概要

平成26年10月3日付けで厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)より発出された「医療機器及び体外診断用医薬品の製造業の取扱いについて」(薬食機参発1003第1号)は、薬事法等の一部を改正する法律(平成25年法律第84号)による製造業の登録制への移行に伴い、製造業の登録範囲の考え方等を明確にした重要な通知です。

本通知は、医療機器及び体外診断用医薬品の製造業が許可制から登録制に移行したことを受け、どのような製造工程が登録対象となるのか、責任技術者や管理者の要件はどうなるのか、修理業の特例はどのように適用されるのかなど、実務上重要な事項を詳細に規定しています。製造業者や製造販売業者にとって、自社の製造所が登録対象となるかどうかを判断する際の重要な指針となります。

1. 製造業の登録制への移行と法的根拠

1.1 改正法による変更点

平成25年法律第84号(薬事法等の一部を改正する法律)により、医療機器及び体外診断用医薬品の製造業は、従来の許可制から登録制へと移行しました。この変更は、医療機器産業の国際競争力強化と規制の合理化を目的としたものです。

改正後の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(新法)第23条の2の3第1項に基づき、製造業の登録が必要となります。具体的な登録対象となる製造工程は、新施行規則第114条の8各号に規定されています。

1.2 登録対象となる製造工程の基本的考え方

製造業の登録対象となる製造工程は、製品の品質に直接影響を与える重要な工程に限定されています。これは、規制の効率化を図りつつ、製品の安全性・有効性を確保するという改正法の趣旨に沿ったものです。具体的にどの工程が登録対象となるかは、医療機器、体外診断用医薬品、放射性体外診断用医薬品のそれぞれについて個別に定められています。

2. 医療機器の製造業登録の範囲

2.1 設計工程

医療機器の設計工程については、以下の考え方に基づいて登録対象が判断されます。

承認又は認証を要する医療機器の設計開発に関して責任を有する者がいる施設であって、当該設計開発に係る記録を管理している場所が登録対象となります。登録すべき製造所は、QMS省令第30条から第36条までの設計開発に係る規定の適合性について調査を受けることになります。

ただし、設計開発を行う施設が当該医療機器の製造販売業の主たる機能を有する事務所と同一である場合については、当該施設における製造業の登録は必要ありません。この場合、QMS省令の設計開発の規定の適合性については、製造販売業の主たる機能を有する事務所を対象として調査が行われます。

また、一般医療機器についてのみ設計開発を行う施設は、登録を要しないとされています。これは、一般医療機器がリスクの低いクラスIに分類され、承認・認証が不要であることを考慮したものです。

2.2 主たる組立てその他の主たる製造工程

医療機器の製造実態がある施設のうち、当該品目に係る品質管理監督システム又は製品実現について実質的に責任を有する施設を登録することとされています。

改正法施行前に既に製造販売している品目については、旧施行規則第26条第5項第1号又は第3号の製造区分の許可、又は旧施行規則第36条第4項第1号又は第3号の認定を有する製造所から登録対象となる施設を特定することになります。

2.3 滅菌工程

滅菌医療機器については、滅菌を行う施設を登録する必要があります。滅菌工程は製品の無菌性を確保するための重要な工程であり、その管理状況が製品の安全性に直結するためです。

改正法施行前に既に製造販売している品目については、旧施行規則第26条第5項第2号の製造区分の許可又は旧施行規則第36条第4項第2号の認定を有する製造所から、登録対象となる施設を全て特定することになります。

2.4 国内における最終製品の保管

最終製品を保管する施設のうち、市場への出荷判定時に製品を保管している施設を登録することとされています。この規定は、市場出荷前の最終確認を行う施設を明確にし、品質管理の責任所在を明らかにする趣旨です。

改正法施行前に既に製造販売している医療機器については、旧施行規則第26条第5項第4号の製造区分の許可を有する製造所であって、包装又は表示を行った後に他の製造所において市場への出荷判定を行う場合は、包装及び表示を行う製造所は新法下では登録対象とならず、市場への出荷判定を行う製造所を登録することになります。

3. 体外診断用医薬品の製造業登録の範囲

3.1 一般の体外診断用医薬品(放射性体外診断用医薬品を除く)

体外診断用医薬品の製造業登録については、設計、反応に関与する成分の最終容器への充填工程、国内における最終製品の保管の3つの工程が対象となります。

設計工程については、医療機器と同様の考え方が適用されます。承認又は認証を要する体外診断用医薬品の設計開発に関して責任を有する者がいる施設であって、当該設計開発に係る記録を管理している場所を登録します。設計開発を行う施設が製造販売業の主たる機能を有する事務所と同一である場合は、製造業の登録は不要です。承認又は認証が不要な体外診断用医薬品についてのみ設計開発を行う施設も、登録を要しません。

反応に関与する成分の最終容器への充填工程については、反応に関与する成分を直接の容器等へ充填する製造工程を行う施設を登録します。この工程は体外診断用医薬品の性能に直接影響を与える重要な工程であるため、登録対象とされています。改正法施行前に既に製造販売している品目については、旧施行規則第26条第2項第2号の製造区分の許可又は第36条第2項第2号の認定製造所が登録対象となります。

