概要

本資料は令和5年8月10日に厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課および監視指導・麻薬対策課より発出された「医療機器のユーザビリティエンジニアリングに係る基本要件基準の適用に関する質疑応答集(Q&A)について」の内容を解説するものです。医療機器のユーザビリティエンジニアリングに関しては、JIS T 62366-1:2022(「医療機器-第1部:ユーザビリティエンジニアリングの医療機器への適用」)が改正され、その適用に関して製造販売業者が適切に対応できるよう質疑応答集が作成されました。本記事では、この通知内容を体系的に整理し、基本要件基準の適用方法、経過措置期間の対応、申請資料の記載方法などについて解説していきます。

1. ユーザビリティエンジニアリングの基本要件基準について

1.1 関連する基本要件基準の条項

通知では、医療機器のユーザビリティエンジニアリングに関連する基本要件基準として、第9条第4項第1号、第2号および第16条が主に挙げられています。また、医療機器の特性に応じて第10条第4項、第5項、第15条第3項および第17条も関連する可能性があります。これらの条項は主に医療機器の使用に関連するリスク、特に人間工学的特性や誤使用に関するリスクの低減を求めています。

1.2 ユーザビリティに係る適合確認体制

「ユーザビリティに係る事項への適合の確認を行う体制」とは、QMS省令で規定する使用性に関し、改正後のJIS等に適合するための体制を指します。具体的には、製造販売業者等がリスクマネジメントを含む製品実現や設計開発に係る手順書の改訂等を行い、適合性の確認を行う体制を整備することが求められています。

製造販売業者と設計製造業者が異なる場合は、設計製造業者がQMS省令に基づき使用性について改正後のJIS等を適用した体制を整備し、製造販売業者がその記録を確認して適切性を説明できるようにする体制も認められています。

2. 経過措置期間と適用について

2.1 体制整備と経過措置期間

令和6年3月31日までの経過措置期間が設けられており、その翌日以降に製造販売される医療機器に対しては、改正後のJISへの適合をもって基本要件基準のユーザビリティに係る事項への適合確認体制を整備することが求められています。令和6年4月1日までに体制整備等を行った手順書(改訂版)を適用し、それ以降に設計変更を行う際には改正後のJISを用いた適合記録を作成する必要があります。

2.2 既存品目への適用

令和6年3月31日までに承認、認証及び届出がされている品目については、設計変更が生じた際などに、整備された手順書に従いユーザビリティに関する適合性確認を行うことになります。

経過措置期間終了日までに設計・開発され商品化したユーザーインターフェイスについては、「開発過程が不明なユーザーインターフェイス(UOUP)」とみなして、改正後のJISの附属書Cに基づいて適合性を判断することも可能です。設計変更された部分については、改正後のJISの5.1~5.9に従って適合性確認を行うことも認められています。

2.3 代替規格の使用

重要なのは特定の規格への適用に限定することではなく、ユーザビリティに関する基本要件基準の要求を満たすことです。JIS T 62366-1以外にも、国際的に認められている規格(例:IEC 62366-1:2015及びAmendment1:2020)や日本産業規格(例:JIS T 60601-1-6:2023)を用いることも認められています。

3. 承認申請・認証申請における対応

3.1 添付資料への記載方法

経過措置期間終了日の翌日以降の承認申請等の添付資料においては、改正後のJISへの適合性を証明することが求められています。ユーザビリティに関する記述は、添付資料の設計検証及び妥当性確認文書の概要の項目に、参照した規格(例えば、JIS T 62366-1)及び評価の概要を簡潔に記載しなければなりません。

3.2 ユーザビリティに影響しない変更

製造所の変更・追加、滅菌方法の変更、有効期間の延長など、ユーザビリティに影響しない変更については、基本要件のユーザビリティへの適合性に関する記載は不要です。ただし、明らかにユーザビリティに影響しない変更(製造所迅速一変や有効期間延長等)を除き、当該変更によりユーザビリティに影響がないことを承認(認証)申請書添付資料4項にて説明する必要があります。

4. 具体的な適用例と解釈

4.1 具体例:コンタクトレンズのユーザーインターフェイス

改正後のJISでは、ユーザーインターフェイスは「ユーザーと医療機器とがやり取りをする手段」と定義されています。コンタクトレンズの場合、使用者が一般人であり、通常の使用方法を習得し使用エラーを防止する手段としては、添付文書や取扱説明書を含む附属文書もユーザーインターフェイスの一部とみなされます。また、使用には教育やトレーニングの内容も含まれると考えられます。

教育やトレーニングの必要性については、附属文書の適切性(例えば、コンタクトレンズの添付文書が平成28年の自主基準に従った内容で作成されている場合など)により判断することも認められています。

まとめ

医療機器のユーザビリティエンジニアリングに係る基本要件基準の適用においては、令和6年4月1日以降、改正後のJIS T 62366-1:2022への適合が求められています。製造販売業者は経過措置期間中に体制を整備し、新規申請や設計変更時には適切に対応する必要があります。既存品については開発過程が不明なユーザーインターフェイス(UOUP)として評価することも可能であることはとても重要です。また、添付資料への記載方法や代替規格の使用についても明確にされており、各社が適切に対応できるよう配慮されています。

重要なのは、単に規格に適合することではなく、医療機器の安全性と使用性を確保し、ユーザビリティに関連するリスクを適切に低減することです。製造販売業者は自社製品の特性に応じた適切なアプローチを選択し、基本要件基準の要求事項を満たすことが求められています。

弊社では、JIS T 62366-1:2022への適合支援や手順書の見直し、添付資料作成のご相談にも対応しております。ユーザビリティエンジニアリングの導入・運用に関してご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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