、製造所の登録は製造工程ごとではなく、「医療機器製造業」または「体外診断用医薬品製造業」として登録されます。主な製造工程区分として、設計、主たる組立て、滅菌、保管などがあり、それぞれの工程について責任を有する施設を登録することが求められています。

2. 「設計」の製造所に関する登録範囲

2.1 設計の製造所の定義

「設計」の製造所として登録すべき施設は、QMS省令第30条から第36条までの規定(ISO 13485:2003の7.3項に相当)に基づき、医療機器等の設計開発を主として実施する者のいる施設です。具体的には、設計開発について主として説明する責任を有する者がいる施設であって、当該設計開発に係る記録を管理している場所が該当します。

重要なのは、現時点で当該製品の設計開発に関する責任を有する者がいる施設であり、QMS調査により設計開発プロセスの適合性を証明することが可能な施設を登録するという点です。

2.2 設計業務の委託と登録の関係

設計開発業務の一部を他の業者に委託する場合であっても、設計開発プロセスに関する責任の所在が変わらず委託元にある場合は、委託先の施設を別途登録する必要はありません。設計開発に関する責任を有する者が設計開発プロセス全体を統括し、設計開発に関する文書を管理している施設を登録することとなります。

2.3 製造販売業者の事務所との関係

設計を行う施設が製造販売業者の主たる機能を有する事務所と同一の場合は、製造所の登録が不要とされています。ただし、この場合でも設計開発における責任技術者等と同等の責任者を社内で明確にしておく必要があります。また、設計に係るQMS調査は製造販売業者の主たる機能を有する事務所で受けることになります。

一方、設計を行う施設が製造販売業者の主たる機能を有する事務所の別館にあり、所在地が異なる場合は、別に製造所としての登録が必要となります。

2.4 複数の設計施設がある場合

一つの承認(認証)申請書の品目について、別法人となる複数の外国企業からそれぞれ製品を輸入しており、輸入される製品ごとにそれぞれ別法人が設計開発の責任を有している場合は、当該品目について複数の「設計」の製造所を登録することとなります。

2.5 システム品における設計の製造所

本体と付属品(構成品)を併用して用いる人工心肺システム等の「システム品」について、本体と付属品の設計が別の施設で実施されているが、システム品全体の設計に関しては本体の設計に係る施設において責任を有している場合、「設計」の製造所としては本体の設計に係る施設を登録します。

3. 「主たる組立て」の製造所に関する登録範囲

3.1 主たる組立ての製造所の定義

「主たる組立て」の製造所として登録すべき施設は、必ずしもいわゆる「組立て」のみを行う製造所とは限りません。製造実態がある施設のうち、製品実現(最終製品の設計開発を除く)の責任体制等を踏まえ、「主たる組立て」に該当する施設が登録の対象となります。

具体的には、当該品目の製品実現について実質的に責任を有し、そのプロセスの記録が管理され、QMS調査にて製品実現のプロセスを説明できるなど、QMS調査により製品実現プロセスの適合性を証明することが可能な製造実態を有する施設です。

製品に対する責任を有するものの、製造実態がなく本社機能のみを有する事務所については、「主たる組立て」の製造所には該当せず、製造実態を有する別の施設が登録対象となります。

3.2 複数工場での製造における登録

同一の製品実現に責任を有する組織(QMS組織)内にて複数の製造所が関わって製品を組み立てる場合には、原則として、製品実現について実質的に責任を有する施設としてより代表的と考えられる製造所を1か所特定して登録することで差し支えありません。

ただし、各工場のQMS組織が別である場合は、これらの工場のうち製品実現の責任を有する委託元に該当する工場を「主たる組立て」の製造所として登録する必要があります。

3.3 製造工程の委託と登録の関係

「主たる組立て」の製造所が製造工程の一部(例えば、ヘパリンコーティング、薬剤コーティング、表面加工処理など)を委託している場合、委託先の施設で製品の品質に影響を及ぼすおそれのある工程を実施するとしても、製品実現について実質的な責任を有しているのが委託元の製造所であれば、委託先の施設の登録は不要です。

ただし、当該工程を委託元において適切に管理する必要があります。また、委託された工程であっても、承認申請書又は認証申請書において当該施設で製造する際の製造条件の記載が必要となる場合があることに留意が必要です。

3.4 OEM契約における取扱い

いわゆるOEM契約において、製品に対する責任はA社にあるものの、設計検証、設計バリデーション、設計移管などの設計開発プロセスの主な活動はOEM先である別のB社が実施している場合、設計開発に関して責任を有する者がいる施設であって、QMS調査により設計開発プロセスの適合性を証明しうる施設を「設計」の製造所として登録することになります。