国内における最終製品の保管については、医療機器と同様に、市場への出荷判定時に製品を保管している施設を登録します。包装又は表示を行った後に他の製造所において市場への出荷判定を行う場合は、包装及び表示を行う製造所は登録対象とならず、市場への出荷判定を行う製造所を登録することになります。

3.2 放射性体外診断用医薬品

放射性体外診断用医薬品については、放射性物質を取り扱うという特性から、より厳格な管理が求められます。

設計工程については、一般の体外診断用医薬品と同様の考え方が適用されます。

反応に関与する成分の最終容器への充填工程以降の全ての製造工程については、充填工程から最終製品を出荷するために保管するまでの工程における全ての施設を登録する必要があります。これは、放射性物質の取扱いに関する安全管理の観点から、製造工程全体を通じた管理体制を確保するためです。改正法施行前に既に製造販売している品目については、旧施行規則第26条第2項第1号の製造区分の許可又は第36条第2項第1号の認定製造所が登録対象となります。

4. 責任技術者及び管理者の要件

4.1 医療機器責任技術者

医療機器の製造工程のうち設計のみを行う製造所については、製造業者が設計にかかる部門の責任者として規定する者を医療機器責任技術者とすることができます(新施行規則第114条の53第3項)。これは、設計工程の特性を考慮し、設計部門の専門性を有する者を責任技術者として認めるものです。

その他の医療機器の製造所における責任技術者の資格要件については、従来と同様です(同条第1項及び第2項)。具体的には、医療機器の製造に関する一定の学歴・経験要件を満たす者が責任技術者となることができます。

4.2 体外診断用医薬品の管理者

体外診断用医薬品の製造所における管理者は、従来どおり薬剤師であることが求められます(新法第23条の2の14第5項)。これは、体外診断用医薬品が医薬品としての性格を有することから、薬学的な専門知識を有する薬剤師による管理が必要とされているためです。

体外診断用医薬品の製造工程のうち設計のみを行う製造所の管理者については、他の体外診断用医薬品の製造所の管理者との兼務が可能とされています。ただし、設計のみを行う製造所及び他の製造所における業務に支障を生じない範囲であることが条件です。

5. 修理業の特例と登録番号の取扱い

5.1 修理業の特例

改正後の医薬品医療機器等法施行令第56条により、原則として医療機器の製造業者が自ら製造する医療機器を修理する場合について修理業に関する規定が適用されないこととされています。これは、製造業者が自社製品について十分な技術的知見を有していることを前提とした規定です。

ただし、医療機器の製造工程のうち設計又は最終製品の保管のみを行う場合は、修理業の特例が適用されないため、修理業の許可が必要となります(新施行規則第196条)。実際に修理業の特例が適用されるかどうかについては、品目ごとに承認書、認証書又は製造販売届に記載される製造所の製造工程等の情報に基づき判断されることになります。

5.2 製造業登録番号の取扱い

製造業の登録については、医療機器製造業又は体外診断用医薬品製造業として登録されます。複数の製造工程を行う施設については、医療機器製造業として登録するのみで、製造所の責任技術者は1人置くことで足ります。

改正法附則第4条及び第7条により医療機器の製造業の登録を受けたものとみなされる者(みなし医療機器製造業者)における製造業登録番号については、改正前の許可番号又は認定番号を用いることとされています。ただし、地方厚生局から許可を受けている施設については、登録権者が知事に移行することから、許可番号の読替え等により新たに登録番号を付番することになります。

体外診断用医薬品の製造業の登録を受けたものとみなされる者(みなし体外診断用医薬品製造業者)における製造業登録番号については、別途通知により新たに付番された登録番号を用いることとされています。

まとめ

本通知は、医療機器および体外診断用医薬品の製造業が許可制から登録制へ移行した際の製造工程の判断基準を明確にした極めて重要なガイダンスです。
医療機器では「設計・主たる製造工程・滅菌・国内最終保管」、体外診断用医薬品では「設計・充填・最終保管」が登録対象となり、放射性体外診断用医薬品ではさらに厳格な管理が求められます。

また、責任技術者の配置要件や設計部門のみを持つ製造所の特例、修理業特例の適用範囲など、製造販売業者・製造業者が判断に迷いやすいポイントも多く含まれています。
登録の要否を誤ると、QMS調査・製造所登録・承認申請への影響が生じる可能性があるため、迅速かつ正確な判断が欠かせません。

自社の製造所・委託先・工程区分が「登録対象に該当するのか」「責任技術者の要件を満たしているか」「修理業特例が適用できるか」など、運用上の判断にお困りの場合は、医療機器・体外診断用医薬品の法規制に精通した専門家による個別確認が最も確実です
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、製造所登録の可否判断、QMS体制整備、承認申請への影響分析など、実務に直結する具体的な支援を提供しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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    一般社団法人薬事支援機構は医療機器専門の薬事コンサルティング会社です。
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