概要

本通知は、平成20年(2008年)8月4日に厚生労働省医薬食品局審査管理課および医療機器審査管理室長から発出された「薬食機発第0804001号」です。医療機器の製造販売承認申請において、臨床試験の試験成績に関する資料がどのような範囲で必要となるかを明確化することを目的としています。

医療機器の承認申請では、その有効性と安全性を証明するためのデータが求められますが、すべての医療機器で臨床試験が必須というわけではありません。本通知では、臨床試験データの要否の判断基準、必要な症例数の考え方、そして関連する既存通知との整合性について整理されています。

この通知は、平成17年2月16日付けの通知「医療機器の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」(薬食機発第0216001号)の内容を補完・明確化するものとして位置づけられており、医療機器の薬事申請実務において重要な指針となっています。

1. 本通知の背景と目的

1.1 通知発出の経緯

医療機器の製造販売承認申請における臨床試験データの取扱いについては、もともと平成17年2月16日付けの薬食機発第0216001号通知「医療機器の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」において基本的な考え方が示されていました。しかし、実務上の運用において解釈が分かれるケースや、より具体的な指針を求める声があったことから、本通知によって取扱いの明確化が図られることとなりました。

1.2 通知の適用範囲

本通知は、医療機器の製造販売承認申請全般に適用されます。通知の写しは、各地方厚生局長、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長、日本医療機器産業連合会会長、在日米国商工会議所医療機器・IVD小委員会委員長、欧州ビジネス協会医療機器委員会委員長、および薬事法登録認証機関協議会代表幹事に対して送付されており、業界全体への周知が図られています。

2. 臨床試験データが必要となる場合

2.1 臨床試験実施の基本的な考え方

本通知では、臨床試験の実施が必要となる条件について明確に示されています。具体的には、医療機器の臨床的な有効性および安全性が、性能試験、動物試験等の非臨床試験成績、または既存の文献等のみによっては評価できない場合に、臨床試験の実施が必要となります。このような場合には、臨床試験成績に関する資料の提出が求められます。

つまり、非臨床データや文献データで十分に有効性・安全性を評価できる場合には、必ずしも新たな臨床試験を実施する必要はないということになります。これは申請者にとって、開発コストや承認取得までの時間を適切に管理するうえで重要な判断基準となります。

2.2 臨床試験データの要否判断

臨床試験の試験成績に関する資料の要否については、個々の医療機器の特性、既存の医療機器との同等性、非臨床試験の試験成績等により総合的に判断されることが示されています。

この判断を適切に行うためには、必要に応じて独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の臨床評価相談または申請前相談を活用することが推奨されています。PMDAとの事前相談を通じて、臨床試験の必要性や試験デザインについて確認することで、承認申請の準備をより効率的に進めることができます。

3. 新医療機器における臨床試験データの取扱い

3.1 新医療機器の定義と原則

本通知では、その性能、構造等が既存の医療機器と明らかに異なる医療機器、すなわち「新医療機器」に該当するものについては、原則として臨床試験の試験成績に関する資料の提出が必要であることが明記されています。

新医療機器は、既存品との比較による安全性・有効性の推定が困難であるため、実際の臨床環境における評価データが不可欠とされています。これは患者の安全を確保するための重要な要件です。

3.2 別途通知における取扱いの参照

臨床試験の試験成績に関する資料の取扱いについて、別途、通知等において明記されている場合には、それを参照することとされています。医療機器の種類や特性によっては、個別の通知やガイダンスで具体的な臨床評価の要件が定められている場合があり、申請者はこれらの関連規制も確認する必要があります。

4. 臨床試験の症例数に関する考え方

4.1 適切な症例数の設定

臨床試験を実施する場合の症例数については、臨床試験の目的や主要評価項目等を踏まえ、当該医療機器の有効性、安全性の評価に適切な症例数とすることが求められています。

症例数の設定は、統計学的な観点からも科学的妥当性を確保する必要があり、試験の目的を達成するために十分なデータが得られるよう計画することが重要です。

4.2 希少疾病用医療機器等の特例

希少疾病用医療機器等、適応疾患の症例自体が少ない等の事情がある場合には、その事情を勘案して妥当な治験計画をたて、評価可能で実施可能な症例数を検討することとされています。

患者数が限られている疾患を対象とする医療機器では、大規模な臨床試験の実施が現実的に困難な場合があります。このような状況では、実現可能性と科学的妥当性のバランスを考慮した治験計画の策定が求められます。

4.3 比較対照試験における統計学的考慮

比較対照をおく場合、すなわち既存の治療法や医療機器との比較試験を行う場合には、統計学的に症例数を設定する必要があることに留意することが示されています。

比較試験では、両群間の差を検出するために必要な検出力(パワー)を確保できる症例数を、事前に統計学的に算出することが重要です。これにより、試験結果の信頼性と科学的妥当性が担保されます。

5. 関連通知の改正について

5.1 既存通知の改正内容

本通知の発出に伴い、平成17年2月16日付け薬食機発第0216001号医療機器審査管理室長通知「医療機器の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」の記の第3の(6)のアの項についても改正が行われました。

具体的には、「ア.臨床試験データの必要な範囲等については、平成20年8月4日付け薬食機発第0804001号医療機器審査管理室長通知『医療機器に関する臨床試験データの必要な範囲等について』によること。」と改められました。

5.2 項目の整理

改正に伴い、従来の通知における「イからオの項を削除し、カの項をイの項と改め、キの項を削除し、別紙1を削除する」という整理が行われています。これにより、臨床試験データに関する規定が本通知に一本化され、規制体系の簡素化と明確化が図られました。

まとめ

本通知「医療機器に関する臨床試験データの必要な範囲等について」は、医療機器の製造販売承認申請における臨床試験データの取扱いを明確化した重要な文書です。臨床試験は、非臨床試験や文献等では有効性・安全性を判断できない場合に必要となり、医療機器の特性や既存品との同等性などから総合的に判断します。判断に迷う場合は、PMDAの臨床評価相談や申請前相談を活用することが推奨されます。

また、新医療機器については原則として臨床試験データの提出が必要で、症例数は評価項目・統計設計に応じて設定し、希少疾病用医療機器では実施可能性も考慮します。比較対照試験では統計学的な検討が不可欠となります。

承認申請の成否は早期の臨床評価戦略で大きく左右されます。弊社(一般社団法人薬事支援機構)では、PMDA相談対応、臨床評価方針立案、試験不要化戦略までご支援可能です。具体的な申請や臨床データの要否判断でお悩みの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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