B社が設計開発プロセスの管理及び設計開発に関する文書管理等を行っているのであれば、製品に対する責任を持つA社ではなく、B社の施設が「設計」の製造所となると考えられます。業務の委受託は契約の方法により様々な場合があるので、実際にどのような業務を行っているか、その責任を有しているのはどの者か等によって登録すべき製造所が異なるため、個別事案ごとに判断することが求められます。

4. 滅菌・保管等その他の製造所に関する登録

4.1 滅菌の製造所

最終製品の無菌性を保証する滅菌を施す施設においては、委託先であっても「滅菌」の製造所の登録が必要です。「主たる組立て」の製造所から委託を受けて滅菌を行う施設であっても、滅菌工程を行う施設は登録が必要となります。

4.2 保管の製造所

国内において最終製品を保管する施設のうち、市場への出荷判定時に製品を保管している施設が「保管」の製造所として登録対象となります。

旧法による包装・表示・保管区分の製造所の許可を有していた施設であっても、当該施設で包装及び表示を行った後に他の施設で市場への出荷判定を行う場合には、包装及び表示のみを行うために製品を保管する施設は登録不要です。また、表示前など製造の途中段階の製品を一時保管するのみの場所は製造業の登録は不要です。

旧法により包装・表示・保管区分の外国製造業の認定を有する製造所については、日本へ輸出する製品の保管を行っていたとしても登録不要となります。

4.3 体外診断用医薬品の充填工程

体外診断用医薬品について、反応系に関与する成分を直接の容器等に充填するのではなく、診断に用いる試験紙に反応系に関与する成分をしみこませて最終製品とする場合など、必ずしも充填の製造工程とはならないことがあります。このような場合、試験紙を直接の容器等として取り扱うことで充填工程を行っていると判断できます。充填工程に関しては体外診断用医薬品の最終製品の形態により考え方が異なるので、個別に判断することとなります。

4.4 外部試験施設

外部試験施設は、旧法においても製造業の許可又は認定が不要であり、改正後も登録不要となります。

5. 登録申請手続とその他の事項

5.1 登録申請時の添付書類

製造業の登録申請では「登録を受けようとする製造所の場所を明らかにした図面」の添付が必要となります(新施行規則第114条の9第2項第5号及び第114条の15第2項第3号)。登録範囲がわかるものであれば、登録範囲内の施設内における構造設備の詳細を示した図面は不要です。

例えば、敷地内の登録対象となる範囲がわかるものや建物内の登録対象となる特定の階を示すものなどが考えられます。

5.2 登録時の確認事項

登録(更新)申請に関しては、登録(更新)申請書や添付資料に基づき登録(更新)されます。登録すべき製造所かどうかについては、登録後に行われるQMS調査において実際の業務内容に基づき判断されることになります。

5.3 医療機関等でのバージョンアップ

既に製造販売されて医療機関等で使用されている医療機器について、承認(認証)事項の変更等に伴い、当該医療機器を変更された内容にバージョンアップする行為(当該行為に伴う内部部品の交換等を含む)を医療機関等で行うことは可能です。

ただし、医療機関等で業務を行う際の具体的な手続及び作業を行う者の要件等を製造販売業者が定め、承認(認証)事項どおりの内容にバージョンアップされたことを製造販売業者の管理のもと、出荷判定を行うことが必要です。これらの手続きや出荷判定の記録などの文書については、QMS調査等の際に調査実施者等の求めがあった場合には、直ちに提出できるようにしておく必要があります。

5.4 輸入品の補修等

海外から医療機器を輸入して製造販売しようとする場合、輸入時に当該医療機器が輸送等の影響で補修等(海外の輸入元の製造所における出荷時の状態に戻すことをいう)が必要になることがあります。このような医療機器を輸入元の製造所に返送して補修等を行うのではなく、国内の登録製造所(最終製品の保管のみを行う製造所も含む)で補修等を行うことは可能です。

ただし、製造販売業者において輸入時における補修等の手順を具体的に定めた上で行う必要があります。

まとめ

本Q&Aは、医療機器・体外診断用医薬品の製造業登録制度における判断基準を体系的に整理した重要な実務資料です。設計、主たる組立て、滅菌、保管など、登録が必要となる製造所の範囲や、委託製造・OEM契約時の責任の整理など、実務で混乱しやすい論点を明確にしています。

しかし、実際の運用では、自社がどの施設を登録すべきか、どこまで責任を負うべきか、QMS調査で確認されるポイントは何かといった判断が企業ごとに異なり、誤った理解は申請遅延やQMS不適合の原因となり得ます。そのため、通知内容を自社の製造体制に落とし込む際には、専門的な視点が不可欠です。

弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、製造業登録範囲の適正化、委託製造スキームの整理、QMS調査対策、申請書作成支援など、実務に直結するコンサルティングを提供しています。製造業登録やQMS対応に不安がある企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。貴社に最適な登録体制構築をご支援いたします。

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