概要
本記事では、平成26年11月20日に発出された「医療機器の製造販売認証申請について」(薬食発1120第8号)について解説します。この通知は、薬事法等の一部を改正する法律(平成25年法律第84号)の施行に伴い、医療機器の製造販売認証申請に関する取扱いを定めたものです。
医療機器の製造販売認証制度は、厚生労働大臣が基準を定めて指定する高度管理医療機器または管理医療機器(指定高度管理医療機器等)について、登録認証機関による認証を受けることで製造販売を可能とする仕組みです。本通知は、認証申請書の様式や添付すべき資料について具体的な要件を示しており、医療機器製造販売業者にとって重要な指針となっています。
本通知は平成26年11月25日から適用され、それまでの旧通知(平成17年3月31日付け薬食発第0331032号)は廃止されました。
1. 通知の背景と法的根拠
1.1 薬事法改正の経緯
本通知が発出された背景には、薬事法等の一部を改正する法律の施行があります。この改正法は平成25年11月27日に公布され、その後、関連する政令および省令が平成26年7月30日に公布されました。これらの法令は平成26年11月25日から施行されることとなり、それに合わせて本通知が発出されています。
改正により、法律の名称も「薬事法」から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法、薬機法)へと変更されました。
1.2 製造販売認証制度の法的位置づけ
医療機器の製造販売認証は、薬機法第23条の2の23の規定に基づいています。この規定により、厚生労働大臣が基準を定めて指定する高度管理医療機器または管理医療機器については、厚生労働大臣から登録を受けた機関(登録認証機関)の認証を受けなければならないとされています。
認証制度の対象となる医療機器は「指定高度管理医療機器等」と呼ばれ、それらに適用される基準は「認証基準」と呼ばれます。登録認証機関は、申請された医療機器がこの認証基準等に適合しているかどうかを審査し、品目ごとに認証を与えることとなります。
1.3 通知の適用範囲
本通知の写しは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長、一般社団法人日本医療機器産業連合会会長、米国医療機器・IVD工業会会長、欧州ビジネス協会医療機器委員会委員長、および各登録認証機関の長宛てにも送付されています。これにより、関係する業界団体や機関に広く周知が図られています。
2. 製造販売認証申請の基本原則
2.1 認証申請における要求事項
製造販売認証申請にあたっては、その時点における医学、薬学、工学等の学問水準に基づき、倫理性、科学性及び信頼性の確保された資料により、申請に係る医療機器の認証基準等への適合性を立証するための十分な根拠が示される必要があります。
この原則は、医療機器の安全性と有効性を担保するための基本的な考え方を示しています。申請者は単に形式的な書類を揃えるだけでなく、科学的な裏付けのある資料を提出することが求められます。
2.2 用語の定義
本通知では、いくつかの重要な用語が定義されています。
「施行規則」とは、改正省令の規定による改正後の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」(昭和36年厚生省令第1号)を指します。
「基本要件基準」とは、薬機法第41条第3項の規定により厚生労働大臣が定める医療機器の基準(平成17年厚生労働省告示第122号)をいいます。基本要件基準は、医療機器が満たすべき安全性や性能に関する基本的な要件を定めたものであり、認証申請において重要な位置を占めています。
3. 製造販売認証申請書に添付すべき資料
3.1 添付資料の基本要件
指定高度管理医療機器等の製造販売認証申請書に添付すべき資料は、認証基準および基本要件基準への適合性を立証するためのものです。これらの資料は、別紙に示す基準等を遵守するとともに、十分な設備のある施設において、経験のある研究者により、その時点における医学、薬学、工学等の学問水準に基づき、適正に実施された調査や試験の結果に基づいて作成されなければなりません。
また、指定高度管理医療機器等のうち、高度管理医療機器の製造販売認証申請書に添付すべき資料に係る信頼性の取扱いについては、別途通知で示すこととされています。
3.2 添付資料の言語要件
認証申請書に添付すべき資料は、原則として邦文で記載されたものでなければなりません。外国で作成された資料を使用する場合は、日本語に翻訳する必要があります。
3.3 認証基準への適合性に関する資料
薬機法第23条の2の23第1項に規定する厚生労働大臣が定める基準への適合性に関する資料として、以下の4種類が求められます。
第一に、申請に係る医療機器が認証基準の定めのある医療機器に該当することを説明する資料です。これは、申請品目が認証制度の対象となる医療機器であることを明確にするものです。
第二に、当該医療機器の使用目的または効果について説明する資料です。医療機器がどのような目的で使用され、どのような効果が期待されるかを明らかにします。
第三に、認証基準において引用する日本工業規格(JIS)または国際電気標準会議(IEC)が定める規格への適合性を示す資料です。多くの認証基準では特定のJIS規格やIEC規格への適合が求められており、これらへの適合性を証明する必要があります。
