概要

令和7年7月8日付で厚生労働省から「QMS調査要領について」の一部改正通知(医薬監麻発0708第7号)が発出されました。この改正は、再製造単回使用医療機器の製造販売の承認の条件として付された調査について、調査頻度等の見直しが行われたことを受けたものです。主な変更点は、再製造単回使用医療機器定期確認調査における調査対象施設の範囲を「全ての製造所」から単に「製造所」に変更し、調査の効率化を図ったことです。

1. 改正の背景と目的

1.1 法的根拠の確認

この改正は、医薬品医療機器等法第79条第1項の規定に基づき、再製造単回使用医療機器の製造販売の承認の条件として付された同法第23条の2の5第9項の規定による調査について実施されました。

1.2 QMS調査の標準化推進

都道府県、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)及び登録認証機関におけるQMS調査関連業務の標準化を図ることが継続的な目標として掲げられています。この改正により、調査の効率性と一貫性のバランスを取ることが意図されています。

1.3 通知の適用と配布

改正された通知は令和7年7月8日から適用され、関係団体、関係業者への周知が求められています。また、各地方厚生局長、PMDA理事長、各種業界団体にも同時に送付されています。

2. 主要な改正内容

2.1 調査対象施設の変更

改正前

  • 「医療機器等適合性調査に係る製造販売業者及び全ての製造所における製造管理及び品質管理に関する資料」

改正後

  • 「医療機器等適合性調査に係る製造販売業者及び製造所における製造管理及び品質管理に関する資料」

この変更により、再製造単回使用医療機器定期確認調査において、必ずしも全ての製造所を対象とする必要がなくなり、調査実施者の判断で適切な製造所を選定できるようになりました。

2.2 調査重点事項の明確化

改正後も、再製造単回使用医療機器定期確認調査においては、以下の重要工程について重点的な確認が継続されています。

  • 分解工程
  • 洗浄工程
  • 再組立て工程
  • 原型医療機器における原材料等の変更管理の把握

これらは再製造単回使用医療機器基準(平成29年厚生労働省告示第261号)及び製造販売承認書の内容に適合していることの確認が特に重要とされています。

3. 調査実施における実務上の影響

3.1 調査効率の向上

「全ての製造所」という文言の削除により、調査実施者は以下の要素を総合的に勘案して調査対象施設を選定できるようになりました。

  • 製造販売業者の管理状況
  • 申請品目の品質に及ぼす影響の程度
  • 過去の調査実績
  • リスクベースアプローチに基づく優先順位

3.2 調査の質的担保

調査対象施設の選定に柔軟性が与えられた一方で、適切な製造管理及び品質管理のもと製造及び製造販売できるQMSを確立していることの確認という本質的な目的は維持されています。

3.3 事前準備の合理化

調査実施者が必要に応じて製造販売業者から入手できる資料について、別紙2に例示されている資料を参考に、事前準備を効率的に進めることが可能となります。

4. 関係者への影響と留意事項

4.1 製造販売業者等への影響

製造販売業者及び選任外国製造医療機器等製造販売業者等は、改正により以下の点で影響を受ける可能性があります。

  • 調査対象となる製造所の範囲が調査実施者の判断により決定される
  • 調査準備における資料提出の効率化
  • 調査スケジュールの最適化

4.2 調査実施者の責任

調査実施者(都道府県、PMDA、登録認証機関)は、以下について適切に判断する責任があります。

  • リスクベースでの調査対象施設の選定
  • 調査範囲の適切な設定
  • 調査の品質を維持するための措置

4.3 継続的な品質保証

改正により調査の効率化が図られた一方で、再製造単回使用医療機器の品質、有効性及び安全性の確保という根本的な目的は変わらないことを十分に理解する必要があります。

まとめ

今回のQMS調査要領の一部改正は、再製造単回使用医療機器の調査における効率性の向上を目的とした合理的な見直しです。「全ての製造所」から「製造所」への変更により、調査実施者がリスクベースアプローチに基づいて適切な調査対象を選定できる柔軟性が付与されました。

この改正により、調査の質を維持しながら効率化が期待される一方で、関係者は以下の点を十分に認識する必要があります。

  • 調査の本質的な目的である品質保証は変わらないこと
  • 調査実施者の適切な判断と責任ある選定が重要であること
  • 製造販売業者等は引き続き適切なQMSの構築と維持が求められること

今後、この改正通知に基づいた調査実務の運用状況を注視し、医療機器の品質確保と調査効率のバランスが適切に保たれることが期待されます。本改正への対応に不安がある場合や、調査対象施設の選定・資料準備・QMS体制の見直し等に関してご相談をご希望の方は、弊社までお気軽にお問い合わせください。
貴社の体制や状況に応じた具体的なアドバイスやサポートをご提供いたします。

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