第四に、既存の医療機器と明らかに異なるものではないことを説明する資料です。認証制度は既に認証基準が設定されている医療機器を対象としているため、申請品目が既存品と大きく異ならないことを示す必要があります。
3.4 基本要件基準等への適合性に関する資料
薬機法第41条第3項または第42条第2項の規定により基準が設けられている場合には、当該基準への適合性に関する資料として、以下の4種類が求められます。
第一に、基本要件基準への適合宣言に関する資料です。これは、申請者が当該医療機器が基本要件基準に適合していることを宣言する文書です。
第二に、基本要件基準への適合に関する資料です。具体的にどのように基本要件基準の各項目に適合しているかを説明する資料であり、通常は基本要件適合性チェックリストの形式で作成されます。
第三に、基本要件基準への適合性を証明する試験に関する資料です。適合性を客観的に証明するための試験データや試験報告書がこれに該当します。
第四に、薬機法第42条第2項による基準への適合性を説明する資料です。これは、特定の医療機器に対して設けられている個別の基準(いわゆる「承認基準」や「規格基準」)への適合性を示すものです。
3.5 添付資料の具体的内容
医療機器の種類等に応じて添付すべき資料の具体的な内容については、別途通知で示されるもののほか、登録認証機関が認証基準の適合性を確認する上で必要な事項に従うこととされています。このため、申請者は登録認証機関と事前に相談し、必要な資料を確認することが重要です。
4. 製造販売認証申請資料の信頼性基準
4.1 資料作成の基本原則
製造販売認証申請書に添付しなければならない資料は、これを作成することを目的として行われた調査または試験において得られた結果に基づき、正確に作成されたものでなければなりません。
この原則は、申請資料の信頼性を確保するための根本的な要件です。資料は実際に実施された調査や試験の結果を正確に反映している必要があり、虚偽の記載や改ざんは認められません。
4.2 否定的データの取扱い
調査または試験において、申請に係る医療機器についてその申請に係る品質、有効性または安全性を有することを疑わせる調査結果や試験成績等が得られた場合には、当該調査結果や試験成績等についても検討及び評価が行われ、その結果は当該資料に記載されていなければなりません。
この規定は非常に重要です。申請者は都合の良いデータのみを提出するのではなく、否定的なデータについても適切に評価し、申請資料に含める必要があります。これにより、医療機器の安全性や有効性に関する客観的な判断が可能となります。
4.3 根拠資料の保存義務
当該資料の根拠となった資料は、認証を与えるまたは与えない旨の処分の日まで保存されていなければなりません。ただし、資料の性質上その保存が著しく困難であると認められるものについては、この限りではありません。
さらに、認証を受けた場合には、施行規則第118条で準用する第114条の71の規定に基づき、認証を受けた日から更に5年間、当該資料の根拠となった資料を保存しておく必要があります。
この保存義務は、事後的な検証や適合性調査に対応するために重要です。申請者は、試験の生データや調査記録など、申請資料の根拠となるすべての資料を適切に管理・保存する体制を整備する必要があります。
5. 適合性調査について
5.1 適合性調査の申請
薬機法第23条の2の23第3項に基づく適合性調査については、製造販売認証申請とあわせて登録認証機関に申請することとされています。
適合性調査とは、申請に係る医療機器の製造管理及び品質管理の方法が、QMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)に適合しているかどうかを確認する調査です。この調査は認証取得のために必須であり、製造販売認証申請と同時に申請する必要があります。
5.2 適合性調査の実施主体
適合性調査は登録認証機関が実施します。登録認証機関は、申請された医療機器の製造所における品質管理体制を調査し、QMS省令への適合性を確認します。調査の結果、適合していると認められれば、認証の要件の一つが満たされることとなります。
まとめ
本記事では、「医療機器の製造販売認証申請について」(平成26年11月20日付 薬食発1120第8号)をもとに、製造販売認証制度の法的根拠、申請書類の構成、添付資料の要件、信頼性基準、QMS適合性調査のポイントについて解説しました。
製造販売認証申請では、認証基準・基本要件基準への適合性整理、否定的データの評価、試験成績書の妥当性確認、QMS体制との整合など、実務上つまずきやすい論点が多く存在します。要件を正しく理解しないまま申請を進めると、登録認証機関からの照会や手戻りが発生するリスクも少なくありません。
弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、医療機器の製造販売認証申請に関する事前相談対応、申請書・添付資料レビュー、認証基準・基本要件基準整理、QMS適合性調査対応まで一貫した薬事支援を行っています。
製造販売認証申請をご検討中の方、申請方針や資料作成に不安のある方は、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。